第〇八話:魔物とは


 冒険者とは。

 この世界に存在する職業の一つで、イメージしやすいのはトレジャーハンターとかだろうか? いやまあ、お宝を探す事はあるけどそれがメインと言う訳ではないけど。

 冒険者協会と呼ばれる場所で登録ができ、様々な依頼とかを受注してそれらを報告して稼ぐというのがメインの職業。職業と言って良いかは分からないけど、そういうものがあるって事だ。


 依頼以外にも採取した物や、倒した魔物の素材を売ったりとかして稼ぐこともできる。まあ、この売ったりするのは別に冒険者でなくても可能な事だけどね。


「魔物、か」


 良く出て来る魔物と言う単語。

 一応簡単に教えてもらってはいた。簡単に言ってしまうと、この世界に存在する敵対生命体だ。人間だろうが、エルフだろうが、精霊だろうが見境なく、襲ってくる存在だそうだ。


 何時誕生したのかは分からないらしい。

 と言うのも、相当昔から存在していたみたいで、もう魔物については一般常識になっているそうだ。そんな魔物は個体ごとに強さもそうだが、姿形も異なって来る。


 そんな魔物は動物のような見た目から、虫のような見た目、植物のような見た目等、様々な形を持っている。


「魔物については、私たちもまだ分かっていない事が多いのよね」


 僕の呟きが聞こえたのか、アクアが話をかけて来る。


「魔物ってどんな存在なの? 敵対生命体っていうのは聞いたけど……」

「どういう存在と言っても、敵対生命体としか言えないのよねえ。何時から居たのかも分からないし……いくら倒しても減っているようにも感じられない。本当に謎が多いのよ」


 魔物。

 何時からこの世界に存在していたのか分からず、謎多き生命体だ。そこまで強くない魔物ならば、最低限戦闘の心得があれば、対処出来るくらいで、個体にもよるけど弱いものはそこまで脅威ではない。

 当然、油断してしまえばそんな魔物相手でも、大怪我を負ってしまったり最悪の場合は、死んでしまう可能性もある。なので、まあ、弱いからと言っても油断大敵と言う訳だ。


「でも、見境なく襲って来るのは厄介ではあるけれど、マイナスばかりではないのよね」

「そんな事も言ってたね」

「ええ。魔物の種類にもよるけど、毛皮だとか糸だとか、肉だとか……そう言った素材の質はそれなりに良いから、様々な場面で使われていたりしているからね。質の悪い物もあるけど」


 魔物は確かに見境なく襲って来る敵対生命体ではあるが、それでも倒した際に解体して手に入る、肉とか毛皮とかそう言った素材は様々分野において活用されているのだ。

 毛皮なら防具とか、服とかにも使えるし、肉なら料理の食材にもなる。相当昔から存在していたと言う事もあって魔物が居ると言うのはもう常識になっている訳だ。


 で、そんな魔物から取れる素材とかを使っている。


「居たとしても面倒で困るけど、居なくなっても困るって言う、何と言うか微妙な位置付けなのよね。私たちにはあまり関係ないんだけれど」


 確かに。

 精霊にとってはあまり関係ないのだが、この世界の人たちはそれが普通と言う認識になっている。魔物の被害が結構あちこちで起きているらしく、普通に考えれば居ない方が良い……はずなのだが。


 さっきも言ったように、今や魔物の素材は様々なものに使われている訳だ。それで突然、魔物がパタリと消えてしまったら、色々と大変な事になるだろう。生産できなくなったり、売れなくなったりする

 そう考えると、倒しても倒しても減らないって言うのはこの世界で良い事なのかな? でもその反面、実害も出ている。何と言うか。アクアの言う通り難しい位置づけだなあ。


「魔物の謎は多いわ。だから今考えても意味はないわね。ネージュの場合は更に世界が違う訳だから。でもまあ、異世界と言う別の見方が出来るかもしれないけれどね」

「うーん……」


 そうは言われても、異世界とは言え、地球には動物とかなら居るけど、魔物なんて未知の存在は居ないし、何とも言えないな……。


「ふふ、そんな考えこまないの。この世界の人でも分からない事を別世界の人が分かるなんて、それこそ凄いわよ」

「それもそっか」

「まあ、別世界の人がこの世界を作ったなんて場合は分かるかもだけれど」

「流石にそれはないなあ……」


 地球にそんな力があるとも思えない。

 科学の力で世界を作るって、VRとかならまだしも、そんなのあり得ない。……でも実は秘密裏にそんな技術が、なんて疑っちゃうのはちょっと考え過ぎだろうか。

 僕がこの世界に来たのも、そんな世界へ飛ばすための実験とか。こうやって考えると、色々と出てきちゃうのは僕の悪い所かな。


「んん!」


 そんな余計な事を考える事はやめよう。頭を振って切り替える。


「急に頭を振ってどうしたのよ」

「ちょっと余計な事を考えていたので、切り替えてた……」


 わざわざ、振る必要なんてないけど、そこはまあ、気持ちの問題と言う事で。

 魔物と呼ばれる存在がこの世界には居て、それらはもう見境なく襲って来る敵対生命体。だから遭遇したら基本は倒すか逃げるか、それだけ分かっていれば良い。


 魔物以外にも脅威は居る訳だから。


 そんな訳だし、僕も油断は出来ないかな。魔法が使えると言っても、地球人の僕にとっては身の程を超える力であるのは間違いないので、しっかり使い方とか覚えないと。


「そうなの? まあ、程々にね。あまり考え過ぎて頭がショートしたら元も子もないわよ」

「あはは……うん、気を付けるよ」


 アクアの言葉はご尤もだ。

 うん。あまり考え過ぎないように気を付けないとな……今は良いけど、これが戦闘中とかだったらかなり危険だし、反省反省。


 最優先目標は地球に帰る事。それを忘れてはいけない。大怪我なんてしたら笑えないし、油断してあっさり死んでしまうって言うのも笑えない。


 気を引き締めねば。


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