第2話 無敵の要塞のはずがコロンの砦に敵兵が侵入しました

話は少し遡る。

200年前から旧大陸から多くの人がこの新大陸に移民するようになってきた。


特にここ100年、旧大陸の内陸部で戦争が続き、嫌気がさした多くの人々が旧大陸から新大陸に移住してきた。最初はモンゴロイドのインディオと移民してきた白人たちは共存共栄してきたが、白人の人口が増え、争いが各地で頻発。魔道具に優れている白人側が有利になった。インディオの多くは土地を追われて流浪化。部族単位で白人を襲撃、それがさらに憎悪を生んだ。


新たに白人の国が多く建国され、それらはインディオを駆逐し始めた。


特に東部に出来たホワイテア帝国は付近の白人国をも併合。逆らうインディオ国家を攻め滅ぼし、男の多くを奴隷や殺害、女性の多くを兵士たちの配偶者や性交奴隷にして勢力の拡大を図っていた。そして、新大陸の多くを制圧したホワイテアは大陸から少しのところにあるこの島アッチラ島にも進出してきたのだ。


まずインディオと友好的なフロンティア王国を騙し討ちで併合。そして、一気にインディオの国々に攻め込んできたのだ。


危機感を持ったドグリブ王国の第一王子のエドアルド・ドグリブは、部下とともにモンゴロイドの陳王国を救ってくれたという旧大陸のボフミエ魔導国に援軍を求めにいったが、3ヶ月たった今は音信不通。そこへホワイテアの大軍が攻め込んできたのだ。


戦える男性王族は国王を除いて殆どおらず、やむを得ず狩りなどでよく馬にも乗る第一王女のモニカ・ドグリブが最前線の様子を見るために、渓谷の出城カロンの砦に来たのだった。司令官としては宰相のホセ・ルイスが赴任していた。


この砦は難攻不落の砦で、未だ嘗て落ちたことはなかった。



「状況はどうなっているの」

すぐに開かれた作戦会議で王女であるモニカが尋ねた。

「現在、掴んでいる敵兵力は10万人です」

前線指揮官の将軍のフアンカルロスが答える。


「10万もの大軍がいるの」

モニカは不安になった。何しろドグリブ王国軍の全戦力の5倍近い戦力だ。



「まあ、王女殿下。この砦の兵力は5千人とはいえ、精鋭です。そしてこの砦も難攻不落。例え10万の軍と言えども1ヶ月や2ヶ月で落ちることはありません」

自信を持ってファルカンロスがこたえた。


「そうね。あなた方には期待しているわ。ここで敵をひきつけておけば他国からの援軍が合流すれば敵を一掃することも可能ね」

モニカが明るく言う。

「当然です。王女殿下。国王陛下にも宜しくお伝えください」

そうファルカンロスが太鼓判を押したのは今日の昼の事だった。

宰相の顔色が少し悪いように感じたが、この状況で将軍のようにおおらかに考えられないだだろうと深くは考えなかった。





「殿下起きて下さい」

その深夜親衛隊の騎士に叩き起こされた。

周りが騒がしい。

「敵襲のようです」

「何」

慌ててモニカは目を覚ました。


「状況は」

「判りませんが、砦内に敵兵の侵入を許した模様です」

「何だと」

モニカは剣を握ると慌てて騎士に案内されて外に出る。

モニカは実戦経験はないが、一応訓練は毎日受けていた。多少は使えるはずだ。不安を押し殺して歩く。


「こちらです」

騎士に案内されながら、廊下を歩いていると、いきなり横から切りつけられた。

それを騎士に引かれて躱すや、後ろの護衛の騎士が剣を一閃する。

敵は一刀のもと倒れたが、また次の兵士が切りつけて来る。

味方にはほとんど出会わなかった。


ここまで敵が多いとモニカはやばいと思った。

「殿下、このままでは捕まってしまいます。ここは逃げましょう」


その時目の前に宰相の一行が現れたのだ。

「殿下ご無事でしたか。直ちにこちらへ」

宰相が手を差し伸べる。

その後に続こうとした時に、モニカの護衛の騎士が二人悲鳴を上げた。

血を流しなながら倒れていく。

何が起こったか、モニカには一瞬判らなかった。


「裏切ったのか」

モニカは声が聞こえたが、その時には誰かに後頭部を殴られて気を失っていた。


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