第38話レイミヤの危機

レイミヤは伸びてくる手を見て顔を逸らして目をつぶった。


「ッ・・・」


レイミヤは身を構えていたが体に何も起こらないので目を開けてみるとアランが目の前に立ちオルソの手を剣で食い止めていた。


「大丈夫なんですか、アランさん!?」


「問題ない。何とかオロバスの力を使えたからね。」


アランの両目はオレンジ色に光っていた。


アランはオルソの攻撃を喰らう直前にオロバスの未来視を使い、最低限の傷ですませていた。


オルソの手を止めているアランの頭からは血が流れていた。


しかし、オレンジ色に光っていたアランの目からは光が突然消えた。


光が消えるとアランはオルソに押され始めた。


アランは一度オルソの手を弾きオルソから距離を取った。


「どうした、オロバス!?何が起きているんだ!?」


アランからオロバスの未来視が消えていた。


オルソはまた口の中からアランいめがけて石を飛ばした。


アランは容易く飛んできた石を弾くと飛んできた石と同じ軌道でもう一つの石が飛んできていた。


オルソは連続して二つの石をアランい飛ばしていた。


アランは石を弾いたときに剣を振っていたためもう一つの石を弾くことはできなかった。


石はアランの腹に当たりアランは洞窟の端まで飛ばされると気絶してしまった。


「アランさん!!」


レイミヤは駆け付け傷を癒そうとするがオルソはすかさずレイミヤに手を伸ばしてきた。


レイミヤはナイフを持ち抵抗した。


ナイフは伸びてきたオルソの手に刺さった。


オルソは叫びながら洞窟をいったん出た。


オルソは手を振り、ナイフを抜いた。


ナイフは地面に刺さり、再び洞窟の中に体を突っ込みレイミヤを捕まえようとした。


ナイフを刺したレイミヤにオルソは怒っていた。


護身用の武器が無くなったレイミヤはなすすべなくオルソに捕まった。


「やめて、離してください!!」


レイミヤはつかんでいるオルソの手に拳を丸め叩くもオルソの手は緩めることは無かった。


オルソはレイミヤをつかんだまま洞窟の外に出た。


暴れるレイミヤの顔からは涙がこぼれていた。


オルソの口からは涎が垂れレイミヤを見て舌なめずりをした。


レイミヤの目から涙は止まり、ただただオルソを震えながら見ていた。


「いや、いやよ、食べないで。」


オルソはレイミヤに口を開け頭から食べよう顔を近づけた。


「イヤ――――!!!!」


オルソの牙がレイミヤに刺さる直前オルソの頭に石が一つ飛んできた。


オルソはレイミヤを食べるのをやめ石を飛ばしてきたものを探した。


辺りを見渡すと一頭の馬がいた。


それは、サンだった。


「サン!!」


レイミヤが名前を呼ぶと、サンは後ろを向き後ろ足で石をオルソに向かって蹴り飛ばした。


オルソは石を手で弾くとサンに向かって叫んだ。


サンは怯むことはなかった。


サンもまたオルソに向かって鳴いた。


オルソはレイミヤを放り投げサンに向かって走り出した。


放り投げられたレイミヤの目の前にはオルソの手を刺したナイフが地面に刺さっていた。


サンは向かってくるオルソから全速力で逃げた。


そのままレイミヤからオルソを離すように走っていった。


レイミヤはナイフをを地面から抜き取り、アランが気絶している洞窟に走った。


「かの者の傷を癒したまへ、クルーラ。」


レイミヤはすかさずアランの傷を癒したがアランは目を覚まさなかった。


「アランさん!!起きてください、アランさん!!」


レイミヤはアランの体を揺すり起こそうとしたがアランは目覚めることはなかった。


レイミヤはアランを洞窟に残し洞窟の外に出て、サンを探した。


サンはオルソから逃げながらレイミヤがいる方へと戻っていった。


オルソはじわじわとサンに近づいていた。


レイミヤはこちらに向かって走ってくるサンを見つけて、ナイフを持ち走り出した。


オルソはサンに十分近づくと爪でサンの後ろ足を引っ搔いた。


爪はサンの脚を引き裂き血が流れていたが、サンはそれでも走った。


しかし、それも長くは続かずサンはとうとう倒れてしまった。


オルソはゆっくりサンに近づき爪を立て殺そうとした。


オルソの爪がサンめがけて振りかざされると、レイミヤがオルソの首に後ろからナイフを突き刺した。


レイミヤは今度はナイフから手を離すことはなかった。


ナイフをどんどん奥に突き刺そうとするも、オルソがレイミヤを突き飛ばした。


レイミヤは地面に倒れるもすぐさま起き上がった。


「お困りのようだね。」


レイイヤを見ていたブエルが話しかけてきた。


「ブエル、今あなたと話している暇はありません。」


「そうかい、それならいいけど言いたいのは二つ、一つはそんな小さいナイフじゃああいつは殺せない。


もう一つはあいつを殺す方法を知っている。」


「それは、本当?」


「なんだい、話す暇はないんだろ。だったら好きにすればいいさ。」


「いいから早く教えなさい。」


レイミヤはブエルに向かって怒鳴った。


「あー怖い怖い、あいつを殺す方法は今から私が教える魔法を使うことだよ。」


「そんなことできるの?私は攻撃用の魔法は使ったことがないのよ。」


「問題ない、ただし魔法の構築に時間が必要なの。あれが待ってくれればいいけどもうそんなことはないだろうし。」


オルソは二度も食事の邪魔をされて怒りは爆発していた。


鼻息は荒くなっており、今にも突進してきそうな勢いだった。


「とりあえず、今から言う魔法を使いな。これならすぐ使えるから。」


ブエルはレイミヤに魔法を教えた。


「分かりました。何とかやってみます。」


レイミヤがナイフを構えるとオルソはレイミヤに向かって一直線に突進してきた。


「我に害為す敵に光を、ランペジャーレ」


レイミヤは突進してくるオルソに向かって右手を向け魔法を唱えた。


レイミヤの手に白い光の玉が現れ弾は激しく光りだし昼間でも目が眩むほどの光を放った。


オルソは光を直視して目をつぶった。


目をつぶりながらも突進は止まらずレイミヤに向かってきていた。


レイミヤは横に転がり突進を躱した。


オルソは訳も分からず走り続けた。


レイミヤがよけたことも知らずに走るにオルソは岩に直撃した。


岩は粉々に砕け砂煙を上げた。


砂煙の中からオルソが顔を横に振りながら姿を現した。


オルソはまだ目をつぶっていて前が見えていないようだった。


オルソは鼻を引くつかせにおいを嗅いでいた。


オルソはレイミヤの臭いを見つけ再び匂いのする方へと突進をしてきた。


すかさずレイミヤは次の魔法を唱えた。


「我に害為す敵に異常をきたせ、パラリ・ザーレ」


レイミヤの手から一つの電撃が放たれた。


電撃は一直線に飛んだ。


電撃がオルソに当たるとオルソの体の周りの電撃が走りオルソを痺れさせた。


オルソは突進の途中で体がしびれ止まった。


「よくやった、レイミヤ。それじゃあ、さっき言った魔法を教えよう。」


レイミヤはナイフをしまい、両手を前で組み、顔を下に下げ、両目を閉じた。


「我、魔を従えし者なり。」


レイミヤが詠唱を始めると足元に黄色い魔法陣が浮かび上がった。


「天よ我の声を聞き我の望みを叶えたまへ。」


魔法陣が完成するにつれ、空が曇りだし光始めた。


「我に天の力の一端を使わせ、かの敵に降り注げ。トオーノ・ディ・ピオヴェレ」


レイミヤの詠唱が終わるとオルソの周りに無数の雷が降り注いだ。


雷はオルソに当たらないものもあったがほとんどがオルソに直撃していた。


オルソは口を開け鳴いている様子だったが、雷の音が声をかき消していた。


オルソは立つことができず地面にうつぶせになるも雷は降り続けた。


雷が収まるとオルソの体からは黒い煙が昇った。

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