第2話




「再婚? いいんじゃん?」


 空は『俺には関係ないことだ』と割り切り

喜ぶ母親にそうサバついた精神で答える。


「今回は相手側も子供がいてね?」

「ふーん。どうでもいい」


 強いて空の気になる事と言えば、引っ越しを急に言われて訳の分からないまま引っ越し作業を手伝わされてることぐらいだろうか。


 空は、休憩する母を睨みながら冷蔵庫を運ぶ。


「頑張ってー」

『ふざんけな!!』


 心の中で叫びつつ、空は冷蔵庫をトラックに乗せて引っ越しの準備が終わったことを意味させる。


「じゃあ、行くわよー」


 母は、トラックに乗り込み運転を開始した。

 車に乗ると母の煙草の匂いが広がる。


「うっわ、消臭剤効いてない。ごめんね、空」

「いいよ。気にしなくて」


 鼻が曲がりそうな匂いを我慢しながら、トラックの助手席に乗る。


 すると、エンジンが掛かるとともに母の好きな昭和に流行ったような世間一般が古いと呼ぶ曲が、トラック内に響いた。


 空はそれに合わせてイヤホンを装着し自分の好きな曲を聴きながら、シートベルトを着用する。


「じゃあ、行くわよー」


 慣性に体を引っ張られた。


『引越しか』


 遠くに引っ越すわけではないが、空のかなりの時間がこの場所では流れている。

 愛着を抱くなと言うのは難しい。


「クーラーつけるね」

「ん」


 勝手につければいいものの母は、わざわざ空に聞いてからトラック内の画面をいじり、冷房のボタンを押す。


 すると、クーラーからは夏を感じさせる懐かしい様な匂いが空の鼻を撫でた。


「俺、この匂い好きだわ」

「ホコリの匂いだよ?」

「・・・・・やっぱ、なんでもない」


 空は、外を眺めて溜息をつく。

 記憶を探るのも面倒になるほどに。色々なことが起きた。


 大学では一人暮らしをさせてもらう為か、

空は新たな生活への期待は対してせずにいた。


 時間が過ぎるに連れて、空は記憶にある景色を置き去っていく。

 そして、記憶ない目新しい景色が写り始める。


 見た事のない景色に不自然に胸が躍る。

期待はせずとも初めて見るものを眺めるのは楽しいものだ。空はそう心の中で言い訳しつつもフッと微笑む。


「それで相手さんはねー」


 空は車体のドアに寄りながら惚気を始めそうな母を遮断する様に即座に音楽の音量を上げて、目を閉じる。


 しかし、それを拒否する様に母はイヤホンを空の耳から外す。


「そしたら、あの人何って言ったと思う」


 空は馴れ初めなど聞きたくないので再びイヤホンを耳につけようとすると腕が掴まれる。


 母は聞かせたい様で断固として譲らない。


「くそっ」

「聞きなさいっ!!」


 結局、自分の親の甘々でむせかえりそうになる惚気話を聞かせながら


 数十分経った頃、景色は止まる。


「はい、ついたよ」

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