第15話 大国皇太子とインディオの騎士は戦神に離れ小島に置いていかれました

オーウェンはクリスが転移しそうになった時、必死だった。

いつもおいていかれて、追いかけるのが本当に大変だった。

転移できるウィルやジャンヌ、アレクが本当に羨ましかった。


それも今回ダビッドなんて言ういけ好かない男と一緒など許せることではなかった。

必死にクリスの腰に抱きついて転移したんだが、クリスの様子がおかしかった。

というか、辛そうな感じがビンビン伝わってきた。


そして、あっという間に、転移して開けた場所に出た。

それは美しい海岸だった。


「クリス」

しかし、それに見惚れること無くオーウェンは叫んでいた。


クリスは気を失って砂浜に突っ伏していた。


「クリス大丈夫か」

慌てて抱き起こす。


クリスが目を開いてオーウェンの頭を叩いた。


ズドーンという音とともにオーウェンは砂浜に埋まっていた。


「そこな糞坊主。貴様がいきなりクリスに抱きつくから、クリスの魔力量が足りなくなったのだろうが」


砂を払って戦神シャラザールは立ち上がった。


「しゃ、シャラザール」

なんとか砂の中から出たオーウェンは驚いて言った。


「いかな、クリスの魔力量が多くとも、男2人を背負って大陸間を転移は出来るわけ無かろう。愚か者め。クリスが機転をきかせねば貴様らは全員溺れ死んでおったぞ」


「しかし、クリスを一人で行かすわけには」

「愚か者。クリス一人の魔力量は貴様が10人かかっても追いつかんわ。基本的にクリスが障壁を張れば余でもそれを壊すことは難しいぞ」

「しかし」

「しかしも糞もあるか。そもそも、余がついている限りにおいてクリスは無敵ぞ」

「それはまあそうですが」

「貴様がおることによって返ってクリスにとって足手まといになるわ」

「・・・・」

オーウェンは何一つ言い返せなかった。


「そこの小僧」

「わ、私ですか」

何が起こったかついていけないダビッドが聞いた。

「好いたおなごがいるならば、その側で自ら守れ。他人など当てにするでないわ」

「・・・・」

何一つ言い返せないダビッドであった。


「ふんっ、どいつもこいつも当てに出来ん男共じゃの」

シャラザールは珍しくため息をついた。


「そうじゃ、頼りにならん貴様らにかまっておる暇はなかったわ」

シャラザールが遥か彼方の新大陸の方を見た。


「いかがなさるのですか」

「クリスの小娘が願い叶えてやろうと思っての。今から転移する」


「では私めもお連れ下さい」

「愚か者。そんなのは自分の足で来い。貴様らまで面倒見てやる筋合いはないわ。良いなそこな小僧」


「はっ、戦神シャラザール様がお救い頂けるならばこれ以上のお力添えはございません」

「ふんっ、他人任せじゃな。そのような頼りない奴らにわが可愛い子孫のおなご共を任せるわけにはいかんか」


「いや、シャラザール様。ちょっとお待ちを」

「私も頑張ります」

「相手を選ぶのは本人じゃからの。良い男を見繕ってみるか」

「直ちに向かいますので、余計なことはお止め下さい」


「では」


「ちょっとシャラザール様っ」

「えっ、戦神様」

二人が叫んだ時にはシャラザールはもういなかった。


「おいっ、あれはやばいぞ。勝手に男を見繕ってクリスに会わせそうだ」

「あの戦神モニカ姫に他の縁談を勧めそうだ」

二人は見つめ合った。


「ええいね離れろ」

二人は我に返って離れる。


「直ちに船を見つけねば」

「船なんて頼っていたらいつになるか判らんではないか。それよりもスカイバードの基地をこの地に建設せねば」

二人は慌てて行動を起こしだした。

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