第11話 やっと連絡の取れたドグリブの王女は磔にされていました

「皆で、私を放っておいて、楽しいことしてきたのね」

母に捕まっていたアメリアが不機嫌そうに、帰ってきたクリスらに文句を言う。


「いや、そんな事無いぞ。緊急事態だ。クリスがまたとんでもないことに首を突っ込みたいって言っているぞ」

ジャンヌが言った。


「えっ、お姉さま。困っている人に対しての人助けですわ」

「えっ、何する気?その子に関係するの」

ダビッドを見てアメリアが言った。


「お、お初にお目にかかります。ドグリブ王国の騎士ダビッドと申します」

偉そうな人が出てきて慌ててダビッドが挨拶した。


「ああ、あのホワイテアが今攻撃しているアッチラ島の王国の騎士なのね」

「えっ、もうドグリブ王国は攻撃を受けているのですか」

アメリアの言葉に慌ててダビッドは聞いた。


「ええ、おそらく。何分距離が開いているから時差があると思うけど、我々の所には攻撃に向かったという報告が来ているわ」

「さすが商業国家テレーゼ。詳しいことは判るのか」

オーウェンが聞く。


「大陸とは魔導電話も繋がりにくいのよね。ホワイテアには我が国の大使館があるからそれでも一応1週間に一度はなんとか情報をとっているみたいだけれど、アッチラ島はそこからさらに離れているからリアルタイムの情報は判らないけれど」

「な、何てことだ。もう襲ってくるなんて」

ダビッドは頭を抱えた。


「その騎士がどうしたの」

「ボフミエ国に国を救って欲しいと頼みに来たのだ」

「えっ、あんな遠くの国の援助なんて、基本は無理でしょう」

アメリアがあっさり言った。


「こいつはそれをなんとかしてほしいんだと」

オーウェンが不機嫌そうに言った。


「えっ、また、その子にほだされてクリスが援助したいって言っているの」

アメリアは呆れていった。


「だって多くの人が殺されているって」


「確かにホワイテアのやっていることは前時代的だわ。モンゴロイドを殺すか奴隷にするなんて許されることではないわ。でも、新大陸のことは新大陸でやるのが基本でしょ」

「たしかにそれはそうですけれど」

クリスが不満そうにいう。

「それにボフミエなんて三流国に頼むよりもドラフォードとかに頼んだほうが良くはなくて」

「うちの父親がそんな遠くの事に手を差し伸べるわけ無いだろう。余程利点があれば別だが」

オーウェンが言った。


「あのう貴方様は」

その時になって今まで名前を聞いていないことに気付いた。彼もある程度の身分の方らしい。

「えっ、今頃聞いているの。彼はドラフォード王国の皇太子殿下よ」

「えっ、あの大国の」

ドラフォードの名前はドグリブにも一応届いていた。旧大陸の南側にある大国だと。


「そうよ、本来ならあなたが会うことも出来ない雲の上の人よ」

アメリアは容赦なく言った。

「何言っているんだよ。それ言うならお前もテレーゼの皇太子殿下だろうが」

「えっ、あなた様が・・・・」

「おいおい、さっきからお前が話していたのはあとはノルディン帝国の皇太子とマーマレード王国の皇太子だぞ」

「えっ、何でそんな雲の上の方々が」

「ボフミエ魔導国の閣僚だからだよ」

「そんなに、ボフミエ魔導国はすごいのですか」

「たまたまだ」

「腐れ縁よ」

二人は言い切った。

「すごいかどうかはわからないけれど、まあ成り行きで閣僚になっているんだ。ボフミエ魔導国の国力自体は3流国だけどな」

オーウェンが言った。


「それよりも、アメリアお姉さま。やはり新大陸において人々が虐殺や奴隷にされいるというのは本当なのですね」

「それは確かみたいだわ」

アメリアは頷いた。


「あああ、どうしよう。もう終わりだ。モニカ姫」

思い出したようにダビッドは頭を抱えた。


「取り乱さないで。ダビッド。モニカ姫に連絡が取れればよいのね」

「でもどうやって」

「やってみるわ」

クリスはダビッドの手を握った。


「ちょっとクリス。何でそんな男の手を握るんだ」

「ジャルカ様に教わった魔術を使うのでオーウェン様は少し黙っていて下さい」

オーウェンに冷たく言うなり、クリスは瞑想し始めた。


ダビッドの心の中のモニカ姫と同じ波形をアッチラ島と思われる島で探す。

クリスの魔力量をもってして初めて成り立つ魔術だった。

「いたわ!。彼女ね」


目の前の画面にモニカ姫が出てきた。

しかし、彼女は十字架に貼り付けにされていたのだった。

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