第3話 裏切ったのは宰相でした

頭が痛くてモニカは目を覚ました。

後頭部ががんがんしていた。

周りを見るとどこかの部屋のようだった。



「姫様。うちの騎士が乱暴なことをして申し訳ありませんでしたな」

声がしてそちらを見ると宰相のホセ・ルイスが中にいた。

「ホセ、あなた裏切ったの」

信じられない思いでモニカはホセを見た。ホセは宰相としてモニカが子供の頃から王宮で働いていた。目新しい政策はなかったが、国をきっちりと治めてくれているイメージがあった。王家への忠節も厚いと思っていたのだ。それが裏切るなんて、モニカには信じられなかった。


「裏切ったなどとんでもない。これも全て姫様のためです」

「何を言っているのか判らないわ。ホセ。私のために裏切ったというの」

混乱してモニカは聞いた。


「あやつらは姫様を性交奴隷に落とすと申しましたからな。それよりは私が姫様をお守りしようと思ったまでです」

図々しくホセが言う。

「何言っているのよ。私のためなら、そんなことはしないで。私はこの国の王女よ。いざという時はこの生命を国に捧げるわ」

非難込めてモニカは宰相を見た。

「今すぐやめて」

「姫様。それはもう無理です」

「私は自分の命なんてどうでも良いの。それよりもこの砦を守っていた兵士たちはどうなったの」

モニカは昨日元気に話してくれていた兵士たちの事を思い出していた。

「さあ、どうなったのでしょう」

「誤魔化さないで。皆殺されたの?」

モニカは宰相を鋭い目で見た。

「私も全てを把握しておりません。降伏した兵もいると聞いております」

下を向いて、ホセは言った。


「ホセ、皆、あなたを信頼していたのよ。あなた、その皆を裏切って恥ずかしくないの」

「これは心外な。どのみち、我が国には勝ち目は無かったのですよ。ホワイテアはこの島に10万以上の大軍を送り込んでいるのです。アッチラの他の国も今頃は自分の国の防衛で精一杯、こちらに援軍を送る余裕などどこもないのです」

「たとえそうでも、国を裏切るなんて」

「私は降伏を進言しましたが、皆様反対されたではありませんか」

「だからと言って裏切るなんて」

「私は宰相です。この国の民に責任があるのです」

「降伏してどうなるのよ。男どもは良くて奴隷。女は兵士達の性欲処理の道具にされて終わりよ」

「ホワイテアの横暴を出来る限り少なくさせるのが私の役目です」

「物は言いようね」

「姫様。少し頭をお冷やし下さい。」

そう言うとホセは部屋を出て行った。


モニカは慌てて窓に駆け寄った。窓は鉄格子が嵌められており、逃げ出しようはなかった。

扉には鍵がかかっており、外には兵士が立っているようだった。


「なんとかしてお父様にお知らせしないと」

モニカはなんとかして脱出しようと考えだした。

しかし、扉には鍵がかかっていた。

次に誰か部屋にやってきた時にすきを突いて逃げ出そう。

そのためには今は寝ることだ。

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