第44話遊び

レイミヤは確か別のところで寝てたんだよね?それなのになんでここにいるの?」


アランはベッドに座るレイミヤに問い詰めた。


「えーっと、確かに私は椅子で寝たはずなんですけど。何で私ここにいるんでしょう?」


レイミヤは自分が何故ベッドにいたのかわからなかった。


「まあ、そんなことはいいや。レイミヤはこのままベッドで寝てくれる?俺はこのまま起きて見張りを続けるから。」


アランはレイミヤにそう言ってベッドから離れていった。


「ちょ、ちょっと待ってください。」


アランを追いかけてレイミヤが小走りで向かってきた。


「見張りくらいなら私にだってできます。それにフラウロスさんもいるわけですし、わたしにもブエルがいます。だからアランさんが寝ていてください。」


「大丈夫、俺ならもう十分休めたから。それに・・・」


「ふぁ~。」


アランが話しているときにレイミヤは一つあくびをした。


「す、すいません。」


レイミヤは少し頬を赤らめた。


「それに、レイミヤは椅子で寝ていた分あまり疲れが取れてないみたいだから気にしないで休んで。」


アランはレイミヤを180度回転させて背中を軽く押した。


アランは部屋を一通り確認するためにその場を離れていった。


レイミヤはアランに押されると離れていくアランを少し見てベッドに向かった。


ベッドにレイミヤは横になると顔まで毛布をかぶり眠りについた。




月明かりが照らす林の中でフラウロスとドゥルーが向き合って立っていた。


「な、なんでおいらを助けてくれたんだ?」


ドゥルーがフラウロスに質問するとフラウロスはドゥルーの周りを歩き始めた。


「お前には俺が助けたように見えたわけか。」


「だってそうだろ。落ちていたらおいらはあの男に捕まっていた。それなのにお前がおいらをつかんで落ちないようにしてくれたし、それにこうして外にまで出してくれた。どう見たって助けてくれたんだろ。」


周るフラウロスを追いかけながらドゥルーは話した。


「そうかそうか、確かにそう見えるのもわからなくはないな。だとしたらお前は俺に恩があるよな?」


フラウロスはドゥルーに人差し指を向けながら言った。


「ま、まあ確かにお前には恩がある。これについてはおいらができる限りなら何でもする。」


その言葉を聞くとフラウロスの口角が上がった。


「今、なんでもすると言ったな?」


そんなフラウロスの顔を見てドゥルーは生唾を飲んだ。


「あ、ああ、確かに言った。」


「なら、俺様と戦え。」


フラウロスか発せられた言葉を聞いてドゥルーはもう一度聞き返した。


「今なんて言った?」


「おいおい、同じことを何度も言わせるなよ。俺様と戦えと言ったんだ。難しい話ではないだろ?」


聞き直したドゥルーは後退りをした。


ドゥルーは頭をフル回転してフラウロスの意図を考えようとしていた。


こ、こいついったい何が目的なんだ?


おいらと戦えだと?


てっきり何か物を要求してくるのかと思ったが、戦いを要求してくるとは、こいつ、狂っているのか?


おいらと戦ってなんになる?


おいらだって腕はそこそこ立つ方だから最悪の場合でもお互い無傷では済まないはず。


いや、まだお互いの実力を知らないから、もしかしたら俺が一方的に勝てるかもしれない。


いやいや、それは慢心だ。相手の実力が不明な状態での油断は命取りになりかねない。


その中での戦いともなるとどうなるかおいらにはわからない。


もし、本当に戦いになれば相手の実力を見て決めればいい。


おいらより強いなら逃げればいい。


地の利ならこちらにある。


逃げることなど容易い。


おいらより弱ければおいらを知るものがいなくなりこちらにメリットしか残らない。


それでも戦いはできるだけ避けたいところだ。


あまり騒ぎを起こせいろいろと面倒だしな。


「・・い・・・・おい・・・・おい!!」


考えていたドゥルーの目の前にフラウロスの顔があった。


それに気が付いたドゥルーは体をびくつかせた。


「な、なんだよ。」


「さっきから呼んでるのに何してるんだよ。とっとと始めるぞ。」


フラウロスは拳を握り構えた。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。いくら何でも急に戦うなんておかしいだろ。それにおいらを助けてくれたじゃないか。それなのに戦うのはおかしいだろ?」


構えているフラウロスをドゥルーはあわただしく止めた。


「なんだよ、なんでもするって言ったじゃねえか。俺様に嘘をついたのか?」


止められたフラウロスは不満そうな顔をした。


「違う違う、嘘を言ったわけじゃない。確かに可能な限りは何でもする。だがしかしだな、せっかく助けてもらったのに対しての願いが戦いとはいかがなものかとおいらは思っているんだ。」


「あのなぁ、さっきから助けた助けたって俺はお前を助けた覚えは一つとしてない。」


その言葉を聞いてドゥルーは訳が分からなくなった。


「じゃあ、いったい何だってんだ?」


「決まっているだろ。遊ぶためさ。」


フラウロスは目の前で手と手を合わせた。


こいつ、やっぱり狂ってやがった。


こんなやつとは今すぐ離れたほうがいい。


それにこいつの口角が上がった時からおいらの中の何かが今すぐ逃げろと言っている。


急いでこいつから離れたほうがいい。


「分かった、それじゃあ始めよう。ただし、この距離は近すぎるから少し離れよう。おいらが離れるからお互いに準備ができたらスタートだ。それでいいか?」


ドゥルーはフラウロスに確認した?


「分かった分かった。俺は戦えればそれでいい。早く始めよう。」


フラウロスは首を回した。


首を回すとコキコキと音を立てた。


「それじゃあ俺はいつでも戦えるからおいらが離れて止まったら始めよう。」


そう言ってドゥルーはフラウロスに背を向けて歩き出した。


5歩くらい歩いたところでドゥルーは一瞬止まると高く飛びあがり木の枝から木の枝へと飛び移りながらフラウロスからどんどん離れていった。


「おいおい、まさか逃げるつもりかよ。」


フラウロスは離れていくドゥルーを見て口がふさがらなかった。


「ま、いっか。」


そういうとドゥルーが飛んでいった方向に向かって右手を突き出した。


「さてと、久しぶりにやって当たるかな~。」

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