第26話 インディオの王宮にシャラザールが来臨しました
国王はクリスを大切にお迎えすると言って奥に入って行った。
クリスは宮殿に案内されようとしたので、
「ギャオちゃんはどうするの」
と聞くと
「ピーーー」
とギャオちゃんは鳴いた。
「ここにいる?そうか、巣に帰る?」
ギャオちゃんはクリスの問に最初は頷き、後半は大きく首を振った。
「じゃあ静かにしているのよ。何かあったら呼んでね」
クリスは名残惜しそうにギャオちゃんを見た。
「ピー」
ギャオちゃんもクリスに返す。
そして、残された騎士や、連れてこられた王宮の馬の飼育係は途方にくれていた……
クリスはそれから大変だった。
「直ちにお風呂に入られて旅塵をお落とし下さい」
「いや、そんな」
言い訳するまもなく、侍女らに裸に剥かれて風呂に入れられ体中をきれいに磨かれた。
そして、あっという間に小綺麗にされると強引に盛装させられていた。
「自分は平民だと思うからこのような服を着るのは恐れ多いです」
クリスの抵抗は全く無視されて真っ青なドレスに身を包まれていた。
「シャラ、あなた本当にどこのお姫様って感じだわ」
見に来たモニカは感激していった。
「モニカ様。こんな衣装着るなんて聞いていません」
クリスは抗議した。
「でも、ものすごく似合っているし、本当にどこかの王女様って感じよ。余程私よりも王女らしいわ」
最もクリスはボフミエ魔導国の筆頭魔導師でシャラザール教の教皇でマーマレード王国の侯爵家の令嬢だったので、本当のお姫様だったのだが……
「こんな盛装してどうするんですか」
「なんでも父があなたの歓迎会を開くって聞かなくて」
「えっ、こんな時にですか」
クリスは目眩がした。前線ではいつホワイテアの大軍がまた攻め込んでくるかと緊張していと言うのに、どういうつもりなのだろう。そうか、歓迎会が全軍出撃の壮行会も兼ねているというのだろうか。クリスにはよく判らなかった。
「父も考えてのことだと思うわ」
モニカはどこか自信なさそうに笑って言った。
パーティーは大規模なものだった。
急遽招集されたにもかかわらず、王都中の貴族や令嬢たちが集まっていた。
国王一家の登場の後にクリスは呼ばれた。
「皆の者。今日は我々にとって素晴らしい日になった。
なんとあの伝説の戦神シャラザール様の化身で、あのホワイテアの大軍を一瞬で殲滅していただけたシャラ様をお迎えできたのだ」
「えっ、そんな聞いていませんよ」
クリスは抵抗しようとしたが、強引にモニカに引っ張られて衆目の視線の中に連れ出された。
どれだけ怖そうな女戦士かと一同思っていたのだが、現れたのが、可憐な少女なので驚いた。それもとびっきりの美しい令嬢と判って感嘆のため息が漏れる。
クリスは戦時中に不謹慎だと思いながら歩いていく。
そして、玉座の前に挨拶に行くが、なんと国王が玉座から降りてきて跪いたのだ。
「えっ」
クリスが固まる。
「戦神シャラザールの化身シャラ様。此度は敵ホワイテアの大軍を殲滅していただけたこと、ドグリブ国民を代表して御礼申し上げます」
頭を下げる。
一国の国王に頭を下げさせるってどういうことなの。
もうクリスの頭はパニックになっていた。
「陛下。頭をお上げ下さい」
クリスは慌てて国王を助け起こす。
「いやいや、どれほど礼をしてもしたりませんぞ。どうぞお掛け下さい。」
国王は今度はクリスを玉座につけようとした。
「そのような恐れ多いこと出来るわけもございません」
クリスは辞退する。
「いやいや、そのように遠慮なさるな」
「どうぞ陛下がお掛け下さい」
二人は譲り合う。
「では」
国王は傍の衛兵たちに合図する。
衛兵たちはもう一つの立派な椅子を運んできて玉座の横に鎮座させた。
「では、シャラザール様には失礼ですが、私も同席させていただくという事で」
隣の立派な席に座らせようとする。
クリスは皆によってたかって強引に国王の横に座らされた。
クリスは呆然としていた。
「では皆の者。シャラザール様のご来臨を祝して乾杯といこうではないか」
全員にシャンパングラスが配られる。
「では、戦いの女神のご来臨を祝して乾杯」
「乾杯」
一同グラスを交わして乾杯した。
クリスはもうやけでその酒を飲んでしまった・・・・・・・・
アレクがいれば絶対にアルコールをクリスに近づけなかっただろう。
ダンッ
その瞬間、周りを威圧する凄まじい気とともにシャラザールが来臨した。
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