第48話霧の中から
「もうすぐ、もうすぐで完成する。そうすればこの国は俺の物。」
パリアッチョは暗い廊下を一人歩きながら笑っていた。
アラン達は消えたドゥルーを探して宿を出ようとしていた。
「フラウロス、なんで魔力痕のことをもっと早く教えてくれなかったんだよ。他にも何かあるなら教えろよな。」
「教えるのは良いが、小僧はまず魔法についてどれくらい知っているんだ?魔法の世界はとにかく広いのは知っているよな?その中のことを一つ一つ教えていたらきりがない。だから、俺はお断りだね。知りたきゃほかのやつに聞くんだな。」
そういうとフラウロスは炎になり宝玉へと戻って行った。
「なんだよ、あいつ。」
「アランさん、わたしでよければ教えましょうか?」
フラウロスに断られたアランの元に荷物をまとめ終わったレイミヤがやってきた。
「もう荷物は、まとまったの?」
「ええ、先ほど終わりました。私も教会にいたときに魔法のことについての勉強をしてきました。それでも、私が学んだのは治癒の魔法が主でしたので教えられるのは基礎だけになりますが。」
「それでも助かるよ。俺は基礎が全くできていないから。基礎を知るだけでも十分に変わると思うんだ。」
アランも荷物をまとめ終わるとその場から立ち上がった。
アランに続いてレイミヤも立ち上がると、アランは先に部屋を出た。
2人が1階に降りるとそこには誰もいなかった。
明かりも消えていてアラン達は
お世話になりました。
そう一言を書いた置手紙を残してその場を後にした。
2人が宿を出ると外はうっすらと明るくなり始めていた。
そして町には霧がかかっており2~3メートル先まで見えないほどだった。
アランは目に魔力を集中させると普通の時よりも視界よくなったが、遠くになればなるほど霧が光って見えないままだった。
それでも10メートル程度までは見えるようになった。
レイミヤも同様に目に魔力を集めアランが見ている景色と同じ景色を見ている。
2人は町を見渡してみるが見える限りのところでは明かりは一切なく、人影すらなかった。
宿から出て右に歩き出すと建物の影から男女の老人が手を後ろに回した状態で出てきた。
2人は老人に軽く頭を下げ通り過ぎようとすると、2人の前に老人が立ちふさがった。
アランとレイミヤは老人に道を譲るために右側に避けた。
横を通り過ぎようとすると男の老人が後ろに回していた手を前に出した。
その手には草刈りに使うような鎌が握られていた。
横を通りすぎたアランに老人は鎌を振った。
アランはすれすれのところで鎌を躱した。
アランとレイミヤはすぐに老人から距離を取った。
「いったい何をするんです!!」
アランはレイミヤを背中に回し老人に叫んだ。
「あんたらに恨みはないんだけどね、ここで殺されておくれ。」
そう男の老人が言うと女の老人が手に包丁を構えていた。
老人はゆっくりと二人の元に歩き始めた。
アランが逃げ道を探していると日が昇り町を照らし始めた。
するとどんどん霧が晴れ始めると、家の中からと建物と建物の間から人が出てきた。
その人たちはアランが町にやってきたときに出迎えてくれていた人たちだった。
町の人たちは手に包丁や鎌、鍬などの殺傷能力のあるものを持ちアラン達の元にどんどんと近づいていた。
アラン達も後ろに下がっていると、2人は家の壁に追い詰められた。
逃げ場を無くした二人を見て町の人たちからは笑顔が現れた。
アランはすかさずバッグの中からハーゲンティが宿る本を取り出した。
「ソロモン72柱の悪魔のうちの一人、総裁ハーゲンティよ、我が名の元に汝に命じる我が召喚に応じ、今ここに顕現せよ。」
アランと町の人たちの間の足元に魔法陣が現れた。
「な、なんだこれは?」
町の人は魔法陣を見て足をその場で止めた。
魔法陣の中からハーゲンティが頭から姿を現した。
「これはこれは我が主よおはようございます。それでは、少々荒っぽいですがご了承ください。」
そう言うと、ハーゲンティは背中から翼をはやしアランとレイミヤの後ろから腹に手を回して持った。
「逃がすものか!」
町の何人かは、次の行動を予測して襲い掛かった。
刃が当たる瞬間ハーゲンティはその場から飛び上がった。
アラン達は危機一髪のところで逃げ延びた。
アランは下を見下ろすと信じられない光景を目にした。
この国は城を中心に円を描くようにできている国だったが国に入るための門から城に続く一本道それに連なる家、城は町の外から見た光景と一緒だったが、それ以外は焼け崩れた家や倒壊した建物、地面にはクレーターが開いておりとても人が容易に住めそうな状況ではない光景を目にした。
国の外から見た町の様子とは全く違う姿だった。
「ハーゲンティ、あそこに降りてくれ。」
アランは門から反対側のところを指さした。
ハーゲンティはアランの刺したところに向かって飛んだ。
門の反対側の上空に付くとハーゲンティはゆっくり降下した。
上空から人影がないことを確認して地面に着地すると改めて町の崩壊さに驚いた。
辺りには上半分が崩れた家、へこんだ地面、何か大きなものを引きずった跡、まるで切断されたかのような跡など様々だが人が住めそうには見えない光景だった。
ハーゲンティを後ろに連れアラン達が歩いていると
「主よ、お待ちください。」
歩く二人をハーゲンティは止めた。
2人は足を止め、辺りを見渡したが何も異常は見えなかった。
「何かあったのか?」
と、アランが言うと崩れた瓦礫から、地面に空いた穴から、ボロボロの布を頭から羽織った人が現れた。
「全く、いったいどうなっているんだ。」
町よりは人数は少なかったがそれでも数十人はいた。
「主よ、これなら私でも対処できますが、いかがしますか?ちょうど新しい力を得たので試したいのですが。」
ハーゲンティはそう言うとアランの前に立った。
「まて、まだ敵かどうかわからない。それまでは手を出すなよ。仮に敵でもできるだけ殺さないようにな。」
「承知いたしました。」
ハーゲンティが構えると、
「ちょ、ちょっと待ってくれ。」
どこからか突然声が聞こえた。
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