悪役令嬢は現代世界に転移する?!
ただの枝豆
第1話
ガシャンッ
その花瓶が、鼓膜が破れそうな音と共にバラバラに砕け散ると同時に少女の僅かに残っていた心が粉々に割れていった。
「お前、#$%#にそれ以上手を出したら、公爵家とはいえ殺すぞ」
少女は、ジェイルに花瓶を投げられたのだ。
少女の白く美しい肌に赤い傷が生まれ、花瓶の中の水が少女の頭に降りかかった。
その隣りにいる#$%#が、ひどく心配した顔で少女を見る。
しかし、少女にはそれがひどく憎たらしい。
(なんで私が、床に座り込んでいて#$%#がジェイルと隣にいるのよ)
体がひどく震える。
愛しているものへの恐怖、または婚約者を寝取った少女への嫉妬。
理由は、どっちかはわからない。
もしかしたら、両方かもしれない。
少女は、目頭を熱くした。
(平民の分際でなんで、その人の隣にいるのよぉ)
無念と屈辱、それと共に涙が溢れ出してくる。
「お前は、いつもよくわからない性格をしているのは知っているが、これ以上はこの国の王子のオレが許さないぞ」
(・・・・・・よくわからないか。)
このボロボロの公爵令嬢だとは思えないほどに惨めな少女は、顔を落とす。
この国の王となるはずの王子ジェイルに、政略結婚として婚約をしていたが、ジェイルの地位なんかには全く興味がなかった。
本気で愛していたのだ。
少女は、ジェイルの気を引くため、甘えてみたり、そっけない態度を取ったりした。
しかしそれは鈍感なジェイルには、よくわからない行動だった。
少女は、ジェイルに好かれるために努力した。
しかし、それは逆効果になってしまうことが多かった。
ジェイルの隣にふさわしくなるために、この国で誰よりも美しいと言われるほど美容には気を使った。
しかし、ジェイルには少女が他の男と浮気をするように見えていた。
ジェイルの隣にふさわしくなるために、将来付き添っていられるように、学業では一位常連になるほど勉強にもかなり力を入れた。
しかし、それはジェイルにとっての少女が邪魔だと考える要因になっていた。
少女は、努力した。
欲しいものを手に入れる為の正しい努力を、
ただ、少女は努力のし過ぎであった。
そんなこと、少女は知りようがなかったのだ。
それを知っていたら、今のこの状況に変化があったかもしれない。
・・・・・・もう手遅れだ。
この状況になってしまった。
(私はどこから、間違えたのかな)
少女は、走馬灯のように記憶を巡らせる。
ある日、私たちの通う学園に、少女とジェイルの前に#$%#が現れた。
#$%#は、この国の王子であるジェイルに平民の分際で近寄ってきた。
平民が王子に近づくというのはあってはならないこと。最初は、無礼な子だとしか思っていた
しかし、学園内では身分の差別を推奨はしていなかったため、注意はしなかった
それにジェイルは笑って許していたから、少女は目を瞑っていた。
当時の少女は、そんな器の広いジェイルをアイドルを見る目で見つめていたが、
今の状況を考えると#$%#がジェイルに近づくことを止めるべきだった。
しかし、#$%#はそれに漬け込んでどんどん近づいていった。
流石にボディタッチまでし始めた時は、少女も止めたが、ジェイルは冷めた目つきで「気にするな」と言ってきた。
少女は、それで馬鹿正直にしつこかったか、などと反省して、二人を遠くから眺めていたのだ。
ジェイルもただ#$%#に気まぐれで話してあげているのだろう。
少女は、そう確信していた。
なぜならジェイルの隣に#$%#はふさわしくない
容姿もジェイルへの愛も少女が勝っていると確信していたからだ。
すぐ私のもとへと帰ってきてくれるはず、
少女はそう胸を痛めながら、自分の感情を押し殺していた。
あの時までは・・・・・・。
少女は運が悪かった。
あるイベント・・・・・・バレンタインの日、ジェイルに少女が徹夜で作ったチョコを渡しにいった。
そのとき、#$%#とジェイルがキスをしているところを見てしまった。
そこで、少女が押し殺していたものが爆発した。
(私は醜い。だから、ジェイルにも嫌われた)
そう少女は過去を振り返っていたら、
ジェイルは突然、少女の首を掴んで顔を近づけた。
それにより、不確定だった意識を引っ張り出される。
その時、少女はジェイルに顔を近づけられたためジェイルの唇に意識を向けてしまい、
#$%#とジェイルがキスをしているときのことを思い出してしまう。
少女は、涙が止まらなくなってしまった。
少女は泣き叫ぶ。
「#$%#、私の前から消えてよ。私の大切な人を奪わないでよ!!!」
ジェイルは、再び少女を深く冷たい蒼い目で見つめて口を開く。
「お前が消えろよ」
愛する者のその言葉はひどく重い重さとなり、少女に襲いかかる
少女は、心と共に落ちていき、天空を舞った?!
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