第12話 生贄のドグリブの王女を救うためにクリスは転移しました

モニカはなかなか脱出の機会を掴めなかった。

翌1両日機会を伺ったが、兵士たちの警戒も強く、なかなかチャンスが掴めなかった。


そして、次の朝には護送すると聞いて喜んだのもつかの間、ホセ自身が来て同じ馬車に乗せられたのだった。


「少し我慢下さい」

ホセはそう言うと、騎士たちがモニカの手足を鎖で拘束していた。


これで逃げるようなことは難しくなった。


そして、馬車はカロンの街並みの城壁の前で止まった。


カロンの城壁はホワイテアの大軍が囲んでいた。


そして、その正門の正面から離れて馬車が止まる。ホセに腕を掴まれてモニカは外に連れ出された。


正門の正面には十字架が建てられていた。


「連れてきたか」

偉そうな男がホセに言った。


「はい。将軍閣下」

「よし、すぐにやれ」


兵士たちはモニカの鎖を取り去ると兵士たちはモニカの手足を掴んだ。


「何するのよ」

モニカは慌てて逃れようとするがびくともしない。


「少し我慢ぐださい」

ホセの声がする。モニカは必死に抵抗しようとしたが、屈強の兵士たちはびくともしなかった。あっという間にモニカは十字架に固定された。


「何するのよ」

声の限りにモニカは叫んだ。


「うるさいガキだな。貴様を降伏勧告の交渉材料にするのだよ」

将軍と呼ばれた男が言った。


「姫の命を助けたければ直ちに降伏せよと」

「そんな」

「姫様。少しのご辛抱ですよ。すぐに城兵どもは降伏するでしょう」

「そんな訳無いでしょう。彼らはそんな脅しに屈し無いわ」

「そうか、じゃあ、貴様を素っ裸に向いて兵士たちに犯させてその上串刺しにするか」

「・・・・・」

モニカは蒼白になった。

そう、このホワイテアはそう言うことをやりかねなかった。

インディオの多くの女性の尊厳がこやつらに傷つけられたと聞いていた。



「こうして見てみるとインディオと言っても可愛いな」

将軍の男がモニカのおとがいに手を当てて上向かせて言った。

モニカは汚らしい手を嫌って思いっきりつばを飛ばした。


「何しやがる」


将軍は平手でモニカの頬を張った。


「この場で犯してやろうか」


将軍はモニカの喉元に手を当てて叫んだ。


「将軍閣下。モニカはこの戦いが終わったら私に下げ渡して頂けるはずでは」

宰相のホセ・ルイスは慌てて将軍に抗議した。


「ふんっ、インディオの命などこの儂の命令いかんでどうとでもなるのだぞ」

将軍はそうホセに言うと手を離した。


モニカは咳き込んだ。

そうか、この戦いが終わればモニカはこの汚い宰相に仕えさせられるのか。性欲のはけ口として。王女の矜持がそんな事を許せるはずもなかった。

裏切りの宰相の思う通りにさせるわけにはいかなかった。


それにこの連中が降伏した城の人達を大切に扱うだろうか?


いや、あり得なかった。ホワイテアの残虐性はすでに大陸の至るところで証明されていた。男どもは殺されるか軍の先頭に立って弾除けに使われるのが関の山だ。女達は言うまでもなかった。それを目の前でされて許せるわけはなかった。モニカはこれでも王女なのだ。自分の命よりも幾万の民の命の方が大切だった。


白人共に好きにさせるわけにはいかない。


最悪この生命を神に捧げよう。


モニカは決心していた。


兄も援軍を呼んでくると言って行方不明。幼馴染のダビッドも兄について行ったが、どうなったことか。


「ダビッド、ゴメン、この生命、皆のために使う」

モニカは心のなかで叫んでいた。

裏切り者の宰相の慰みものになるくらいならこの生命神に捧げよう。

モニカは今にも雨の降ってきそうな真っ黒な空を見上げた。

「神様。私の命と引き換えに民をお守り下さい」

モニカは全魔力量を両の手に集めようとした。




「城内の者たちに継ぐ。貴様らの拠り所のカロンの砦は我々が落とした。そして、今ここにドグリブ王国の王女モニカも捉えた」

将軍は口を閉じだ。城壁の兵士たちが動揺しているさまが目にも見えた。


「貴様らに選ばせてやる。この姫が殺されるのを見て貴様らも皆殺しの目に合うか。今すぐ降伏して命をまっとうするのか。どちらか選べ」

将軍はニヤリとして笑った。



モニカはその様子をきつい視線で見ていた。


そんなことはさせない。


総決心した時だ。


「モニカ姫!」

その時懐かしい声が聞こえたような気がした。この声は・・・・


「あなたはモニカ?」

その時声を至近からかけられたような気がしてモニカは驚いた。


「えっ、そうだけど」

モニカの前に突然少女の画像が浮かび上がった。




「あなた、何故縛られているの?」

クリスは自ら映し出した画像の前で、少女が十字架に貼り付けにされているのに憤って叫んでいた。


「モニカ、どうしたんだ」

そのクリスをを押しのけるようにしてダビッドが叫んだ。


「だ、ダビッド」

画面のモニカは驚いて目を見開いた。


「姫様。何をしておられるんですか」

モニカの横で声がした。

画面に中年のでっぷりした男が入ってくる。


「ホセ、何故王女が縛られている」

ダビッドはホセを見つけると叫んでいた。


「ダビッドか。貴様こそ今どこにいるのだ」

「貴様、ホワイテアに裏切ったな」

ダビッドはホセの言葉を無視して叫んだ。


「ふんっ、強いものについて何が悪い」

ホセは居直った。


「貴様はそこでドグリブが蹂躙されて貴様の王女が私のものになるのを見ているが良い」

画面の中のホセが服の上からモニカの胸をもんだ。


「いやあああ」

モニカの悲鳴が響いた。

「何しやがる」

ダビッドは叫んでいた。


「そこのブタ、何やってるのよ」

クリスはダビッドを押しのけて叫んでいた。


「モニカ、早まっては駄目。今行くわ」

クリスはダビッドの手を掴むと転移しようとした。

「待て!、クリス」

慌ててオーウェンがクリスにすがりつこうとした。


「駄目だったら」

「国際問題になる」

「ちょっと」

後ろで叫んでいるジャンヌらを無視してクリスは転移した。


しかし、その瞬間、腰にオーウェンがしがみついていた。


「えっ」


クリスは大きく魔力が削がれる。

1人を連れて行くのと2人を連れて行くのでは魔力量が全然違った。


うそ、このままでは魔力が足りなくなる。クリスは必死に耐えようとした。

でも、だめだ届かない。このままでは大海の真ん中に出る。

それだはなんとしてでも防がないといけなかった。

途中で島があるのをクリスは思い出した。

クリスは気を失う前に、最後の力を振り絞った………

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次はついにシャラザール登場です。

生贄の王女の運命は如何に。

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