第〇九話:冒険者登録②


「お待たせしました。こちらが、ネージュさんの冒険者証明書です」


 そう言って戻ってきたのは、受付をしてくれているルアさん。アリスさんと仲良さそうだったけど、どういう関係なのかな? まあ、良いか。


 差し出された冒険者証明書を受け取る。大きさは、地球で言うと大体クレジットカードとかキャッシュカードとかそのくらいの大きさだ。


「これが……」


 持ってみた感じでは、結構軽い。何で出来ているのだろうか? 見た感じではなんか金属っぽく見えるんだけど、重くないな。軽い金属を使っているのかな?


「冒険者証明書……一部では冒険者カードと呼ばれますが、それには登録した本人の情報が記録されています。名前や冒険者ランクは誰でも見られますが、その他の情報については見えません」

「ほえ……」


 それ結構凄いな。どういう仕様何だろうか? まあ、そこは機密な気がするから聞かないけど。


「記録されるものってどんなものなの?」

「依頼の受注、達成率等の様々な情報が記録されます」

「なるほど」

「冒険者証明書の説明はこのくらいでしょうか。あ……後、紛失時の事がありましたね。紛失した際は、何処でも良いので組合に来て頂ければ再発行が可能です。ただ再発行する際に、手数料として金貨1枚かかってしまいますので、ご注意下さい」


 金貨1枚か。

 思ったより高いな……いや、まだ物価が分からないんだけどね。ティタに渡されたお金も、最大でも大金貨1枚。金貨は5枚に加えて、銀貨と銅貨が数十枚程。手持ちの中で言えば二番目の硬貨を使うしかない訳だ。


「このくらいでしょうか。後は、冒険者についての説明は必要ですか?」


 冒険者の事は、一応大雑把ではあるけど知っている。依頼を受けて達成して報酬を得たり、素材とかを売ったりして稼いでいる人たちの事だ。

 まあ、素材を売るって言うのは冒険者ではなくても出来るが冒険者になっていた方が、若干高めに買い取ってくれるみたいだよ。


 あーでも、冒険者について知っているのはこのくらいか。他にも何かあるのかな? さっきも初めて知った事だってあったし……暗黙のルールとかね。


「お願いします」

「かしこまりました。と言っても、そんな複雑なものでもないですけどね」


 そう前置きをし、冒険者について説明を始める。


「まず、冒険者と言うのは知っての通り、色んな依頼人からの依頼を受け、それを達成する事で報酬を得る……シンプルに、ただそれだけです。組合はその間を仲介していると解釈して頂ければ良いかと思います」


 なるほど? それは既にアクアとかから聞いているけど……。

 でも確かにその一言で全ての説明になるのか……だってそれ以外は特に何もないし。依頼……色んなものがあるそうだが、ぶっちゃけて言ってしまえば何でも屋である。


「それで冒険者組合は、そんな冒険者に対して実力や信頼等のある一定の評価のようなものを設けています」

「評価?」

「はい。それがランク制度です」

「ふむ」


 ランク制度。

 一応その事についても、アクアには教えてもらっていたけど詳しくは聞いてない。一番上がSSでそこからS、A、B、C、D、Eランクがあると言う事だけかな、聞いたのは。

 なので、ランク制度って何? と思うのが僕だが、何となく予想は出来ている。予想出来ているだけで、確証がある訳ではないけど。


「ランク制度と言うのは、その冒険者がどれだけの依頼をこなし、成功させているか。どのくらいの実力があるのか? それらを基準に判断されます。最初は誰もが一番下のEランクからのスタートとなり、例外はありません。そこから依頼をこなしたり、魔物を倒したり等したりして、一定の基準を超えた場合、ランクアップ試験を受ける権利が与えられます」

「ランクアップ試験……」

「はい。組合側がその冒険者の功績等を確認し、問題ないと判断すると昇格試験の旨を対象冒険者に伝えるようになります。最も、試験と言ってもこちらで用意した依頼を受けて頂き、それを問題なく成功させる事でランクアップ出来ます。もちろん、実力等も測りますけどね」

「なるほど」

「ランクアップの条件は、上に上がるに連れて厳しくなって行きます。EランクからDランク、DランクからCランクはあまり変わりません。もちろん、変わらないと言っても基準は少し違いますけどね。内容については機密になっております」


 まあ、それはそうだろう。


「B以降になると、かなり厳しくなってきます。なので、そこに居るアリスさんがAランクと言うのは凄い事です。この街の中では最年少のAランクですね」

「へえ……」


 ちらっとアリスさんを見る。

 さっきまでは、すぐ近くに居たのだが今は少し離れた所で、色んな人と話している様子が伺える。やっぱり伊達にAランクじゃないと言う事か。


「後それからですが、ランクアップ試験を受ける権利については、永久権利としていますので、好きな時に何時でも受けられるようになっています」


 ほうほう。

 一度条件を満たせば、それは永久的な権利となって何時でも受けられる、か。つまり、好きなタイミングで受けられるって事か……それは、結構ありがたいのかな? 分からないけど。


「ランク制度についてはこんな所ですね。他は……あ、もう知っていると思いますが、互いの事を詮索する事はご法度と言うか暗黙のルールとなっています。こう言う所なので、訳ありが多いですからね。もちろん、犯罪者とかそう言った人については相応の対応を行いますが」

「それは分かる」


 普通にアリスさんも言っていたしね。

 詮索する事は……まあ、ないかな。だって、冒険者登録はしたけど依頼を受ける訳ではないし。あくまで、これは身分証として発行するだけだ。


 ……まあ、でも流石にティタからのお金だって使えばなくなるので、不定期に依頼を受けるかもしれないが。


「こんな所でしょうか。何か不明な所とかありますか?」


 ……ある程度は聞いていたので、問題はなさそうだ。


「あ。そうだ。ランクダウンって言うのもあるの?」

「ありますよ。依頼を連続で失敗したり放棄したりすると、当然ですが、信頼もなくなりますから相応のランクに下げる必要がありますからね」

「なるほど」


 まあ、それもそうだよね。

 ランクアップもあるなら、その反対もあるだろうし。ランクアップしたらずっとダウンしないなんて、それだと全然当てにならないし。


「後は定期的チェックによって、ランクダウン勧告を行う場合もありますね」

「定期的チェック?」

「はい。現在状況をチェックして、そのランクで問題ないかの判断を行ったりします。例えば、長期間依頼を受けていないとか、そう言うのも候補に入りますね」


 長い間依頼を受けなくても駄目って事か。

 あれ、僕危なかったりするかな? いや登録したばかりだけど、不定期に受けるつもりで居たし。……まあ一応、程々には受ける事にするか。


 うん、そうしよう。


「他にはありますか?」

「うーん……うん、大丈夫かな」

「承知しました。では、これで登録は終わりになります」


 そんなこんなで、僕は冒険者となったのだった。




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