第10話 議論は百出しましたが結論は出ませんでした

一同は応接室に案内された。

「筆頭魔導師様。聞いて頂いてありがとうございます」

ダビッドが流し目で言う。


「お礼は良いわ。また張り倒しそうになるから。本題を」

「はい。我々モンゴロイドのインディオは今白人国家のホワイテアに侵略されつつあります。新大陸の大半は占拠され男どもは多くが殺されるか奴隷にされ、女達は男どもの慰みものにされました。今敵は私の国に迫っております。何卒お力をお貸し下さい」


「アレク様。外務が掴んでいらっしゃることは」

「ご存知のようにボフミエ魔導国はまだ出来てから日が立たず、人員もおりません。しかし、各国の諜報部の助けも借りておりますが、新大陸までは手が回っておらず、情報は殆どありません。ノルディンも新大陸までは手を出そうとしていないのが現実です」

アレクはお手上げだというジェスチャーをした。


「オーウェン様はいかがですか」

「ドラフォードも、新大陸までは見ていませんが、ホワイテアには確か、ドラフォードの外務省が出張所を作ったはずです」

「ジャンヌお姉さまは」

「マーマレードも新大陸までは」

「商業国家のテレーゼならばもう少し情報もあるとは思いますが」

オーウェンが言う。


「早急に情報を集める必要があるということですね」

クリスが言う。


「しかし、クリス。新大陸に加勢できるほどボフミエ魔導国はまだ体制が整っていないぞ」

「そうだあまりにも情報がなさすぎる」

「流石に何千キロも海を隔てた地に干渉するのは無理なのでは」

オーウェン、ジャンヌ、アレクらの皇太子連中は反対した。


ダビッドはそれを暗い目で見ていた。

「そうだよな。所詮白人たちの味方だよな」


「おい、そこの失礼なガキ、何言っているのか判っているのか。俺らは自国の民に責任があるんだよ。自国の民をほっておいて他国に関与してやる義理もない。検討してもらっているだけありがたいと思え」

オーウェンが言い切った。

「申し訳ないさ思うよ。でも、こうしている間にも多くの子供達が殺されているんだ。もう我々モンゴロイドの民は終わりだ」

ダビッドは頭を抱えた。


「少し待て、我が国にもモンゴロイドの民はいるけど、別にどうってこと無いぞ」

アレクがのルディンのことを思い出して言った。

「そう、ボフミエ魔導国の財務卿と農務卿はモンゴロイドだし」

「肌の色の違いで差別されるのは太古の話だぞ」

「そもそも戦神シャラザールは肌の色の違いで差別はされていない。またしたら殺さるぞ」

アレクが少し震えて言った。


「そもそも俺の曽祖母は陳国の出身だから俺の血の中には8分の一モンゴロイドの血が交じっているぞ」

「俺も少しは混じっているはずだぞ」

オーウェンとアレクが言い出す。

「そもそも、白人族なんて無いぞ。絶対にモンゴロイドや黒人の血がマジっているはずだ」

ジャンヌまで言う。


「そもそも人類は大地溝帯の中の猿が進化したものだから元はと言えば同じじゃないか」

「肌の色で差別するの可笑しいよな」

「単に環境が違うから肌の色が変わっただけだろう」

「新大陸の奴らって馬鹿なのか」

最後にジャンヌが言った。学業最下位クラスのジャンヌが言って良いのかと皆思わないわけではなかったが、懸命に黙っていたが……。


「・・・・・」

ダビッドは何一つ言い返せなかった。


「何言っているのか良くわかんないけど、そんな馬鹿な人種差別で殺されようとしているんだ。頼むからなんとかしてくれ。お願いします」

ダビッドは頭を下げた。


「少し検討してみるわ」

クリスが言った。


それを他の者は白い目で見た。


「えっ、クリス検討するの」

「ちょっと遠すぎると思うんだけど」

皆口々に言う。


「でも、同じ人間が虐げられているのは許せないかと」

クリスが言いずらそうに言う。


「しかし、我が国も建国したてであまり関われないのでは」

アレクが言う。


「そうですよね。皆さんが難しいならば最悪私が一人で」

クリスが突然とんでもないことを言い出した。国のトップが一人で乗り込むなんてことが許されるわけはない。


「ちょっと待って、そんな国のトップが国民を放り出して新大陸に行くなんて許されないだろう」

「しかし、私はシャラザール教のトップでもあり、シャラザールのお導きのあるところにはいかねばならないかと」

「いや、それは絶対に駄目。そんなの俺らが許すわけ無いだろう」

オーウェンが必死に言う。


「まあ、オーウエン待て。少し検討しよう。取り敢えず、テレーゼの宮殿に帰って、もっと情報を集めるということでクリスも良いよな」

ジャンヌが言った。いつもはこういうことには急先鋒のジャンヌが抑え役に回るって絶対におかしいだろうとジャンヌは思ったが、なんとかこの場を収めて、全員が王宮に帰った。



「えっ、王宮に帰られたのですか」

大使を尋問していたアルバートは唖然としていた。


取り敢えず、早急な処分を逃れたアダベル・コーベはほっとしたが、このあと大変な役回りをやらされることになるのだが、この時彼はまだ知らなかった。


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ここまでおまたせしました。

そろそろ出陣です

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