第43話こちらを覗く者

アランはベッドにレイミヤを座らせた。


アランはレイミヤをベッドに座らせてその場を離られようとするとレイミヤがアランを呼び止めた。


「アランさん。今日は迷惑かけてしまってすいませんでした。」


今まで震えていたレイミヤからは震えが収まっていた。


「いえ、全然大丈夫です。それにしてもどうしたんですか?あんなに震えていたのは始めてたけど。」


アランは何故レイミヤが身を震わせ怯えていたのか聞いた。


「はい、実は私がサンから降りたのは家の影からこちらを見る子供の姿が見えたんです。子供の服は町の人とは比べ物にならないほどひどく汚れていてボロボロでした。子供と目が合うとその子供はどこかに行ってしまいました。それを追いかけようとしたのですが一人の女性に止められました。女性は頑なに私を通しようともしませんでした。何かわけがあるのかとその時までは思っていたのですが。女性が戻る様にサンを指さしたんです。私が振り返ると今まで優しく笑っていたはずの町の人たちが全員私を見ていたのです。瞬きもしないで、表情一つ変えないで。それを見た私はただならぬ恐怖を覚えました。人よりも悪魔が恐ろしいと思っていましたがその時は人が悪魔を超えて恐ろしく思えました。それで私は身を小さくして震わせながらアランさんおところに戻りました。」


レイミヤは身を震わせていた理由をアランに話した。


「そうだったんだ、俺からは町の人の顔が見えなかったからわからなかったけど、ただこちらを見て逃げた子供を追おうとしただけなのにそんなに急に表情を変えるなんて、何かあったのかもね。でも大丈夫、ここには二人だけしかいないから。安心して、今は休んで。心配なら、俺がレイミヤが寝ている間起きてて何か起きないように見張っているよ。」


アランはそう言ってレイミヤから離れ一人部屋に置かれていた椅子に座った。


「いえ、さすがにそこまでは迷惑かけられません。この部屋も私のわがままで本来一人のところを二人でいるわけですし。アランさんもしっかり休んでください。」


そう言ってレイミヤは一人用のベッドの右半分により左半分をアランが眠れるようにスペースを開けた。


「さすがに一人用のベッドに二人は狭いんじゃないかな?」


「いえ!アランさんもしっかりベッドで休んでください。狭いようなら今日は私が椅子に座って寝ます。むしろ今日は私が椅子で寝ます!」


レイミヤはベッドから立ち上がりアランを椅子から立たせベッドまで背中を押した。


アランはレイミヤにされるがままベッドまで行き座らされた。


「じゃあ、お言葉に甘えて今日はベッドで休ませてもらうよ。」


そして二人は就寝の準備を始めた。


アランはもしもの時のためにフラウロスを召喚して寝ている間の見張りを頼んだ。


「フラウロス、俺たちが寝ている間の見張りをしてくれ。俺たちに何かしてくる奴がいたら殺さずに捕まえろ。」


フラウロスは嫌な顔をしないでアランからの指示を受けた。


「殺さないで捕まえればいいんだな。抵抗してきたらそれ相応のことはするけどな。」


フラウロスはそう言って部屋の天井や壁を見渡した。


見張りをフラウロスに頼んで二人は部屋の明かりを消して眠りについた。


2人がほんとに寝たことを確認するとフラウロスは暗闇に姿を消した。


2人が眠ってからしばらくすると椅子で眠っていたレイミヤが目を覚ました。


ふらふらしながらも向かった先はトイレだった。


トイレから出てきたレイミヤはまだ眠たそうな顔しながら歩いていた。


そしてレイミヤはアランが寝ているベッドに寝転がった。


アランにかかっていた毛布を自分にもかけ寝てしまった。


アランは隣にレイミヤがいることも知らずに眠り続けていた。


「はあぁ、全く二人で仲良くやってくれちゃって。こっちは一人こんな汚いところにいるなんて。」


そういうのは二人の部屋の中央の天井に寝転がって二人を観察している背丈が小さいドゥルーだった。


「でもまさかあの女がいきなり起きるとは思わなかったな、危うく見つかるところだった。」


「確かに、あと少し遅ければ見つかるところだったな。」


「全くだ。」


ドゥルーの横からドゥルー以外の声が聞こえたがドゥルーは最初は気が付かなかった。


そして、本来なら一人で行動しているはずのドゥルーが誰かと会話していることに違和感を覚え横を振り返るとそこにはフラウロスがいた。


どぅわぁーーー!!!


大きな悲鳴と同時にドゥルーは跳ね上がった。


狭い天井で跳ね上がったため天井に穴が開いてしまった。


天井の破片は床に落ち、その音を聞いてアランとレイミヤは目を覚ました。


「フラウロス、何かあったのか!」


「なんですか今の音は!?」


アランはすぐさま立ち上がり見張りのフラウロスに確認した。


レイミヤは音の原因を探しているときに本来自分が寝ていたはずの椅子が目先にあり自分が今いる場所を確認した。


え?え!?な、なんで私がここにいるんですか!?


確かに私は椅子で寝ていたはず。


それなのになぜアランさんと同じベッドで起きたの?


「アランさん、わたし。」


「レイミヤ、大丈夫か!?」


「えっ!?あ、はい、だいじょうぶです。」


アランはレイミヤの安否を確認すると穴の開いた天井の真下まで来た。


「フラウロス!何かあったのか!?」


アランは部屋にフラウロスがいないことを確認した後に穴に向かって声をだした。


天井裏では、フラウロスがドゥルーの口を抑えていた。


「しー、静かにしてろよ?」


口元に人差し指を持ってきてドゥルーに言った。


ドゥルーはものすごい勢いで首を縦に振った。


フラウロスは天井裏から穴に顔を出した。


「いやー、わりぃわりぃ。天井裏を見張っていたらうっかり壊しちまった。」


「お前がやったのか。」


アランは穴の犯人がフラウロスだと信じ安堵した。


「壊れた部分はお前が治しておけよな!」


「分かった分かった。」


フラウロスにそういうとアランはまたベッドに戻っていった。


アランがベッドに戻るとレイミヤがベッドに座っていることにようやく気が付いた。


「あれ?そういえばどうしてベッドにいるの?」


「お前表に出ろ。」


フラウロスはアランが離れたのを見るとドゥルーに小さな声で言った。

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