第25話 怪鳥の空の旅はインディオの王女にとって散々でした
ドグリブ王国王宮ではミゲル・ドグリブ国王は困惑していた。
「王女とシャラザール様の行方は依然判らぬのか」
国王は苛立ったように言った。
「はっ、王女殿下一行はホワイテアの魔導部隊に襲われた後の消息が不明のままです」
「我が国の魔導部隊から連絡は」
「付近一帯を捜索させておりますが、未だに手掛かりは掴めておらぬかと」
重臣の一人が報告した。
「どうするのじゃ。シャラザール様の行方が判らねば、砦の奪回もままならぬではないか。ホワイテアの動きはどうじゃ」
国王は聞く。
「砦の兵士5千に動きはございません。新大陸からの援軍もまだのようですが」
「シャラザール様がホワイテアの主力10万を殲滅していただけましたからな。なかなか敵もすぐには援軍を出せないのでしょう」
「それはそうじゃが、我が方も王都の防衛を手薄にするわけには参らぬぞ。砦の精鋭5千がやられたのじゃ。王都の1万をそのままにすると各街の全軍を集めても5千しか集められん。それでは砦の奪還すらおぼつかぬ」
国王はため息をついた。
「ここは、何としてもシャラザール様にご活躍願わねば」
「しかし、シャラザール様ならばホワイテアの魔導師など一閃で殲滅出来たと思われますが、何故、戦いもせずに逃げられたのかが、合点がいきませんな」
「シャラザール様が姿を消されて残されたのが、単なる少女というわではございませぬか」
老臣らが懸念事項を話す。
「しかし、残された少女が何の繋がりも無いわけはなかろう。何としてもお探しして、お願いせねば」
「も、申し上げます」
そこへ兵士が駆け込んで来た。
「いかが致した。シャラザール様が見つかったか」
「いえ、それどころではございません。ギャオースが魔の山を離れ一目散にこの王都を目指しているとの報告が入りました」
「な、何じゃと」
重臣たちは驚いた。ホワイテアへの対処だけでも大変なのに、ここにギャオースまで現れるとは。
「直ちに全軍に攻撃態勢を」
「御意」
伝令が四方に発した。
クリスにとってギャオちゃんとの空の旅は、見るもの感じるもの全て初めてで、とても楽しかった。
忘れてはいるがスカイバードの旅とは違い、風を切って飛ぶということが、とても快適だった。小さい時から一度は空を飛びたいと想っていた(忘れてはいるが潜在意識としては残っている)夢が叶って言うことはなかった。
一方反対にモニカにとってギャオースの背の上の旅は悪夢だった。風はきつく目も開けられず、体は寒くて凍りそうだった。クリスがはしゃいで楽しんでいるが、モニカは目を瞑ってひたすら耐えるしか無かった。
「モニカ様。あれが王都だと思われます」
クリスは高い城壁に囲まれた都市を見つけた。
「ギャオちゃん。あの王宮に向かって」
クリスの声にギャオちゃんは高度を下げる。
城壁の上に兵士が群がっていたが、ギャオちゃんはその上を飛び去る。
兵士たちは風圧で飛ばされないように慌てて伏せた。
「おい、ギャオースの上に人が乗っているぞ」
目のいい兵士が見つけた。
「陛下。ギャオースの上に王女殿下に似た方がいらっしゃいます」
兵士が駆け込んできた。
「な、何じゃと」
国王は慌てて近衛兵とともにバルコニーに出た。
そこには怪鳥ギャオースがまさに城の中庭に着陸しようとしていた。
そして、その上には王女ともう一人の女が乗っていた。
ギャオースが着陸する。弓矢を持った兵士たちを威圧するように
「ギョぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
ギャオースが叫び声を上げた。
兵士たちは慌てて弓を構える。
「ギャオちゃん、お座り」
そこへ場違いな少女の声がした。
「ピー」
ギャオースは言い訳するように鳴くと座り込む。
その上からクリスがさっと飛び降りた。
固まって動けないモニカをなんとか下ろす。
バルコニーの上の国王を見てモニカが言った。
「陛下、ただいま戻りました」
しかし、モニカはへたり込んで呟くしか出来なかった。
と言う腰が抜けてそれどころではなかった……………
(良かった。凍え死ななくて)
モニカは二度とギャオースの上には乗らないと心に決めたのだった。
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