第7話 テレーゼで一同は歓迎されました
ボフミエのスカイバードはゆったりと機体を揺らしてテレーゼの海岸に着陸した。
そしてゆったりと観衆が待つ岸壁に接岸する。
「テレーゼの皆さん。こんにちは。今、スカイバードから国賓の方々が降りられます」
魔導電話を使った中継が始まった。
まずは騎士がお二人。ドラフォード王国のバーミンガム公爵家のご出身のアルバート様と筆頭魔導師様の弟君で、我が国のサイラス・ヨークシャー公爵のお孫様のウィリアム・ミハイル様が両横に立たれました。
そして、今、我らがアメリア皇太子殿下が降り立たれます」
ひときわ大きな拍手が岸壁の民衆からされる。
「アメリア皇太子殿下は今はボフミエ魔導国の教育省のトップとして若年層の義務教育の拡充に尽力していらっしゃいます」
アメリアは民衆に手を振っていた。
「そして、続きましてはボフミエ魔導国の、あれ、髪が金髪ではない・・・・茶髪?」
アナウンサーは驚いた。
「ジャンヌ殿下だ」
横から声がする。
「失礼しました。我が同盟国のマーマレードのジャンヌ皇太子殿下です。ボフミエ魔導国では魔導師団長をなさって幾多の戦いに参加されたと聞いております」
「何でジャンヌがいるのだ」
魔導中継を見ていたオリビアは頭に手をやった。
「エイベム。あと2つくらい国賓級の部屋の準備を」
「しかし」
王宮の侍従長のエイベムは戸惑った。
「続いて、え、赤髪・・・・この方はアレクサンドル・ボロゾドフ・ノルディン帝国皇太子殿下です。ボフミエ魔導国では外務卿をしていらっしゃいます」
その姿を見て、指示をするためにエイベムは慌てて部屋を飛び出した。
「そして、同盟国ドラフォード王国のオーウェン皇太子殿下です。殿下はボフミエ魔導国の内務卿を務められておられます。そして、おっとそのまま殿下は待機していた騎士をどけられて手を取られて出て来られたのは金髪のボフミエ魔導国筆頭魔導師であらせられるクリスティーナ・ミハイル様です。同盟国マーマレードのミハイル侯爵家のご息女で我が国の筆頭魔導師のサイラス公爵様のお孫さんです」
「ちょっと、オーウェン様」
クリスはオーウェンに手を取られて驚いた。本来ならばウィルが手を出すはずなのに。
そのウイルはオーウェンを蹴ろうとして流石に隣のアルバートに止められている。
「クリス。皆に手を振って」
オーウェンに言われて慌てて手を振る。
二人は並んで手を振った。
「おう、なんと仲睦まじいお二人でしょう。えっお二人はまだ、婚約者ではないから余計なことを言うな?・・・・。大変失礼しました」
カメラの横の文字を読んでアナウンサーは慌てて謝る。
しかし、オーウェンはほくそ笑んでいた。これでうまく行けば世界中に二人の仲が良いと判断されれば、それに越したことはないと。
「えっ、馬車は4人用しか持ってきていないの」
アメリアは驚いた。
「姫様がきちんと伝えていただけないからですぞ」
テレーゼの出迎えの筆頭魔導師のサイラスがグチグチ言う。
「まあ、私の馬車がありますからな。孫娘はこちらに乗せさせていただきます。そちらの馬車は4人でお使いくだされ」
「えっ、でも、それじゃ。国賓のクリスをあなたの馬車に乗せるの」
「仕方がありますまい。血縁関係ですから、儂が無理言ったとでもされるしかありますまい」
「サイラス。別に俺たちは馬で良いぞ」
ジャンヌが横から出てくる。
「そんなわけにいかないでしょ。仕方がないわ。あなたの馬車を最初に走らせて。後ろに私の馬車が続くから」
「は?、王家の馬車の前を我が家の馬車が走るのですか」
「だってクリスは筆頭魔導師様だもの。ボフミエ魔導国の一番トップが最初でしょ。
一応ミハイル侯爵家はシャラザール3国の中では別格なんだから」
アメリアが慌てて言う。
「ま、テレーゼでも我が公爵家がトップではありますが」
「なんかその言い方、気にいらないけど」
「ま、姫様もついに儂の軍門に下る時が来たのですな」
サイラスはニヤリとした。
「な、何を」
「姫様時間がございません」
わなわな震えるアメリアを護衛のレオが必死に抑えた。
公爵の指揮のもと変形的な隊列が出来上がり、行進が始まる。
祖父と同じ馬車に案内されたクリスは目を見張り、ウィルを探すがどこにも見えなかった。彼はやばいと思ってあっさりと逃げ出したのだった。
ナタリーとイザベラがやむを得ず一緒に乗り込んできた。
サイラスのクリスの小さい時の孫自慢に、イザベラとナタリーは驚き、目を輝かせて聞いていたが、その横でクリスは恥ずかしさのあまり、真っ赤になって悶え苦しむことになったのだった・・・・・・
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