第〇七話:冒険者組合②
「そういう事で、ここに居るみんなでネージュの面倒見てあげて下さいね。私の命の恩人でもありますし」
「おっす! 任せてください、アリスさん!」
「もちろんだとも! ここに居ない他の冒険者にも伝えておくぜ」
……結局、僕は自分がハーフエルフだと公言した。
やっぱり、子ども扱いされるのはちょっとね……注目を浴びるのも苦手だけど、それでもまあ、子ども扱いされるよりはましな気がする……そうであってほしい。
それにこの街に長く居るつもりは今の所ないし……。
アリスさん自身も助けてもらったって言うのを伝えたようで、何か良く分からないうちに、こんな状況になっていた。
「ネージュちゃんって言うのは失礼かな。えっとネージュさん、アリスさんの事助けてくれてありがとうね」
「それにしても、ハーフエルフかー私初めて見るわ」
「それは私も同じですよ」
何でこうなった?
気付いたら女性冒険者たちに囲まれていたのだ。いやね? こんなナリだけど、男だからね!? 童貞なのも認めるし、あまり女性とか関わった事ないんだけど。唯一、あるのが妹だよ?
え? アクアとかフォンセたち精霊だって女性だって? まあそうなんだけど、向こうは精霊っていう存在だし、人間とかとは違うし……確かに全員が女性型だったけど。
一度前に、ふと聞いた事がある。精霊って女性しか居ないのかって。答えは、精霊には性別はなく、姿が女性型なのは昔からというものだった。
地球でも軍艦とかって、同型艦を姉妹艦って表現するし、確かに女性型を用いられる事多いよね。それと同じなのだろうか。まあ、分からないけど、取り敢えず、精霊には性別がない。
後はもう慣れだ。
一応、初めて人の女性と話した訳だから仕方ないよね。これから慣れて行くしかなさそうだが、そもそもそんな長く同じ場所に居るつもりはないけれど。
ホキュラの街に来たのは良いけど、ここで手掛かりを探せるのかなあ……図書館みたいなところがあれば、分かるかもしれない。後は、聞き込み的な。
聞き込みと言っても、いきなり、異世界に行ける魔法って知ってますかなんて聞いたら、どう思われるか分からないし、ある程度面識のある人に聞くべきか。
ちらりと、ルアさんと会話をしているアリスさんを見る。
……ハーフエルフだと言う事を知ったあの場に居た人たちは、まあ当然だけど驚いていた。やっぱり、アリスさんの言う通りかなり珍しいみたいだ。
そんな囲まれている僕に対して、男性の冒険者たちは、ちらちらと見ているけど、この女性陣たちが居るから見ているだけな感じ。
でだ。
ここに居る冒険者たちは、アリスさんのファンと言うか……色々と助けてもらった事がある人たちが多くて、何て言うの? まあ、アリスさんとの繋がりもあるって事かな。
しかも、あんな美少女な訳で、人気が出ない訳がない。結構告白もされたとか言ってたな……でも全て丁寧にお断りしているそうだ。
あー……だから、僕がアリスさんの子供ってルアさんが勘違いした時に、一斉にこっちを見ていたのか。あれ、ある意味怖かったぞ……。
とまあ、その話は置いておき。
ここの冒険者組合は、酒場と併設されているようで、半分が酒場になっており、テーブルやイスが置かれていたり調理をするためのスペースがある。
もう半分が冒険者組合としての機能を持っている感じ。と言っても、結局はどちらも組合が運営しているので、別に変わった事とかはない。制服は若干異なっているけど。
それで、この組合は入る時にも言ったと思うけど、二階建てである。向こうの方に二階に繋がっているであろう階段が設置されている。
二階は組合支部長の部屋とか客間等があって、更に言うとSランクとSSランクの依頼が張ってあるみたいだ。Aランクまでは一階に張られているそうだ。
これは、ここの冒険者たちが教えてくれた。
「と言う訳で、ネージュの冒険者登録をお願いしたいんですけど」
「もちろん、問題ないよ。仮にハーフエルフじゃなくても、年齢制限はないからね」
今知ったのだが、冒険者登録に原則、年齢制限は特にないらしい。
まあ、制限がないとは言え、明らかに戦えそうにない人や、幼い子供とかだったりだとお断りと言うか注意を促しているそうだ。
子供の場合は、保護者が居ればそのまま登録できるが、一人だけで居る場合とかは話を聞いたりとかするみたいだね。
冒険者になる人は身寄りがない人とか、そう言った人が多い。だから子供が来たとしても、もしかすると身寄りがない可能性もあるので、突っぱねる事は出来ない。
色々と危険とかがあると言う事を伝えた上で、本人が同意すれば登録出来る。
「ただ、アリスさんの事を疑う訳ではないんだけど、あの子は戦えるの? ハーフエルフって言っても、全員が戦えるって訳じゃないし」
「あーそれなら大丈夫ですよ。実際、この街に来る間に襲ってきた魔物をあっさり倒してましたから」
それは本当の事である。
いくら、道になっているとはいえ、やっぱり魔物は居る訳で……森から出て来たのか、元からそこに居たのか、どっちでも良いけど、この街に来る間に何回か魔物の襲撃にはあっていた。
どれも奥地の魔物と比べれば天と地の差くらいの強さだったので、こう、風の刃だけでスパッとやれた。
「ほえー……」
「魔法を得意としているみたいですので、まあ、問題無いですよ」
「なるほどねえ……やっぱり、エルフの血も混じっているから?」
「そこまでは。っと、詮索は禁止ですよ」
「それは分かっているよ! そんな事したら、冒険者組合をクビにされちゃうし」
「それなら良いです。……まあそれで登録をしてあげて下さい」
「了解!」
どうも冒険者同士の探り合い等の詮索については暗黙のルールで、NGとなっているようだ。冒険者は色々と訳ありな人も居たりするので、その辺の問題でもある。
個人の情報を守る? と言った観点から登録時も最低限の必須項目だけを記入するだけで良くなっているみたい。
犯罪者だと発覚した場合は、当然ながらそのまま国に突き出される。当たり前ではあるし、もしそうだと分かっていて見逃した場合は、組合側も匿ったということで同罪とされる場合がほとんどだ。
知らなかったとかであれば、厳重注意とか、注意的な感じで大丈夫らしいが……その辺はちょっと曖昧だなって思う。まあ、地球でも動画とかの違法視聴とかについては結構曖昧だったりするけど。
「お待たせしました。ネージュの冒険者登録をしちゃいましょうか。カウンターの方に行きましょう」
「了解っと」
そうアリスさんが声をかけると、周りを囲んでいた女性たちが一旦離れてくれる。わお……流石はアリスさんと言うべきなのか。
そういう訳で、僕は身分証としても使える冒険者証明書を作るため、登録をしにカウンターへと向かうのだった。
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