第〇二話:魔法(仮称)と精霊?


 魔法と仮称したこの不思議な力について、色々と検証していたら日が暮れ始める。


「まずっ」


 ついつい、隅々まで検証したくなるからこれは問題だなあ。

 それはさておき、日が暮れ始めてしまったが一応大体は検証できたと思う。ただ、検証って言うほどやった訳ではないのだが、取り敢えず大体は把握したと思う。


 まず、この魔法には属性のようなものがあった。

 なんというか、ファンタジーお約束的な。まさか自分がこんな目に合うとは思わなかったが、この力が使える事が出来ただけてもマシと言うべきか。


 試したのは真っ先に思い浮かぶ四属性の火、水、風、土である。この割り当てで合っているかは別として、僕のイメージ的な問題だ。結論から言うと、この四つについては普通に使えた。


 まず、火属性。これはもう分かる通り、火を出したり火の玉を放ったり出来る。ここは森の中なので、あまり使えなかったが、火を出せるというのは分かった。

 火が使えると言う事で、明かりや焚火に流用出来そうな感じ。攻撃するのにも使えそうだけど、さっきも言った通りここは森の中なので、火を使うのはあまり宜しくない。火が木や草、葉などに燃え移ったら大惨事待ったなしなので、本当に簡単に確認した程度だ。


 それで、次が水属性。こちらも名前の通り、水を出したり水の玉を飛ばしたり、他には一定範囲内に雨のようなものを降らせたり出来た。まだまだ色々使えそうではあるものの、水についても普通に使えた事が分かった。


 で、次の風属性なんだけど、どうやら木を倒したのはこの属性の魔法っぽい。風の刃のようなものを手から放つ事が出来たので、まず間違いない。

 他にも、風を生み出して物を浮かせたり、少し強めれば強風を起こしたり、恐らく竜巻みたいなものも起こせると思う。やり過ぎると大変な事になりそうなので、こちらも控えめでやっていた。


 最後が土属性。

 正直な所、土属性って僕の中のイメージでは、あまり攻撃的な物がない感じだ。

 むしろ、攻撃ではなく防御とか作業とかに使う魔法だって思っている。だって、実際、土を操って穴を掘ったり埋めたりする事はもちろん、壁を作ったり、好きなように加工出来たりとか……まあ、そう言うのが出来た訳だ。

 攻撃手段と言えるものは、石礫のようなものを飛ばす事くらいかな? もう少し詳しく見てみたい所ではある。


 まあ、ほとんどは自分の勝手なイメージでしかないが、使えたのでそういう事なんだろうって思った。まだまだ試したい事がいっぱいあるけど、このままでは夜になってしまう。


「せめて屋根くらいは欲しいよね」


 まだ明るいので、やや急ぎ気味に枯れ木の枝や、さっき僕が風の魔法で倒してしまった木の一部を湖の近くに集める。

 特に湿っている感じはしないので、火はつくはずだ。試しに一本に火の魔法を使えば、特に消える事なく燃え始める。


「良い感じだ」


 焚火、とでも言うべきか。


「えっと、後は……一時凌ぎだし、別に凝らなくても良いよね」


 地面に手を付け、どういう形にするのかをイメージし、魔法を発動させる。すると、目の前が少し光りだし、土で出来た長方形の箱のようなものが出来上がる。

 中は空洞になっており、人も入れるような大きさになっている。土の匂いは気になるけど、まあ、屋根さえあれば良いって事で、今日はこれで凌ごうか。


 明日になったらもっと、ましなものを作るつもりである。

 少しだけ中を微調節した後、土の家? から外に出て、集めた木に火をつける。気が付けば既に日は沈み、辺りが真っ暗となっていた。

 とは言え、夜空は綺麗で曇っておらず、星や月が光っているので、言うほど真っ暗ではない。更に言えば、そんな星や月の光が近くにある湖に反射しているのか、結構明るい。


「……」


 そこで僕は、湖の方を見て思わず、息を飲み込む。

 星と月の光で、明るいのかと思ったら良く見れば、湖も淡く光っているのだ。しかも、何か半透明な蝶? のようなものが、湖をひらひらと飛んでいる。


「綺麗……」


 その光景は、何処か幻想的で神秘的な雰囲気を出していた。


「あら、こんな所にお客様なんて、珍しいですね。何十年ぶりかしら……」

「え?」


 湖のその幻想的な光景に見入っていると、聞き覚えのない女性の声が聞こえる。慌てて左右を確認するも、それらしき人物は見えない。後ろかと思って、振り向いてもやっぱり誰も居ない。


「こっちです、こっち」


 まさかと思い、上を見上げるとそこには半透明で淡く光っている女性が浮いていた。え、幽霊? でも、幽霊にしては雰囲気が違う。


「幽霊って失礼ですね。まあ、そう思うのは無理ないですけれどね」


 そう言って、女性は地面に足を着ける。すると、さっきまで半透明だったその身体が実体化? して、淡く光っていたのも消える。


「……」

「なるほど、あなたは精霊ですね。新しく生まれたのでしょうか? いえでも、私が新たな精霊の気配に気付けない事はないはず……」


 僕をじっと見た後、何か急に一人で考え始めちゃったよ。

 何か今、精霊っていう単語が聞こえた気がする。精霊って何だろうか? というか、そもそもあなたは誰ですか。


「失礼しました。あの、ゆっくりお話ししませんか」

「お話?」

「はい。ちょっと色々と気になる事もありますし」


 うーむ。

 誰だか分からない人に、ついて行くのは抵抗があるが……この人からは悪意のようなものは感じない。悪意と言うか、何かこう、普通とは違う感じがする。

 普通とは違うって何だって話だけど、そうとしか言えないのでどうしようもない。ともかく、この人からは悪意とか敵意は感じないから、ついて行っても大丈夫かな?


 ……それに、もしかしたら何かが分かるかもしれない。僕がここで倒れていた理由とか、色々と。まずは話を聞いてみようかな。





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