第〇六話:闇と光の大精霊


「ん。呼ばれた気がした」

「うわ!? フォンセ、そんなぬるりと出てこないでよ」

「むふー」

「はあ……もしかして、さっきからずっと居た?」


 何処からともなく、一人の女性がすぅっと出てきて流石に少し驚いたけど……どうやらこの子が闇の大精霊であるフォンセさんっぽい?


「ん。話は聞かせてもらった。異世界の精霊……興味ある」

「相変わらずね……まあ、そういう訳だから、仲良くしてあげて」

「ん」


 アクアさんは、水を司っているという事もあり、透き通るような水色の髪に水色の瞳をしている。闇の大精霊であるフォンセさん? は漆黒の髪に、黒い瞳をしている。そして、アクアさんと比べて身長が低め。

 後何故か両手で、クマのぬいぐるみのようなものを持っている。


「ん。初めまして。私、フォンセ。一応闇の大精霊」

「えっとネージュです。フォンセさん?」

「フォンセで良い」

「え、でも」

「フォンセ」

「フォ、フォンセ」

「ん」


 何とか呼び捨てで名前を呼ぶと、満足げに僕を見て頷くフォンセ。身長は低めだけど、それでも今の僕よりは高い。


「話は聞いてる。元人間で精霊、そして異世界人……いっぱい」

「あはは……自分でも分からないよ」


 それだけ見ると、僕かなり特殊だな……元人間っていう所は否定したい所だけど。元の身体に戻る事を諦めている訳ではないし、まだ元人間ではない……と思いたい。

 まあ、精霊というカテゴリになってしまっているけど。


「私も出来る限りサポートする。気軽に呼んで。あ、でも昼間は苦手だから勘弁して欲しい」

「昼間が苦手なの?」

「ああ、フォンセは闇の大精霊だから、光には少し弱いのよ」

「なるほど」

「ん。一応、昼間でも出歩けるのは出歩けるけど、きつい」

「そんな訳だから、どうしても呼びたい時以外は昼に呼ぶのはやめてあげてね」

「了解です」


 そもそも、呼び方が分からないけど……名前を言えば、来てくれるのかな?


「やあ!」

「うああ!?」


 そんなこんな、話していると突然後ろから大きな声が聞こえ、思わず驚いた声を出してしまう。恐る恐る、声のした方に向けば、そこには綺麗な金色の髪をした、金眼の女性が悪戯っぽく笑ってこちらを見ていた。


「ルミエール、煩い」

「ああ、酷い!」

「ネージュが驚いてる。反省して」

「いや、あははは……何か不思議な気配を感じる子が居るって聞いてさ、ついついね」


 いや、ついじゃないんだが?

 流石に僕も後ろから大声出されたら、驚くよ! 心臓止まるかと思ったよ。この人だれって思ったけど、フォンセが今ルミエールって呼んでいたし、光の大精霊って事だよなあ。


「ごめんなさい。私、ルミエールって言うんだ! よろしく! ネージュちゃん!」

「えっと、はい宜しくです、ルミエールさん」

「ノンノン! 私の事はルミエールって呼んで!」


 最初にフォンセの名前を呼んだ時のように、さんを付けたらまたそんな事を言われてしまった。え、何で精霊って皆、こんなフレンドリーなの!?


「うー……る、ルミエール」

「うんうん! それで、話についてはさっき、アクアとティタから念話で聞いたよ! 大変だったね。異世界から気が付いたらこの世界に居たんだって? しかも、性別も身体も変わってしまって」

「え、何時の間に……」

「この子の気配を感じたので、念話で説明できるように準備していただけですよ」


 そう説明してくれたのはティタである。

 念話……一応、ティタに教えてもらっていたけど、声に出さなくても会話ができるっていう便利な魔法の事だ。距離があり過ぎると、届かなかったりするみたいで、まあ、電話みたいな感じかな?


「それで、ネージュちゃんの面倒を、私たちが見れば良いんだよね?」

「一応そうですね。異世界から来たという事もあって、知らない事も多いでしょうし。それに、彼女からは強力な魔力を感じますし、無自覚のままというのも危険ですからね」

「ん。確かに。ネージュの魔力、私たちよりも多い気がする」

「それもあるけど、不思議な感じもするよね。そこは異世界人だから、って事なのかな?」

「そうね。説明したと思うけれど、ネージュには全属性の精霊魔法に適性があるわ」


 一気に人数が四人になって、そこそこ賑やかになり始める。まあ、話題というか話の内容は僕の事なんだけど……何か、僕の持つ魔力が強大らしいんだけど、いまいちピンとこないんだよね。


 魔力っていうのは、魔法を使う時とかに消費するエネルギーのようなもので、これがないと魔法が発動しなかったり、不発に終わったりする。

 この世界では誰もが魔力を持っていて、魔法を使えるのが当たり前にような世界みたいだ。で、魔法と言っても適性というようなものがあって、適性のない属性の魔法は使えないらしい。

 魔法の属性っていうのが、精霊と同じで火、水、風、土、光、闇と全部で六つの属性がある。火属性に適性があれば、火属性の魔法が使えるけど、適性がなければ使う事は出来ない。


 僕ら精霊が使うのは、魔法ではなく精霊魔法なのだが、属性は一緒で六属性あるという事。

 適性に関しても同じで、さっきも言ったと思うけど、精霊はそれぞれの司る属性の精霊魔法以外は使えないのが、普通で、複数の属性が使えるのは異例なのである。


 ただ例外として、水と風の上位精霊以上の場合は、水と氷、風と雷といった派生と言うか特殊な属性の精霊魔法が使えるらしい。この場合は実質、二属性を扱えるという事になる。属性としては一緒にされているけどね。


「私たち大精霊六人居れば、全て教えられる」

「そういう事です。私が全部教えても良いのですが、私もやる事とかがあったりすると、教えられませんし、全員で教えた方が効率は良いでしょう」

「取り敢えず、この場に居るのはティタを除くと水の大精霊の私に、光の大精霊のルミエール、闇の大精霊のフォンセの三人だし、三属性は最低でも教えられそうね」

「他の三人は?」

「念話で話しかけても、今の所反応がないのよね。何か立て込んでいるのかもしれないわ」

「シルフは、まあ多分あっちこっち回ってそうだね。そのうち、応答するじゃない?」

「ん。イグニはこの時間だと寝てそう」

「ノームは、何かを作っていると反応しなくなるいからなあ」

「取り敢えず、ここで集まっている面子だけで、サポートしますか」

 

 また、知らない名前が出てきてる。

 多分、残り三人の大精霊の名前だと思うけど……どの属性の大精霊なのかまでは、分からないな。でも、シルフっていう名前は地球でも聞いた事あるような……確か風の精霊だっけ? 地球の認識で合っているなら、シルフは風かな?


 今は居ないみたいだ。


 こうやって実際会って話してみた感じだと、ルミエールもフォンセも良い人……精霊そうだ。フォンセは、ちょっと言葉数が少なめで、ルミエールは何と言うか、ハイテンション?


 他の三人の大精霊も話しやすい人だったら良いけど……。





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