第14話 戦神シャラザールの活躍の跡には一人の少女が残されていました。

女兵士のアリアナはまだ、兵士になったばかりだった。

白人大国ホワイテア帝国の侵略という未曾有の一大事に志願したのだった。

同期の男たちの多くはコロン砦の防衛に回されたが、アリアナはコロンの町の防衛に回された。良く見ると成年男子の大半は砦の方に行っていたので、町の防衛は女老人が大半だった。


そんな中、コロン砦の陥落の報は街の人々に動揺を与えるに十分だった。

あっという間に城壁は敵ホワイテアの大軍に囲まれてしまった。

女老人の兵士たちだけでこの街を守れるわけもなかった。

女の兵士たちは戦いの後にホワイテアの兵士たちに襲われて散々慰み者にされた挙げ句に殺されると言われていた。アリアナは蒼白になっていた。


そんな中で、城門の前の十字架にモニカ王女が縛り付けられて引き出されたのを見て、アリアナは驚愕した。

皇太子殿下は援軍を旧大陸に依頼に行って行方不明。この王女以外は世継ぎはまだ幼いと聞いていた。その王女まで捕まってしまうなんて。


ドグリブ王国軍の砦にいた精鋭5千の兵は皆殺しにされたはずだ。

王都には近衛兵を中心にまだ1万人以上の兵士がいるはずだったが、敵の大軍は10万人以上はいると言う。難攻不落のコロン砦の陥落とともにドグリブ王国の運命の火も消えかけていた。

その上さらに王女殿下まで捕まってしまうなんて。

更に宰相のホセが裏切ったことが原因らしいと聞いてアリアナの心は絶望の淵に立たされていた。


「コロンの街の者共よ。貴様らに選ばせてやる。この姫が殺されるのを見て貴様らも皆殺しの目に合うか。今すぐ降伏して命をまっとうするのか。どちらか選べ」

冷酷そうな将軍はニヤリとして笑うのが見えた。


このまま降伏してもアリアナは二度と太陽が拝めることはないであろう。

(神も仏もないのか)

アリアナは絶望した。


その時だ。敵陣中央に凄まじい光が来臨した。爆風が起こり、アリアナは思わず、城壁から風で飛ばされそうになり、地面に這いつくばって耐えた。


そして、十字架の向こうには光り輝く、凛々しい女騎士がいた。



「余は戦神シャラザール」

その凛々しい戦士の言葉にアリアナは衝撃を受けた。

まさか、その名はドグリブ王国初代国王の母の名前だった。

初代国王の武勇は国中に広まっていた。

不死鳥ギャーオスの襲撃を跳ね返して土地から追い出した武勇伝などは特に有名だ。そしてその母は大シャラザール帝国を建てた初代女帝。そのインディオ出身の騎士と女帝の間に生まれたのが、初代国王、始祖だ。


シャラザールは魔王討伐の功により、神に召されたと聞いていたのだが、まさか自分らを救うために目の前に現れてくれるとは。

アリアナは初めて神に感謝した。


そして、戦神は憎き敵将軍を一瞬で小指で消しくずに変えてくれたのだ。


「神よ。神が我らに救いの手を差し伸べてこられたのじゃ」

老人たちは泣き出していた。



神が手を挙げられると凄まじい火の玉が上がって敵軍は一瞬で消滅していた。


「シャ、シャラザール様」

アリアナを始め兵士たちは炎の消えた後に慌てて城門から飛び出していた。


しかし、シャラザールのいたところに駆け寄るとそこには気を失ったモニカ王女と同じく気を失って倒れている美しい金髪の白人の少女が倒れているのみだった。



この少女がシャラザール様なのだろうか。

しかし、あまりにあどけないその姿は違うようにも思えた。

兵士たちは戸惑ったが、取り敢えず、王女と少女を城塞の中に運び込んだ。



この日悪逆非道の限りを尽くしていたホワイテ帝国アッチラ方面侵略軍の主力10万は、シャラザールの逆鱗に触れて一瞬にて殲滅させられていた。


そして、その跡には一人の少女が残されていた。

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