TS精霊幼女は元の世界に帰りたい ~気付いたら精霊(幼女)として異世界に放り出されてたけど、精霊の力を使いつつ元の世界を目指します~

月夜るな

第一章:TS精霊幼女と精霊たち

第〇一話:幼女?!


「……どうしてこうなった」


 自分の口から、可愛らしい声が溢れる。僕は今自分の身の起きている事に、理解が追いつかないでいた。それは何故か? この状況が全てを語っている。


 近くにあった湖に近寄り、水面を覗くとそこには可愛らしい銀髪に金色と青色のオッドアイの幼女が映っていた。頬はほんのり赤く、肌も真っ白だ。

 綺麗な透き通るような銀髪は、腰に届くくらい長い。そんな幼女は呆けた顔をして、こちらを見ている。


「……」


 何を隠そう、この幼女こそ僕である。

 いやいや、可笑しいでしょ! 僕、男だよ!? 断じてこんな可愛らしい幼女なんかではない。しかし、手を振れば振り返し、首を傾ければ同じように傾ける。ピースと作ってみれば、同じようにピースを返してくれる。


 嗚呼……間違いなくこれは僕だ。

 白いワンピースを一枚だけ、着ていて頭には金色に光る、ティアラが乗っていた。いくら頭を動かしても、落ちる事がない……どういう原理だこれ。いや、それも気になるけど、今はそれ所ではない。


「……一体何が起きたの?」


 訳が分からないよ。

 記憶が正しければ、何時ものように仕事を終えて、帰宅したはずだ。その後はなんだかんだ、自分の時間を過ごし夕飯を食べてお風呂にも入って、そのまま就寝したはず。


 が、しかし。

 目が覚めたらこんな状況である。本当に訳が分からない。気が付いたら見知らぬ場所で、幼女になって倒れていたとか最近流行りの異世界転生かよ。


「……手小さっ」


 自分の両手を前に出して見る。

 僕のものとは思えない小さな手に、病的なほどに真っ白な肌。頭の後ろに感じるのは、髪の毛の重さだ。


「……ないな」


 分かっていたさ。

 こんな姿になっているのだから、ないに決まっているだろう。何がとは言わないけど……。


「はあ」


 自然にため息が出る。

 でも、ため息の一つくらい出したくなるさ……こんな状態なんだから。仮にさ、最近流行りの異世界と言っても普通は、女神とか神様とかが出るものじゃないの?

 僕の場合、何の前触れもなくこんな場所に放り出されているのだが……?


「誰か説明して」


 ……空を見上げてそんな事を言ってみるも、当然答えは帰ってこない。

 雲一つない、快晴の空は今の僕を何処か笑っているように見える。僕のただの勘違いかもしれないけど……でも、笑われても何でこうなったのか全くわからないし。


「何か耳が微妙に尖っている? まあ、髪の毛で隠れるくらいか」


 他に気になる点と言えば、今のこの自分の姿の耳が微妙に尖っている事だ。でも、触ってみると痛くはなく柔らかく、少しくすぐったい。間違いなく耳であるのは確かのようだ。ギリギリ今の髪の毛で隠せるくらいかな?


「エルフ……とは違うよね」


 エルフだったらもっと長いイメージがあるし。

 もしかしたら、この長さでエルフって言う可能性も、否定できないけど、ともかく僕のイメージとしては、もう少し長いと思っている。だからエルフとは違う……と思う。


「うーん」


 さて。僕はこれからどうしたら良いのだろうか? 当然、何も手掛かりのようなものはないしここが何処なのかも分からない。ただ、周りを見た限りでは木に囲われているし、結構深くまでありそうだ。

 そうなると、ここは何処かの森の中にある湖という事になるが……湖と呼んで良いのかは分からないけど、向こうの方が見えないし霞んでいるからかなり広いのは確かだ。池とか泉とか、そういったレベルではないだろう。


 で、何よりこの湖の水めっちゃ綺麗なのだ。そこが見えるくらい、透き通っている。ここまできれいな水を僕は見た事あっただろうか。湖の中心部分は分からないけど。


「飲めるのかな?」


 飲めないとしても、この状況……このままずっとここに居るのは命に関わりそうだ。今の所は大丈夫だが……食料になりそうな物とかあるだろうか?

 現在の状況も不明だし、現在位置もわからない。そうなると、しばらくはここで立ち往生になる。そこで問題になるのは、食料とか飲水とかだろう。


「まずはゆっくりと、考えられるような場所を作らないと」


 サバイバルの知識とかは全く無いけど、取り敢えず雨風を凌げる場所は作っておきたい。じゃないと、これから先どうなるか分からないから。


 幸い、と言うべきか周囲に木はたくさんある。この木を伐採して、何とかならないだろうか?


「あーでも、道具が……」


 木の伐採をするにしても、道具がない。素手で倒せる訳ないし、早速詰んだ?


「何か、何かないか……」


 まだ昼間だから良いけど、夜になった場合にも備えて灯りも欲しい。何か使えそうなものはないか……と思いつつ、周りを見てみるけど何もない。


「んー……」


 さて、詰んでしまった。

 そんな一言で終わらせられればどんなに良かった事だろう。だけど、終わらせられない……死活問題である。いきなり訳の分からない場所に幼女の姿で放り出されて、そのまま餓死とか絶対イヤだぞ。


「こう、何か……スパッと切れる何かがないかな?」


 そんな素振りをした瞬間だった。


「んえ!?」


 今なんか手から何か尖ったようなものが出なかっただろうか? 気の所為……ではなさそうだ。その証拠に、今向いている先にある木が数本倒れていた。


「……oh...」


 いや何が起きた?

 僕がやったの、これ? いやいや僕にそんな特殊能力はないよ……。


「もしかして?」


 いや、これあり得るのか? でも、それくらいしか思い当たるものがない。


「魔……法?」


 それは良くあるファンタジーな小説とかに登場する力。ハリー○ッターみたいな……。

 火や水、雷だとか風とかを自在に操れる力。しかし、そんな便利な力はあくまでお話の中での存在。地球では迷信とされているものだ。しかし、それくらいしか今起きたことを説明できない。


「えいっ」


 さっきと同じ動作をすると、またもや同じように何か良く分からない物が手から放たれ、飛んでいき、更に何本かの木が倒れる。


「ふむ」


 これは、ちょっと検証して見る必要がありそうだ。


 僕はこの謎の力を魔法と仮称し、検証を始めるのだった。

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