恋の始まる工程

俺氏の友氏は蘇我氏のたかしのお菓子好き

恋の始まる行程

涙が出た


雫がこぼれていく


声は出ずに、ただ泣いていた。


いつもの教室。皆んなと笑い合う楽しい場所。

そこで夕日に射され、一人で泣いている。


ふられた。


高校に入ってからずっと恋していた男の子にふられた。

二年生も終わるから勇気を出して告白したのに、ふられた。


恋なんてそんな重く捉えてなかったはずなのに、いざ断られたら悲しくて仕方なかった。


「いやぁ、忘れ物しちゃったっ………」


あぁ、最悪だ。


誰にも見られたくないのに、よりにもよって幼なじみのあいつに見られるんて。

絶対からかわれて、理由を話せばバカにされる。


私は泣き顔を隠すように、彼から顔を背けた。


あいつは何も言わずに近づいてくる。


やめて…………嘲笑わないで……


「お前どうしたんだ!?」


え?


嘲笑われる覚悟をしたのに、聞こえてきたのはそんな優しい言葉。


「……なんでも……ない……」


私は訳がわからず、そんな言い訳を振り出した。


「なんでもなくないだろ!!?誰にやられたんだ!?」


彼は私の肩を掴んでさけぶ。

その声は明らかに怒っていた。


「……大丈夫だから…………」


私は彼がそんなふうに心配して、怒ってくれるのが嬉しくて、さらに涙の勢いが増した。


「本当か?」


彼はまだ納得できないようで、そう怪しむ視線を向けてくる。


「本当に……ねぇ一緒に帰らない?」


私はひどいと分かっていても、ふられた穴を彼で埋めようと、そんな提案をした。


「え!?あ、あぁ良いぜ!!」


彼は満面の笑みで、そう言ってくれた。


その瞬間。私はまた、恋をした。

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