第〇五話:異世界の精霊『ネージュ』
ネージュ。
雪という意味を持つらしいが、その名前をこの世界では名乗ると決めた後、ティタとアクアさんには色々と教えてもらえた。この世界の事や、魔法と呼ばれる力の事、僕自身の事など。
「間違いなく、ネージュは精霊ですよ」
「そうね。精霊と同じ感じもするし、しかも何か強大な魔力も感じるわね」
「そうなの?」
「ええ。と言っても、自覚はないと思うけれど」
僕はどうやら、精霊という存在になってしまっているようだ。まあ、さっきか何度か精霊っていう単語を聞いているので、そうなんだろうな程度で考えていたけど。
精霊。
それぞれの属性を司る存在であり、一部の人からは信仰されているようだ。魔法とか、そういった力を使えるのも精霊が居るからと言われているそうだ。
精霊には、まず精霊王という頂点……つまり、今ここに居るティタの事だが、全ての精霊統べる王が居る。そしてその下に六大精霊と呼ばれる大精霊が居るとの事。
アクアさんが、そんな六大精霊の一人で水の大精霊である。水の大精霊はそのまま氷の大精霊でもあって、アクアさんは水と氷を司っている。
で、他にも大精霊が居るのだがその大精霊の下に居るのが上位精霊、その更に下には中位精霊、一番下には下位精霊と呼ばれる精霊がいて、この世界の各地に存在している。
上位精霊は、その下の精霊をまとめるリーダー的な役割を担っており、そのリーダーを含めてまとめて統べるのが大精霊だ。そして、そんな大精霊を含めて全精霊を統べるのが精霊王と言った感じだそうだ。
中位精霊や下位精霊は人型を取れず、基本的には見えない。そもそも、精霊自体人間とかには普通見えないのだ。精霊と契約したり、精霊に気に入られた場合は姿を見せる場合があるらしい。
「まあ、魔法については特に私たちは関わっていないんだけどね」
「え?」
「あれは彼らが生み出した力よ。とは言え、そんな魔法に精霊が加われば強力な魔法になる事もあるけれどね」
との事らしい。
魔法が使えるのは精霊がいるから、と言うのは間違いみたい? でも、精霊と契約するとより効率よく魔法が使えたり、威力が上がったりとか様々な効果を得られるとの事で、全く無関係という訳では無さそうだ。
因みに精霊にも魔法のような力があって、それらをどう呼ぶかと言えば、精霊魔法と呼ぶみたいだ。魔法と精霊魔法……どっちにも魔法という言葉が入っているけど、別物だそうで。まあ、起こす現象にはそこまで違いがないけど。
「私たち精霊の役割は、この世界を見守る事です。この世界が誕生した時から、ずっとその役割をしていました。とは言え、精霊も命が無限という訳ではないので、私たちはもう数えられないくらいの代になりますね」
「そうね。途中までは数えていたらしいけど、流石にやめちゃったみたい。私たちが今何代目なのかは分からないわね。記憶とか引き継ぐ訳でもないしね」
「そうなんだ……」
桁が違いすぎて、驚きすら出来ない。
取り敢えず、精霊たちはこの世界を見守る存在という認識で良いのだろうか? それにしても精霊も流石に不死とかではないんだね。何年生きているのか分からないけれど。
「私たちの代になって何年くらい経ったかしらね」
「うーん。数えてないので分かりませんね。少なくとも500年は過ぎていると思いますよ」
「そのくらいかー」
500年という単位があっさり出てくるのがもう次元が違う。
そうなると、この世界って今何年目なんだろうか? 地球みたいに紀元前とかもあったら、かなり昔になりそう。
「うーんそれは分からないですね。私たちの代が生まれる前の事になりますし……少なくとも数千単位ではないでしょうね」
「そうね、数万とかかしら? 何時から精霊が居たのかも分からない状態だから」
それもそうか。
記憶とかを共有している訳でもないし、記録にも残していないみたいなのでそんな昔の事を今のティタやアクアさんたちが知るはずないか。
あ、でも、精霊は記録とか残さないけど人間とかはどうだろうか。結構人間は記録を残す種族だと思うし、残ってたりするのかな? まあ、人間がそもそも何時から居たのか分からないけど。
この世界にも人間という人種は存在している。その他にも、エルフやドワーフと言った亜人と呼ばれる種族も居るみたい。これはティタとアクアさんに教えてもらった事である。
僕は何だか人間ではないらしいし……。
ティタもアクアさんも僕が精霊だっていうのは間違いないと言っていた。でもって、僕は普通の精霊とも違う。何故か? それはまあ、お察しの通り、異世界人であるという事、他にも自分の力についても特殊みたい。
精霊は精霊王を除き、自分の司っている属性の力しか使えないのが普通らしいのだ。対する僕は精霊王のように全属性を使えている訳だ。
あの場で試していたのは、火と水、風に土だけど、ついさっき、ティタたちに教えてもらいつつもう二属性……光と闇についても試したのだが、それも普通に使えた訳だ。
流石に全てを試せた訳ではないけど、全属性の力が使えるというのは事実で、それが異例だそうだ。
これって、良くある異世界系の物語にある、チートっていうやつなのではないだろうか? そこまでライトノベルとかを読んでいる訳ではないけどさ。
どの属性にも属せるし、どの属性にも属さないとも言える。
異世界の精霊という感じだ。いや、僕元は地球では人間だったんだけどなー……普通に就職して働いていた、一般会社員だよ? それがどうして、精霊なんかになっているんだ。性別まで変わってて本当に、ワケガワカラナイヨ。
「良いじゃないの。異世界の精霊ネージュ……結構かっこいいと思うわよ」
「そういう問題ではないですけどね……かっこいいのは認めますけど」
ティタまで認めちゃったよ。
異世界の精霊ネージュ……確かにかっこいいけどさ。
「まあ、現状何もわからないですし、当分は私たちがネージュの面倒を見ますか。異世界とは言え、同じ精霊ですしね」
「そうね。他の大精霊たちにも伝えておく?」
「それが良いでしょう。お願いできますか? 私からもお願いしますけど」
「ええ、任せなさい。この時間なら闇のフォンセなら、近くに居るでしょうし」
「ルミエールも居るのでは?」
何か新たな名前が……。
「フォンセ? ルミエール?」
「あ、分からないわよね。えっと、フォンセは私と同じ大精霊で、闇を司っているわ」
「ルミエールは、光の大精霊ですね」
「なるほど」
時間帯的にも夜だし、確かに光と闇の精霊なら居そうな気はする。
と言うか、他の六大精霊に伝えるって事だよね? 大丈夫かな……アクアさんは良い人…いや良い精霊? だけど、他の大精霊たちが同じとは限らないし……。
「ふふ、心配しなくても大丈夫ですよ。事情を話せば仲良くしてくれるはずです」
うーむ。ティタがそういうのであれば大丈夫、なのかな? ちょっとだけ不安を覚えつつ話が進んでいくのだった。
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