第2話 アンドロイド!?
「アンドロイドってお前何言ってんだ!?」
「はい。そうですが何が?」
俺の名は「佐藤陽太」高校2年生になったばかりの男だ。新学期始まって早々、俺の前に奇妙なことが起こった。
どうやら今の俺の目の前にいるこの「佐東マイナ」という女は、つまらなく感じていた俺の高校生活の手助けをする為にここへやってきたらしい。で、俺が驚いたのはこの「佐東マイナ」という女は自分のことを「アンドロイド」だと言う。
何を言ってるのかよく分からないと思うが、俺もよく分からん。
「アンドロイドってあ、あの機械の?」
「ええ、そうです。私はナイ……いや、ある博士に限りなく人間に近い形で作られ使命を得てここに参りました。」
【限りなく人間に近い】と言ったか?この女どこからどう見ても人間にしか見えないのだが。……とりあえず関わったらダメなタイプなやつだな、とりあえず適当にあしらって金輪際関わらないようにしよう。そうだ、それがいい!
「そ、そうだ!アンドロイドって言うならよ、停止ボタンとかゼンマイみたいなもの無いのかよ?」
「もちろんありますが、ココに。」
「いやどこだよ!体指さしても分かんねーよ!」
「…仕方ないですね。」
そう言うと彼女はおもむろに制服を脱ぎ始める。途中目を塞いだのでよく見えなかったが上の下着の色は白、だった気がする。
「は!?お前何いきなり制服脱いでるんだよ!?」
「停止ボタンの位置の紹介ですが…なぜあなたが目をつぶっているのか理解できませんが、説明を続けますね。」
「おい!流石にそれ以上脱ぐのは止めろよ!」
「……?よく分かりませんが了解しました。もし私に何が異常があった場合は私の上半身……いえ、分かりやすく言うと私の乳房にある乳頭をつまみ右に回してください。そうすれば私は【一時的に】ですが機能を停止します。」
乳頭をつねって回す?きっとこいつがホントにアンドロイドならば製作者はきっと頭がおかしいのだろう。と脳の回転を遮るように「佐東マイナ」は話を続ける。
「1度試してみますか?停止ボタン。クラスのみんなへの言い訳は私が起きた時考えておくので。」
そう言うと彼女はスっと俺の手を取り、俺は目をつぶっていたので分からなかったが恐らく彼女の胸へと近づけていたのだろう。
女性経験がない俺はどうしていいか分からず彼女の思うがままにされようとしていたその時、
「キャアアアアアアアアア!!!」
俺や佐東マイナのものでも無い甲高い悲鳴が空まで響いた。多分と言うか絶対今の他人に見られただろ。色んなことが起こりまくって今にも気絶しそうな俺をよそに、佐東マイナは俺を急に抱きかかえる。
……最悪だ。まさか今の一連の物事を見られてさらに、女子から抱き抱えられるなんて。
「ちょ、おい何してんだよ!」
「マズイですね、姿は完璧に見られた訳では無いのでひとまずここを去りましょう。」
「【去る】ってどこに!?ここ行き止まりだから多分捕まるぞ!」
「了解しました。では、ひとまず佐藤陽太、あなたの家へ行きます。」
「だからここ行き止まりだっt……うわあああああああああ!!」
佐東マイナがそういった途端に俺の視点が グン と一気に大空へと上がる。一瞬の出来事だったのでよく覚えてないがこの時俺は、地上から一気に学校の屋上へと飛び移ったのだろう。
いや、飛び移ったのは俺ではなくこの自称アンドロイドの女「佐東マイナ」だが。
もうそこからは「あの出来事」までは何も覚えてない。
………………
〜佐藤家・陽太の部屋〜
「っん……なんで俺はここに…?……多分ホントに悪い夢でみたんだろ、夢にしてはリアルな感覚だったが。」
などとどうでもいい独り言を話していると、エプロン姿のどこかで会ったことのある女子が座りながら俺のベッドの近くにいた。俺が目を覚ますやいなや、俺の状態をまるで気にしないように声をかける。
「おはようございます。サトーヨータ、あなた気絶していましたよ。」
「!!?はあああああああああああ!!??」
そう、その女は他でもない「佐東マイナ」だった。
「な、な、な、なんでお前がここに!」
「?先程も言いましたが気絶していたのでこちらへ……」
「そうじゃなくて!なんで俺の部屋に勝手に上がってるんだよ!?」
「ああそれはあなたのお母様から許可を得たので。」
「【許可を得たので。】じゃねーよ!……ったく!とりあえずまた学校行くぞ。」
「もう18時ちょうどです。学校は終わりましたよ。それに……お腹が空いているでしょう、ご飯はこちらに持ってきています。どうぞ、はいお口を開けてください。私が食べさせます。」
「俺は病人じゃねーよ!…自分で食べるから箸、どこにある?」
美味しそうな夕食が並んでいる。
母が作ったのだろうか、えらく今日は奮発したようだ。箸を持とうとしたその時、陽気な声である人物が入ってくる。
「あらー!陽ちゃん!起きてたのね!今日は珍しく彼女なんか連れてきちゃって〜」
「かかか、彼女じゃねーから!」
そう、俺の母親だ。仕事の都合でなかなか帰ってこない父の代わりに、子供の頃手を焼きながら世話したようだ。そんな母に多少なりとも感謝している。
そんなことを考えている矢先に母は思わぬ発言をする。
「陽ちゃーん!今日はマイナちゃんがご飯作ってくれたのよ〜!この子ホントにいい子で〜家に住んで欲しいくらいだわ〜!」
「お母様、私今居住地を探しておりまして…もし良ければここに住まわせて頂いてもよろしいでしょうか?もちろん、下宿代の支払いだけでなく家事は出来るだけ全てこなします。」
「ホントにいいの?マイナちゃん!?そうしたら是非よろしくね〜。あ、あと!下宿代は別に大丈夫よ!」
「本当ですか!?……ではこちらこそよろしくお願い致します。」
「っておいおい!母さん!俺が話に入ってない間に勝手に話進めるなよ!」
と、俺が文句を言っている間に母は俺の部屋から出て行ってしまった。
言葉では表し難い奇妙な空気感の中、佐東マイナは神妙な顔してこちらを凝視している。
「……なんだよ。」
「いえ、少し気になることが。」
「いいよ、言ってみ」
「なぜ、あなたのお母様は【サトーヨータ】つまりあなたの事を【陽ちゃん】と呼ぶのでしょうか?」
「あー…それはな、仲良い人同士で呼ぶあだ名みたいなもんだな」
「……なるほど。では私も【陽ちゃん】と呼んでいいですか?」
「いや何でそうなるんだよ!」
「いえ、あなたの高校生活をサポートする上で簡略化した名前は必要だな、と思って。……では【ヨータ】でよろしいですか?」
「……別にいいよ」
「では、私の事は【マイナ】呼んでください。」
「はぁ!?何でそうなるんだよ!」
「…これは私の勝手な要望ですが、私はヨータといわゆる【ナカヨシ】というものになりたいと思ったので。」
「……ったくしゃーないな、…………」
「?どうしました?具合でも悪いのですか?」
きっとこいつを開発したやつはかなり意地が悪いのだろう。
それに俺の脳内を盗聴しているのだろうか?人生において女性経験が無い俺にとってすごく恥ずかしいものだ。
いつかこいつを作ったやつを〆る。少しだけ俺はそう心に誓った。
だが今だけは……
「ちげーよ!……ま、ま、ま、マイナっ!これからもよろしくな…っ!」
「はい。よろしくお願い致します。」
そう返事すると一瞬、彼女の無機質な顔が笑顔になったように見えた。
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