第3話「アテナとくみの誕生」
「くみ、どういう事なのか私の前に
母アテナの前に正座をさせられたくみは、助けを求める目を祖父に向けた。
祖父は目をそらした。裏切られた…
くみは母親のアテナを誰よりも愛しているのだが、
くみの母親であるアテナは、もちろん日本人ではない。
彼女はギリシア生まれのギリシア育ち、金髪で
それが
アテナは竜太郎と出会う前は母国ギリシアにおいて、やはり国際線のCA(キャビン・アテンダント)をしていた。ギリシアのごく平凡な家庭に生まれ育ったアテナだが、彼女の出産前日の夜に母親は女神アテナの夢を見たという。
生まれ出る際にアテナは身体から黄金色の光を発していたと、当時の
生まれ出た女の赤ん坊を、以上の様に不思議な出来事から「女神アテナの生まれ変わり」と、その場にいた関係者全員が思い込み口にしたのも、あながち不思議な事ではなかった。
赤ん坊は両親により「アテナ」と名付けられた。アテナは皆に誕生を
こうしてアテナが誕生した。
アテナは幼い頃より
だが、アテナにとって不幸だったのは自身の完璧すぎる
アテナはそんな自分を
そんなアテナに運命の出会いが訪れた。日本からの国際便の副機長としてギリシアへとやって来た、アテナにとっての運命の男、
日本の国際便の乗員とギリシアの航空会社スタッフとの間で、
その交流会に
二人にとって衝撃的な出
互いの感情を言葉に出さなくても、気持ちが共鳴し合ったのだ。二人にとって言葉は必要では無かった。互いの気持ちを理解するのは、見つめ合うだけで十分だったのだ。
二人はその場で互いに恋に落ちた。
アテナの両親は健在であったが、彼女の意志が強く竜太郎への愛が海よりも深いのを理解して、二人の国際結婚と娘アテナの日本への移住を許した。彼らは女神アテナの生まれ変わりである娘の固い意志に、何ら疑問を抱かなかった。
こうして、アテナは
二人は幸せだった。当時、国際便の副機長である
結婚二年後にくみが生まれた。
この日、アテナは両親から聞かされていた、自分自身の誕生の時と同じような奇跡を目にする事になった。生まれ落ちたくみの全身は、まばゆいばかりの銀色に輝いていたのだ。これは分娩に立ち会った全ての関係者が目撃した。信仰心の薄い日本の人々にとっても、初めて目にする衝撃的な光景であり、生まれ落ちたばかりの赤ん坊の発する光に、思わず手を合わせて
アテナだけがこの奇跡に驚くことは無かった。そして彼女は赤ん坊の
「私のニケ…」
アテナ自身が、無意識に
私は何故、この子の事を「ニケ」などと呼んだのかしら…
アテナ自身にとっても分からなかった。
「ニケ」とはアテナの母国ギリシアの国民なら子供でも知っている、勝利の女神の名前だったのだ。
母アテナが呼んだ「ニケ」こと
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