第〇三話:第一村人ならぬ第一精霊王?!


「まず自己紹介から。私の名前はティターニアです」

「ティターニア……さん?」

「気軽にティタとお呼びください」

「えっと、ティタさん?」

「さんはいりませんよ」

「……ティタ」


 何か無言の圧を感じたので、何とか呼ぶ事にする。あまり呼び捨てって得意じゃないんだよな……妹に対しては呼び捨てで行けるけど。


「あちらに行きましょうか。私の手を掴んでくれますか?」

「え? あ、うん分かった」


 言われるままに、僕はティタの手を掴む。そうすると、ティタも掴む力を強め、そのまま僕を引っ張って行く。


 ふわり。

 地面に足をつけている感覚がなくなる。


「ええ!? 落ちる!?」

「大丈夫です。落ち着いて確認してみてください」

「へ?」


 はっとなり、一度深呼吸して落ち着かせる。

 浮いている……のだが、落ちる気配はない。ティタと手を繋いでいるからなのか、そこまでは分からないが、今僕は空を飛んでいる。


 何が……。


「ふふ、驚き過ぎですよ」

「誰だって急に空飛んだらこうなるって……」


 落ち着いたところで、空を飛んでいる僕らを夜風が通り抜けていく。どの季節くらいなのかは分からないけど、風は若干冷たい感じだ。

 下を見ると、どうも今僕らはさっきの湖の上を飛んでいるみたいだ。空から見ても、この湖は綺麗だ。後やっぱり、かなり広い感じだな。


「あそこですね。降りますよ」

「うん」


 少しの間、空の旅? をすると、湖の中に小さな小島が見えた所で、ティタは降下し始める。それにつられ、僕も徐々に降下し始め、地面が近くなっていく。目的地はあの小島のようだ。

 良く見ると、小島の中央にはぽつりと、お金持ちの家の庭とかにありそうな、小さな建物? があった。何だっけ、東屋だっけ? 何かこう、ティータイムとかで使いそうな場所。


「ふう」


 地面に足をつけている感覚が戻り、安堵する。

 小島と言う事もあり、周囲は湖で囲われていて、孤立しているのではないかと思う程だ。大分先の方に森の木と思われるものがあるものの、結構向こう岸までは遠そうだ。


「行きましょうか」

「うん」


 一息ついたところで、僕はティタに案内されるまま東屋の方へ進む。


「どうぞ、好きな所に座ってください」


 東屋の中に入ると、そこにはそこそこ大きめな丸いテーブルが一つと、椅子が4つくらい? 置いてあった。テーブルの上には何も置かれてない。


「珍しいわね、ティタがここに人を呼ぶなんて。……あれ、でもこの気配は」

「アクア、来てたんですね。やっぱり、感じますか?」

「ええそうね。間違いなくい、精霊……私たちと同類な気がするわ」

「やはりそうですか。……うーん」

「どうかしたの?」

「いえ、新しい精霊なのであれば、私が感知できても可笑しくないのですが……」


 え。精霊?

 さっきも精霊って言葉を聞いた気がする……今回は普通に話しているくらいの声だから、僕でも聞き取れている。僕が精霊の同類?

 何が何だか分からないのだが……。


「あ、ごめんなさい。私の名前はアクア、一応水の大精霊よ」

「水の大精霊……?」


 え? 大精霊?


「ティタ、話していないの?」

「いえ、後で話そうと思っていたんですけど……」


 僕がアクアさん? の自己紹介に困惑していると、何処か呆れたようにティタに言うアクアさん。


「私から説明するけれど、ティタは精霊王なのよ」

「せ、精霊王?」

「ええ。つまり、私たち精霊の一番頂点に立つ存在って事ね」

「……」


 うん。いきなり、そう言われてもどう反応すれば良いのだろうか?


「すみません、後で話そうと思っていたんですが」


 アクアさんがジト目でティタを見ると、何処か申し訳なさそうな表情を見せて僕に謝って来る。


「まあ、取り敢えず、詳しい話をしましょうか」

「それもそうね。この感じ、今まで感じた事ないものだけど……彼女は精霊なのよね?」

「恐らくは。ただ、私が感知できなかったと言うのはちょっと不思議です」


 聞こえてきた話を簡単にまとめると、僕は精霊らしい。でもって、精霊ではあるものの、精霊王であるティタには感知できなかったと言うのが不思議に思っているそうだ。


 いや、精霊って何って話なんだけどね。

 アクアさんは水の大精霊と言っていたし、そうなると他の属性? の精霊も居ると言う事かな。火の大精霊、風の大精霊、土の大精霊に光と闇の大精霊とか。


 分からないけど……。


「って、また置いてけぼりにしてしまったわね」

「いえ、お構いなく……」


 確かに良く分からない話だし、ついて行けてないのは事実だが、二人の会話を邪魔する気はない。まあ、何でここにティタが連れてきたのかは気になるけど。


「うーん。そうねえ……まずは、あなたの事、聞かせてもらっても良いかしら。どうせティタの事だから、あなたの事、聞いてないわよね」

「ちょっと、ティタの事だからってなんですか。……確かに聞かずに、ここに連れてきてしまいましたけど」

「はあ」

「う」


 あの、ティタって精霊王なんだよね? 水の大精霊よりも上だよね? 二人のやり取りを見ていると、全然そんなの関係なく、仲が良さそうだ。

 精霊だからなのかな? まあ、それはともかく、僕の事か……でも、自分でも良く分からないんだよな。気付いたらあの湖に居たし。


「信じてくれるかは分かりませんけど……」


 ここは素直に答えるべきだろうか?

 精霊と言う存在がどんなものなのか、分からないが、見た感じでは普通ではない存在だと言うのは分かる。空を飛んだり、半透明になったりとかしていたし。


 それに精霊王……王とついているので、その時点で普通ではないよな。

 さっきもちらっと、アクアさんが話してくれたけど精霊王は精霊の頂点に立つ存在……まあ、かなり偉いと言うか、そんな人って事になる。


 人と表現して良いかは別として。


 でだ。僕の事については信じてくれるかは分からないけど……まあ、隠す必要はないかな。分からない事だらけなのは事実だし少しでも、何かが分かるのであれば……。


 僕は、そんなこんな考え、気が付いたらあの湖に倒れていた事、地球と言う所にある日本と言う国で暮らしていたと言う事など、正直に話すのだった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る