第47話消えたドゥルー
治療したドゥルーを二人はベッドに運び寝かしていた。
治療してから5時間を過ぎようとしたが未だに目は覚まさなかった。
ドゥルーが目覚めるのを待つ間にアランはフラウロスにドゥルーに何をしたのか問い詰めた。
「お前があの人に傷を負わせたのか?」
アランはいきなり大声で問い詰めるのではなく平常心を保ち落ち着いた声でという詰めた。
「ああ、そうだ確かに俺がやった。だがしかし、お前は言ったよな殺さずに捕まえろと。だから殺さずに捕まえて持ってきたんだ。感謝してくれてもいいんじゃないのか?」
フラウロスはふんぞり返ってアランに言った。
アランはフラウロスがドゥルーに瀕死の傷を負わせたことを知りフラウロスに対してそして自分に対しても怒っていた。
「お前なら、無傷で連れてくることもできたはずだろ。それなのになぜ、あそこまでの傷を負わせた!もしかしたら死んでいたのかもしれないんだぞ!」
「うるせえな、助かったんだからいいだろ。いちいち細かいこと気にするんじゃねえよ。」
大声で怒っているアランとは反対にフラウロスはアランの話を聞く気はなかった。
アランとフラウロスはそのあとも話し続けたがその姿をレイミヤは部屋の隅から見ていた。
レイミヤはドゥルーの様子を確認するために一度その場を離れドゥルーが眠る部屋へと向かった。
レイミヤが部屋に付くと部屋の様子を見て目を疑った。
部屋に入るはずのドゥルーの姿が無くなっていた。
レイミヤは急いでアランの元に駆けつけた。
アランとフラウロスの元にレイミヤが到着しても二人は未だに言い争いが続いていた。
「アランさん大変です。いったん私の話を聞いてください。」
レイミヤはアランに声が聞こえるように大きな声でアランに呼びかけるも
「レイミヤ、後にしてくれ。今はこいつに言って聞かせないといけないんだ。」
アランはレイミヤの呼びかけを後回しにして目の前のフラウロスに集中していた。
それでもレイミヤはアランにドゥルーのことを知らせるためにレイミヤはアランに手が届く距離まで近づいた。
それに気が付いたアランもいったんフラウロスを後に回し、後ろにいるレイミヤの方を向いた。
アランが後ろを向くと パーン と高い音が響いた後に首が少し右に向き、左頬に痛みを感じた。
アランは首を元に戻し何が起きたのか確認するとレイミヤが右手を左手で抑えていた。
レイミヤがアランに向かってビンタをしたのだ。
「話を聞く気になりました?一大事が起きているんです。」
レイミヤは少し息が荒くなっており、目が潤んでいた。
アランは未だに何が起きたのか理解できていなかったが、落ち着きを取り戻していた。
しばらくアランは、その場に立ち尽くしていた。
「アランさん、あの人がいなくなっているんです。急いできてください。」
レイミヤはアランの手を取りドゥルーがいた部屋へと向かった。
アランはレイミヤに引っ張られるがまま足を動かし部屋へと向かった。
部屋に付くとアランもドゥルーがいないことを確認した。
「あの人はいったいどこへ?」
アランはレイミヤに尋ねた。
「分かりません、私が部屋に戻ってきたときにはすでにいなかったのです。」
レイミヤの話を聞きアランは部屋を見て回った。
部屋には窓があるが鍵がかかっており外に逃げた後は無く、床や壁、天井に至るまで穴は開いておらず逃げ出すすべもなかった。
ただ、ドゥルーにかかっていた毛布がめくれているだけで他には部屋に何の変化はなかった。
「いったいどこへ行ったんだ?」
アランはドゥルーがどうやって姿を消したかを考えているとそこへフラウロスがやってきた。
「よく見てみろ、小僧。魔力痕が見えるだろ。」
部屋を見るとフラウロスはアランに言ったがアランはフラウロスが何を言っているのかわからなかった。
「なんだよ、魔力痕って。そんなのどこにもないだろ。」
アランはあたりを見渡しながらフラウロスには部屋に何もないこと言った。
「いいか、原理はアンドロマリウスと一緒だ、目に魔力を集めろ、そうすれば魔力痕が見えるはずだ。」
フラウロスはアランに魔力痕の見方をめんどくさそうに教えた。
フラウロスに言われた通りアランは目に魔力を集め始めた。
すると今まで見ていた世界が一変した。
辺りが虹色に光り輝いて見えるようになった。。
窓の外はまだ暗く窓の外からは先が全く見えていなかったのに今では外に何があるのかがはっきり見えるようになっていた。
外にある木がすべて光っていて、木の幹から枝分かれしている一本一本の枝、地面に埋まって見えないはずの根まで見え、さらには木の中まで見えていた。
地面に生えている植物も同じように見えていた。
特に物の外側がより一層光って見えていた。
アランは初めて見る外の光景に目を奪われていた。
「外なんか見てないで、今は部屋を見ろ小僧。」
そんなアランを見てフラウロスはアランを呼び止めた。
アランはいったん外を見るのをやめ部屋の中を見た。
部屋の中にある家具からも輪郭に沿って光って見えていた。
「フラウロス、これはいったいんなんなんだ?」
アランはフラウロスに今何が見えているのかを聞いた。
「今光っているものそれが魔力だ。魔力は形あるものの輪郭に沿って強く見える。一番強く見えるのが重要機関だ。小娘を見てみろ。」
フラウロスに言われるがままアランはレイミヤを見てみると、レイミヤの体からまるで炎が燃え盛る様に光があふれていた。
そして心臓、脳の部分が他の場所と違く強く輝いていた。
「アランさん、わたしはどう見えているんですか?」
レイミヤはアランに凝視されると少し恥ずかしそうにアランに聞いた。
「レイミヤからは魔力が空に向かって伸びてるよ。」
アランは驚きながらレイミヤに言った。
「小娘から魔力が上に向かって伸びてるのが見えたならそれが小娘の魔力量だ。それが見えなくなると魔力切れの証拠だ。そして、ベッドを見てみな。」
アランは次にベッドに目を向けるとそこには煙のようなものがベッドの上に漂っていた。
「煙みたいなのが見えたろ?」
アランはフラウロスに背を向けたまま首を縦に振った。
「それが魔力痕だ。魔力痕は魔力を使った後にみられるもんだ。恐らく、あいつはどこかに連れていかれたか、逃げたかだな。」
「王よ、お手を煩わせてしまい申し訳ございません。」
片膝を地面に付きパリアッチョがクロセルに頭を下げていた。
「全く、しっかりしてくれよ。君がこんなへまをするなんて、いったいどうしたんだい?」
退屈そうなクロセルは玉座に足を組み両脇に女を二人侍らせて座っていた。
「いえ、こちらの不手際が招いたことです。次こそは成功させます。なのでもう一度だけチャンスをください。」
パリアッチョはさらに頭を深く下げ懇願した。
「もちろんさ。君は今まで頑張ってくれたからね。でも次失敗したら君もこうだからね。」
そういうと、クロセルは右手の人差し指をパリアッチョに向けた。
するとパリアッチョの前に暗い紫の渦が現れた。
その中から何かが落ちてきた。
落ちてくると渦はすぐに消えた。
落ちてきた物はまるで熟れた果物がつぶれたような音を立て落ちてきた。
パリアッチョはその正体を確かめるため頭を上げた。
その正体は頭だけのドゥルーだった。
「分かったならもう行っていいよ。」
パリアッチョはクロセルに言われるとその場を離れた。
パリアッチョの目には光が消えていた。
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