第49話町の本性

「別に君たちに危害を加えるつもりはない。だから、拳を下ろして話し合いをしないか?」




ボロボロの布を羽織った人たちの中から一人の老人が出てきた。


布を羽織った人たちは一斉にその場に座り込んだ。




「ハーゲンティ、ここは一旦話を聞こう。」




アランはハーゲンティを止めた。




「承知いたしました。」




ハーゲンティはアランの言うことを聞いて後ろの腰元に手を回して佇んだ。


アランは座り込んだ老人にゆっくりと近づいた。




「外の人よ、私の言うことを信じてくれてありがとう。」




「こちらも、いきなり悪いことをした。それにしても、ここで一体何があったんですか?あなたたちのその服装から見るとかなり長いことここにいたように見えるけど。」




アランは老人にこの町で何が起きたのかの説明を求めると老人は頭を上げ辺りを一旦見渡した。




「外の人よ、場所を移して話しませんか。近くに私たちの隠れ家がありますから。」




アランは老人の誘いを受けて隠れ家に向かった。




「それでは、私についてきてください。」




アランは老人に案内されるがままついていくと次第に人影が見える場所まで来ていた。


見えた人たちの服装もただボロボロの布をかぶっている人、薄汚れた服をそのまま来ている人などがいた。


そのすぐ近くには、人の列が見えた。


並んでいる人たちの手には皆小さなお椀を両手に持って並んでいた。


列の先には炊き出しが行われていた。


ご飯を貰った人たちのお椀の中には豆と葉物のスープがとても少ない量しか入っていなかった。




「着きました、ここが隠れ家です。」




老人が刺したとこには倒壊した家の瓦礫だった。


老人は近くに座っている男二人にに話しかけると、男たちは立ち上がり、地面から生える取っ手に手を伸ばした。


取っ手を上に持ち上げると地面の中に続く階段が姿を現した。




「外の人よできれば中に入るのは一人だけにしてはくれないか。中は、とても狭くて3人が入るのとてもではないが窮屈になってしまうんじゃ。」




老人は一言そう言うと階段を下って行った。




「それでは、アランさんが行ってきてください。私は、外で待っていますから。」




「分かった、何かあったら無理はしないように頼むよ。」




そう言ってアランは階段を下って行った。


アランが階段を下っていくと男たちは階段が外から見えないように蓋をした。


アランは暗い階段を下っていくと階段の先に机と椅子が二つある小さな部屋にたどり着いた。




「どうぞ、ここにお座りください。」




アランは言われるがまま椅子に座った。




「ではまず先ほど聞かれた、質問にお答えします。」




老人は何故町がこのような状況になっているのか話し始めた。


アランは老人に出された飲み物を飲みながら話を聞いた。




「あれは、突然の出来事でした。私たちはいつも通りに生活をしていると空から突然クロセルと名乗るものが現れたのです。それに続いて、人ではない姿をした何かが4人、空から降りてきました。


クロセルたちは何かを話し合った後、城を残して町を一瞬で火の海に変えていったのです。


その光景はまさに地獄と呼ぶにふさわしい光景でした。


生き残った私たちに対して、クロセルは前国王の首を掲げながらこの国の新しい王と宣言しました。


一緒に町を壊滅に追いやったクロセルの仲間の4人はクロセルが王と宣言した後、どこかへと飛んでいきました。


そこからはクロセルの独裁が始まりでした。


クロセルが言ったことは絶対で彼に逆らうものは有無を言わずに殺されていったのです。


彼はしばらくすると町に降りてきて女を2人さらって、月に一度町の若い女を俺の元へと連れて来いと一言残して飛び去って行きました。


私たちはその言葉に従い、女を連れていきましたが、連れて行けども誰一人として帰ってくることはありませんでした。


女を連れていくのも長くは続かず、町から若い女は少なくなったことをクロセルに言いに行くと、


城から門に続く一本の街道を作れ。それで、外から入ってくる人間の中に若い女が居たらそれを連れて来いと言ったのです。


若い女以外は皆殺しにしろと。


旅人を連れてきたら、今までの女は返してやるとも言ってきたのです。


私たちは町の女を連れ戻すためにクロセルの命令に従いました。


私たちは旅人を町に招き入れては、女がいれば捕まえ、クロセルに捧げてきました。


そしてとうとう、あと一人で町の女が全員解放されるときにあなたたちが来たのです。」




アランはレイミヤが心配になりすぐさまレイミヤのところに駆けつけようとすると、体がしびれてうまく動かすことができず、地面に倒れた。


喋ろうとするも、全身がしびれているためしゃべるれずただうなり声をあげていた。




「あなたが飲んだ飲み物の中に痺れ薬を入れたのです。あなたたちには、感謝しているのです。だから、あなたをすぐには殺しません。ただ、この地面の中で一生の最後を迎えてください。それに、今頃彼女もクロセルのとこに連れていかれている頃でしょう。これでようやく皆帰ってくる。それでは外の人よ、安らかにここで死んでくだされ。」




老人はそう言うと、一人階段を上り外へと出ていった。


アランは必死に体を動かそうとしてもそれは叶わなかった。


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