第39話力の代償

オルソを倒したレイミヤは自分が出した魔法の威力に驚いていた。


「ふーん、初めてにしては上出来よ。」


「助かりましたけど、これはやりすぎなのではないのですか?」


「何言ってるんだか、やらなければあんたが死んでたんだよ。もっと悲惨な姿になってね。」


オルソの遺体は煙が収まると肉だったものはすべて炭になっていた。


風が吹くと一部が風に乗りどこかへと飛んでいった。


レイミヤの後ろから足を引きずりながらサンが向かってきていた。


レイミヤはサンに気づきレイミヤの方からも駆け寄った。


「ありがとう、サン。私のために怪我まで追って。すぐに怪我を治しますからね。


 かの者傷を癒したまへ、クルーラ」


レイミヤはサンの傷口に手を当て傷を治した。


傷が治ると引きずっていた脚は地面に付きサンは普通に走れるようになっていた。


サンは身を低くしてレイミヤに背に乗れと言うような仕草をした。


レイミヤはサンにまたがるとサンはアランが気絶している洞窟に走った。


洞窟に付くとレイミヤはすぐさまサンから降りアランの元へと向かった。


アランの傷は完治していたのだが目は覚ましていなかった。


「アランさん!アランさん!起きて、起きてよアラン。」


レイミヤはアランの体をゆするも何の反応もなかった。


レイミヤの目から涙がこぼれた。


アランがこのまま死んでしまうのではないのか、このまま目を覚まさないのではないのかレイミヤは最悪の結末が頭をよぎった。


レイミヤはアランの体に顔を当て鳴いていると。


「何をそんなに鳴いているのやら。」


ブエルが泣いているレイミヤに言った。


「だってアランさんがオルソに襲われて起きないんですよ!」


レイミヤはブレスレットから話すブエルに言った。


「ただの魔力切れだよ。」


「魔力切れ?」


レイミヤは鼻をすすりながらブエルが言ったことを復唱した。


「前にも同じことが合っただろ、その時はあんたの魔力をそいつに分けたじゃないか。」


「じゃあ、また同じようにすれば、アランさんは起きるのですか?」


ブエルは少し間をおいて話した。


「うーん、今回は回復を待つしかないね。」


「なぜですか?」


「今回は前と違ってあんたも多くの魔力を使った。その上で魔力を分け与えたらあんたが今度は魔力切れで眠ることになるよ。だから、今回は起きるまで待つしかないね。」


「そんな・・・」


レイミヤはアランに布をかぶせ体が少しでも冷えないようにした。


アランが目を覚ますまで同じ洞窟で寝泊まりをすることにしたレイミヤは火をおこし、サンと一緒にアランが起きるのを待った。




アランは薄暗い空間の中目を覚ました。


「ここはどこだ?」


空には赤い月、周りには一面の平原が広がっていた。


辺りを一回見渡すけれど誰の姿も無くもう一度周りを見るとオロバスがアランの目の前に現れた。


「オロバス!」


「貴様はほかの悪魔がいるのにもかかわらず力の使い方が全くなっていない。理解も足りていないようだし、知ろうともしない。前にも何回か魔力切れを起こした覚えがあるのではないか?」


アランに質問すると同時にオロバスが指を一回鳴らすと地面から大きな椅子が現れた。


オロバスは出てきた椅子にふんぞり返るように座った。


最初は人馬の姿だったオロバスは椅子に座ると徐々に人の姿へと姿が変わった。


「なぜ、途中で力を使えなくした!」


「つくづく愚かだな貴様は。確かに力は貸していた。使えなくなったのはお前に問題があるからだ。」


「俺に問題があるだと?」


「そうだ、貴様はただ簡単に未来や過去を見れると思っているのか?」


オロバスは不敵な笑みをしながらアランを見下していた。


「それがお前の力じゃないのか。」


「確かに俺の力は未来や過去を見ることができる能力だ。だがしかし、それには代償が必要なんだよ。」


「代償だと?」


「記憶だ。」


「記憶だと。」


オロバスの口角が一気に上がった。


「そう記憶、記憶を消すことで俺の力は使うことができる。お前も知っているんじゃないのか?アトの記憶が無くなっていたことについて。あいつは前日の記憶を消すことで俺の力を使用していた。アトの記憶がなかったのはそのせいだ。」


アランはオロバスの顔を見て恐怖していた。


「じゃあ、俺の記憶も。」


「心配するな、今回は特別貴様の魔力で補った。だがしかし、魔力での使用は今後お勧めできないな。なぜなら、ほんの一瞬でも力を使うことで貴様は魔力切れを起こす。次からは、お前の記憶の古い順にもらっていく。残したい記憶があるのなら言ってくれよな、そこだけは残しておいてやるからな。」


「そんなこと、お前は言っていなかったじゃないか!」


アランはオロバスに怒鳴ったが間髪入れずに返した。


「甘ったれたことぬかすな!!」


アランはオロバスの声を聴いて黙った。


「確かに俺は言わなかった。が、お前も聞かなかっただろ。知ろうともしなかっただろ。どうせ、他の奴と同様に魔力さえあれば使えると解釈したんだろうがそれが間違えだ。確かに大半のやつは魔力で力を使用できるが、例外もいる。俺みたいにな。今後ほかの悪魔とも契約するならそういうことも注意するんだな。そろそろ時間か。俺の力を使うときにはよく考えて使えよな。」


オロバスは椅子から立ち上がるとアランに向かって指先で円を描いた。


次の瞬間アランの下に深い深い穴が開いた。


アランは穴の中へと真っ逆さまに落ちていった。


「ウワアアア!!!」


アランは悲鳴を上げながら落ちていった。


目の前が真っ暗になるとアランは目を覚まし勢いよく体を起こした。


息は荒く、体からは大量の汗が流れていた。


起きたアランは周りを見渡すとオロバスと話していたのは現実ではないのだと知った。


洞窟の入り口の方ではレイミヤとサンが身を寄せながら眠っていた。

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