第6話 過去の栄光
「それでは試験…初め!!」
教師の開始の言葉と共に、皆一斉にペンを、紙上へと走らせる。
…それは当然俺「
マイナ…特に
…当たり前か、自分たちの『部活』がこの時間に懸かっているのだから。
〜放課後、帰路にて〜
「いやぁ〜!今回のテスト難しかったなぁー!」
開口1番瞬夜がテストについて喋り始める。
「そうですね、特に古典の最後の問題が難しかったですね。」
「ええ!?マイナちゃん、あれサービス問題だったぞ!?」
「そうですか?昔の人の感情は理解出来ないですね…」
顎に指をつけ、思考を深くさせる『佐藤マイナ』そう…この女は突如俺の前に現れた、容姿はいいがいろいろとぶっ飛んでいるポンコツ自称『アンドロイド』だ。
…もっとも、アンドロイドとは言っても見た目はほぼ人間なのだが。
そう1人で考えていると、瞬夜が自分に声をかけてくる。
「…なあ陽太はどうだった?『アイツ』に教えてもらったから問題ないんじゃねえか?」
そう、『アイツ』とは俺と瞬夜の中学からの知り合いで現生徒会長『
瞬夜がその話を始めようとした途端、マイナは顔をムスッとする。
それを一瞬で察した瞬夜は、いきなり話題を変えようとする。
「そ、そーいえばさ『雨宮天音』って1年生知っているか?」
「誰だそれ?」「どなたですか?」
「…なーんだマイナちゃんはともかく、陽太も知らねえのかよ。
……最近陽太、お前を探しているらしいぞ。」
「俺を?」
「ああ、俺も詳しくは知らないんだが『伊藤陽太はどこ!?』って言いながら毎日お前を探しているらしいぜ。」
…『天音天音』初めて聞いた名前だ、何か俺に用があるのだろうか。
そう思考を巡らせているうちに、いつの間に分かれ道へとたどり着いていた。
「…そしたらじゃあな2人とも!気をつけてな!」
「…ああ、またな」「お疲れ様です、瞬夜さん。」
瞬夜と別れた後、2人の間には静寂が包んでいた。
だがその静寂を壊すように、マイナが口を開ける。
「ヨウタ、どんなに危ないやつでも私が必ず守ります。」
「…助かる、正直お前は人間離れしてるからな」
「ありがとうございます。」
褒めてはないんだけどな。
…そう思考を放棄しようとした途端、目の前に人影が映る。
「あ!!やっと見つけたわ!アナタが伊藤陽太ね!私と決闘しなさい!」
いきなり目の前に現れたのは、中学生くらいだろうか、小柄で黒髪ツインテールの女子が話しかけてきた。
「俺に何の用だ?」
「しらばっくれても無駄よ!あなたには果たし状を送ったでしょ!」
「果たし状…ってa.a…まさかお前、『雨宮天音』か!?」
「なーんだ、もう知ってるのね!なら話が早いじゃない!!なら早速アタシと『1on1』やるのよ!」
「『1on1』…ってバスケか?」
「ええそうよ!アナタにとってそれ以外何があるのよ?」
「ならやらない」
「ええ!?」
雨宮天音は口をポカーンと開けていた、恐らくあまりにも返事が早すぎたのだろう。
…もうバスケはやるつもりはないからな。
「なんでよ!?中学の時はやってたじゃない!
…しかもっ、インターハイまで進出して…
それに憧れてアタシはっ…」
「うるさい!!!!」
バスケの事を思い出しただけで、『あの出来事』を思い出してしまう、それが嫌だった。
…だから大声を上げてしまった。
その時、雨宮天音だけでなくマイナですらも、面食らった顔をしていた。
…この雰囲気は自分には辛かった、だからさっさと足を進めた。
「…マイナ帰るぞ」
「は…はい」
「ちょっ…ちょっとまってよ!!」
自分を止めようとしていた雨宮天音の声は
…もう既に遠くなっていた。
「…ヨウタ、あんなに強く言う必要は無かったんじゃないですか?」
「………」
〜翌日・学校〜
「陽太!テストどうだった!?俺さ!俺さぁ!!」
「目標点いってたんだろ?…良かったな」
「んでんで??陽太の方はどうだったよ?」
「…なんとか、部活は始められそうだな。」
「よっしゃあ!!…そしたらさ!俺奏センセのとこ行ってくる!」
ウキウキで教室を飛び出す瞬夜、よっぽど赤点を取らなかったのが嬉しかったのだろう。
そんな瞬夜を横目にマイナ…ではなく同じクラスメンバーで『生徒会長』戸端海梨が自分に話しかけてくる。
「伊藤くん、テスト良かったみたいだね。」
「ああ…生徒会長か、ありがとな。おかげで助かった。」
「いやいや、キミの『友達』として当然のことだよ。
…あと『生徒会長』って言うのやめてよね!」
何故だろうか、いつもより戸端海梨の顔が赤かった。何を恥ずかしがっているのだろうか
…少しイジってみるか。
「はいはい、分かったよ『海梨』」
「!?!?ちょっ、ちょっとやめてよ急に!!
えっと…えっとぉ!!」
いまさっきより顔を真っ赤にした、海梨。
…正直こういうとこは可愛い。
そして思いの外声が大きかったのだろうか、クラスのヤツらから視線を感じた。
……いやそれだけでは無い、隣の席の『佐藤マイナ』からも真っ黒な視線を感じていた。
〜昼休憩・校舎外〜
「まったく、ヨウタとカイリさんはどういう関係なんですか?」
俺の母親が作った弁当を頬張りながら、ムスッとした顔で俺に尋問するマイナ。
…1から話すとめんどくさいから断片的に話すか。
「あー…ただの昔からの知り合いだよ、色々あってな。」
「…そーですか、そーいうことにしときます。」
納得…はギリギリしてくれたようだ。
そうくだらない話を2人でしていると、体育館の方が騒がしくなる。
「…何かあったのでしょうか?ヨウタ、見てみましょうか。」
俺たちは昼食を食べたあと、体育館へと足を進めた。
…正直嫌な予感しかしないが。
〜体育館〜
「すごいぜ、アイツホントに1年かよ…」
「しかもあの中で1番小さいはずなのに…すげえ突破力だぜ。」
気づけば体育館内には、ザワザワと話す生徒たちが集まっていた。
そこにはコート内で女子達がバスケをしていた。
…恐らく昼休憩の時間すらも『部活』をしているのだろう。
その女子バスケ部員達の中でも、ギャラリーからでも分かる、一際輝いていた存在がいた。彼女に視点を集中させている間、ふと左耳から声が入る。
「おう陽太、お前も来てたのか。」
「瞬夜、なんでお前がここに?」
「あー『雨宮天音』ってやついただろ?そいつの情報を集めててな……
んで、ここにたどり着いたって訳よ。」
「『雨宮天音』って……アイツが!?」
流石に驚いた、観客の視線を一気に浴びるようなプレーをしている小柄な女子が、よく見ると『雨宮天音』だったことが。
面食らった自分を横目に、瞬夜は言葉を紡げる。
「…ああ、『雨宮天音』バスケは高校から始めて、1ヶ月と少しでレギュラー入り。
…噂によれば強豪校からスカウトも受けてるらしいぞ
……まるで中学の時の誰かさんみたいだな。」
「………」
バスケの話を聞いてないフリをしている自分を見透かしていたのだろう、そのまま瞬夜は話し続けた。
「…これは俺の憶測であり勘だけど、それでもこの高校を離れない理由は『お前とバスケがしたい』からじゃないかなって思ってる。」
「…仮にそうだとして、何故俺と?」
「雨宮天音、俺らと同じ中学らしいぜ」
「!!…それホントか!?
でもなぜ俺らは名前知らないんだよ!」
「それは……まあ、お前自身で確かめろ。」
意味深な発言をする瞬夜、気づけば自分はギャラリーから飛び出し、コートに立っていた。
俺の隣の人アンドロイドなんだけど 黒米 @ao1666
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