第一八話:恥ずかしさと森の地下?
「うぅぅぅ……」
「あらら。ネージュったらかなり顔が赤いわよ」
「だってだって……」
フォンセの胸の中で泣きじゃくった事を思い出したらもう恥ずかし過ぎて死にそうだ。しかも、あの場に居た全員に見られてしまった訳である。アクアたち大精霊とその周囲に居た精霊たちにも、だ。
「ん。可愛かった」
「フォンセ……」
いたずらっぽい笑みを見せるフォンセに更に恥ずかしさに拍車がかかる。
と言うか、フォンセってそんないい笑顔作れたのか……いやまあ、確かに無口ではあるけど無表情って訳でもなかったし……表情が変わりにくいってだけで、時々笑顔らしい笑顔は見せていたからね。
「別に恥ずかしがらなくても良いのに」
「うーうー」
そう言っても、僕は一応これでも成人している訳だし、そんな僕が実年齢とかはさておき、女の子の胸の中で泣きじゃくるって何やってんのさ!?
「それに、誰だって普通はいきなり異世界なんかに飛ばされたら泣き叫ぶわよ。それを考えるとネージュは本当に頑張った方だと思うわよ」
「アクア……」
「だから気にしないの。元が成人していたって、関係ないわ」
……。
恥ずかしすぎるのは間違いない……けど、でもすっきりはしたと思う。不安だった事とか泣きじゃくりながら子供のように全て吐き出したからだろうか。
冷静で居られたとは言っても、やっぱり僕も不安と言うか……そんな気持ちが何処かにあったんだなって。それを実感できたのは良い事だと思う。感情がちゃんとあるって事でもあるから。
「なんかすごい事になっていますね、ふふ」
「ティタ……」
「まあ、何があったのかはさっき念話で伝えた通りよ」
「ええ、理解してますよ。ネージュ」
「はい」
そんな中精霊王たるティタが戻ってきて、僕の方を見て名前を呼ぶ。
「別に泣くことは可笑しくないですよ。ネージュは何のあれもなく、異世界と言う全く分からない世界に来てしまったんですからね。普通は泣いたり叫んだり、取り乱したりするはずです。ネージュ、それは正常な反応で感情です。だから気にしなくて良いのですよ」
「ティタ……」
「美味しい所はフォンセに取られてしまいましたが」
「ふふふ」
「美味しい所って何!?」
美味しい所って……何かフォンセはふふんと言った感じの顔をしているけど。
「調子が戻ったみたいですね」
「……大分ね」
言われて気付く。
恥ずかしくて仕方がなかったのは変わらないけど、それでも大分落ち着けている気がする。皆のお陰かな……。また迷惑かけちゃったなあ。
「ノームは来ない感じなのかしら?」
「それが、何か今日に限って依頼とかが多くて手が離せないらしいです」
「タイミング悪いわねえ……前もって鍛冶屋閉めますって言えないのかしら」
「ノームは土の大精霊ですし、同じように霊体化出来るとはいえここまで来るのに時間がかかりますしね」
「それならフォンセに空間転移を頼めば良いじゃないの。場所は分かっているんでしょう?」
「最初はそういう予定だったんですけどね……事前に店を一旦閉めるっていう告知を忘れてしまったみたいですね」
「相変わらずねえ……」
何だかノームさんも結構マイペースな大精霊なのかな? 聞いた感じではそんなイメージしか出てこないよ。
「まあ、後で共有しましょう。取り敢えず、今ここに居るメンバーだけで始めましょうか」
「ん? 始めるって何を?」
「あ、ネージュにはまだ言ってませんでしたね。不定期に行われる私たちによる精霊会議ですよ」
「会議っつっても、何時もはそんな大層な事話さねえけどな」
「まあね。でも今回は……」
「ああ、分かっている。シルフんとこでも同じ事が起きていたらしいからな」
「そうなんだよね。たまたま近くにボクが居たから良かったけど……」
「一応簡単には話を聞いていますが……取り敢えず、行きましょうか」
「何々、何かあったの!?」
「ルミエールは話聞いてないのかよ……」
「何時もの事ですね」
ティタを含み、4人揃って何処か呆れた顔をする。ルミエールもルミエールで、変わっているよなあ……まあ、元気で明るいって言うのはやはり光の象徴なのかね? 反対にフォンセは何て言えば良いのか……ダウナー? 元気ではあるけど。
「ネージュにも共有した方が良いでしょうし、と言うか既にシルフから聞いているんでしたっけ?」
「一応、簡単には話したよ!」
「暴走の事?」
「そうそれです。まあ取り敢えず行きましょうか」
「そうね」
精霊の暴走について、何か進展があったと言う事なのだろうか? 進展と言っても、僕自身は火の精霊が暴走したって事と、シルフについ先日聞いた風の精霊の暴走の事くらいしか分からないけど。
取り敢えず、僕は全員に後について行くのだった。
◇◇◇
「ええ!? ここ何処?!」
何処に向かうのか聞いていなかったのだが、その場所とやらに来た所で僕は驚いてしまう。
さっきまで、森の中だった風景が一変し、一面に広がるカラフルな花の花畑に、雲も何もない綺麗な空……何処だここ。しかも、大分先の方には何やら石? 岩? の柱みたいなのが複数あって、円を描くように設置されているのが見える。
何だっけ、何か見た事あるような。
あーそうだ! 思い出した、イギリスにある世界遺産の一つのストーンヘンジってやつだ! あれは、円状と言うよりも馬蹄形って言うのかな? いや結局、円に近い感じだけどね!
ただ、地球にあるやつとは違いしっかりと作られた感じになっていて遺跡と言うか現役な感じみたいだ。ここからじゃ詳しくは見れないけど、そこまで汚れてもいないし、ストーンヘンジみたいに壊れているような所はない。
「何処って、さっきまで居た場所の地下だぜ?」
「地下!?」
え、この森に地下なんてあったの?
しかも湖がある場所だよね? そこの地下って事はかなり深い位置にあるって事だよね? どう見ても地下には見えないんだが? 地下なのに何で空があるんだ。花も何故咲いているのか?
「そう言えばネージュは地下に来たのは初めてだったわね。まあ、敢えて教えてなかったんだけれど……」
「あの場所に地下なんてあったの?」
驚いたわ。それにしても、明るいし地下だって言われても信じられないよなこれ……。
「ええそうよ。地下……と言っても、ここに来るのは精霊会議とか何かあった時くらいだけどね。湖の周辺の一部領域に結界が張ってあるって言うのは知ってるわよね」
「え? うん。それは知っているけど」
「結界は常にティタが魔力を使って張り続けていると言う訳ではないのよ」
「?」
「つまりここは結界を張る場所でもある訳ね。ここで結界を展開し、定期的にティタがここに来ては維持するために自身の魔力を捧げている感じね」
「ここで……」
でも確かに。
ティタが結界を張っているとはいえ、常に魔力を放出して展開しているようには見えなかったな。ここで魔力を使って結界の手入れとかをしていると言う事だろうか。
「この地下の中心、向こうに見えるわよね?」
「うん。何かサークル状に設置されている石柱? 岩? があるのが見える」
「あそこでティタが毎回魔力を捧げたりとかしている訳よ。まあ、毎日とかそういう頻度ではないけれどね。結界が若干弱まった弱まったりとか、何かあった際にここに来る感じね」
「なるほど」
あのストーンヘンジみたいな所が、地下の中心? って事は上の結界範囲内の中心でもあるって事か? しかし、これは予想外だったなあ。
「まあ、今回行くのはあっちよ。行きましょ」
「あ、うん」
そう言われて僕はアクアと一緒に目的地へと向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます