第一四話:奥地の魔物②
「来るわよ」
「うん!」
精霊の森の奥地。
始めて来たけど、景色的にはあまり変わらない。まあ、同じ森の中なので当たり前っちゃ当たり前なんだけど。
一番使いやすいと感じている風属性を使って、襲い来る魔物へと放つ。
掌に風を集め、それを圧縮し高速で放つ……精霊魔法なので特に名前はないが、名前を言うのであればウィンドバレットだろうか?
ネーミングセンス? そんなものを僕に期待するんじゃない。そこまで、良いネーミングセンスがある訳ではないんだから。
因みに似たような魔法は人間たちの使う魔法にもあるようだよ? 真面目になんで、精霊魔法と魔法で名前が分かれているの謎である。
とは言え、それはそれで都合が良いのも事実。この世界の人たちの前で精霊魔法を使っても怪しまれずに済むし。
一応、外に行くっていうのは考えているからね。自分でも動いて色々と調べたいし、この世界の事を実際に見て感じて知りたいっていうのもある。
お墨付きはティタにもらっているので、行こうと思えば行けるんだけどね。
「かなり強くなったわねえ。いえ、元から結構異常だったけれど」
「えぇ?」
圧縮された風弾が、魔物をあっさりと貫く。それを見ていたアクアがそんな事を言ってきた。
「全属性を使えるってだけでも相当よ?」
「うん、それは分かっているけどっ!」
話している途中にも魔物は襲って来るので、今丁度その魔物に向けてさっきと同じ風弾を素早く放つ。
威力も何か強いのは認めるよ……奥地の魔物をあっさりと倒せるくらいの威力だし。小型から中型の魔物だからと言うのもあるだろうけど。
大きな魔物とかだったら簡単には倒せなさそうな気がする。まあ、大きくても弱い魔物は結構居るらしいけど。
「ネージュの持つ魔力も異常だし」
「うーん、良く分からない」
魔力の量もかなり多くて異常っていうのは聞いてるけど、正直良く分かっていない。魔法とかを使う時に必要なエネルギーである魔力……確かに魔法を使う時とか何かが抜けて行くような感じはするけど。
これが魔力なのは分かったけど、やっぱり地球人としては未知の力だ。
この世界の人たちは、精霊や人、亜人等全ての種族を含め必ず魔力を持って生まれて来る。その量は人によってバラバラではあるが、鍛錬を毎日しておけば増やせると言う事も分かっている。
ただ平民や貴族、王族と言った存在が居るのだが、やはり王族とか貴族の方が多く持って生まれて来る事が多いとの事。
有名な魔法使いを輩出している名門な貴族とかはその類だったりする。親の遺伝も関係があるみたいで、魔力の多い親から生まれた子は高い確率で魔力を多く持っているとの事。
ただ、事例自体は少ないがその反対もあったりするらしい。つまり、魔力の多い親から生まれたのに少量しか魔力を持たない子供が生まれる場合があると言う事だ。
まあ、鍛錬をすれば増やせるので本当に努力する人とかは周りを凌駕する事もしばしばあるらしいが。
でだ。
このパターンがあるのであれば、当然こっちのパターンもある。
魔力の少ない親から、魔力の多い子供が生まれるパターン。これはさっきの事例よりも更に少ないのだが、それでもあり得る話と言う事。実際に、そういった人も居る訳だから。
特殊な事例は置いとくとして、基本的には魔力量とかは遺伝するため、親の魔力量が多ければ子供も多く持って生まれる事例が多いと言う事だ。
それで、精霊も魔力を持っている。
ただし、人と違い、自分の適性属性は基本的には一つ。だからこそ、水の大精霊とか闇の大精霊とかって呼ばれるのだから。
人と違うのは、もうそもそも規模が違うと言う事。
大精霊はそれぞれの属性を司っているため、その影響力は非常に高い。天候とかも水の大精霊であるアクアなら雨にしたり、やろうと思えば大洪水まで発生させられる訳だからね。
その大精霊の下の上位精霊含む、精霊たちも大精霊程ではないにしろ、影響力は高い。集団で行動すれば、大精霊くらいの事をやってのける事もあり得るとの事だ。
さて。
僕は周りを見渡してみる。この辺に居た魔物はある程度、倒したと思うがまだ何処かに潜んでいるかもしれないので、最後まで気を抜かない。
さっきまでの襲ってきた魔物は、もう物言わぬ状態で地に伏している。倒した魔物と言うのは、基本的にはそのままにしておいては駄目である。
100%と言う訳ではないものの、倒した魔物の亡骸をそのままにしておくとアンデッド化してしまい、彷徨い始める事がある。
アンデッドっていうのはまあ、地球で言うあのゲームとか出て来るゾンビかな? 同類だし。
他にもアンデッド化しなくても、長い間そのままにして置いたら当然腐食していくので、悪臭の原因にもなる。
それは置いておいて、基本的に倒した魔物とかはその場で解体するか、別の場所で解体、若しくはそのまま丸ごと売ったりとかするために持ち帰る人がほとんどなので、亡骸が残る事はないけどね。
「この魔物の亡骸はどうするの?」
「冒険者とかなら喜んで持ち帰るだろうけど、私たち精霊にはあまり必要ないから大体は焼却処分かしらね」
「以前もそうしてたね」
「ええ」
以前と言うのは、魔物との戦いに慣れるために実際戦わされた時の事である。
まあ、精霊にとっては素材何て必要性がないので、持ち帰ったとしてもどうするのかって話になる訳だけど。
「魔石だけは回収しておきましょ」
「了解っと」
魔石。
少量の魔力を含む鉱石で、魔物から手に入ったり、魔力のある場所とかで良く見かける物だ。魔力がある場所以外には、鉱山とかで採掘されたりもする。
魔石の用途は多岐に渡っていて、魔道具とかを動かす動力だったりとか明かりをつけるために使われるとか等々。
取り敢えず、魔石は何かに使えるかもしれないので精霊でも一応回収しているみたいだ。魔力を含む訳だから、確かに精霊としては何かに使えるのかもしれないな。
……今の所は特にないみたいだけど。
そんな訳で、僕らは倒した魔物から魔石を回収する作業に入るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます