第35話四人目の契約

オンバスを離れて数時間したところで馬車を止めアランはレイミヤと一緒にオロバスの契約に移った。


アランはアトさんからもらった指輪を出し指輪に話しかけた。


「オロバス、聞こえるか?」


そういうとアランの目の前が一面の平原に変わった。


そらは暗く赤い月が地面を照らしていた。


「貴様か、よくもアトとの契約を解除してくれたな。だがなぜ殺さなかった。殺そうと思えば俺など簡単に殺せただろうに。」


いつの間にかオロバスがアランの後ろに立っていた。


「そうすると俺の目的が達成できないからだ。」


「貴様の目的だと?」


「ああ、お前ら悪魔を集めて封印することだ。」


「ハッハッハッハ!!何をいうかと思えば笑わせてくれる。かつてのソロモンの真似事かいやそれは少し違うか。だが貴様一人にできると思っているのか?」


オロバスは笑った後、顎に手を置いて昔のことを思い出した。


「思っているんじゃない、すでに決めているんだ。お前らを封印するとな。」


「まあ、せいぜい頑張るんだな。それで、俺を呼んだのはなんでだ?」


「お前の力を手に入れるためだ。」


アランはとうとう話の本題に入った。


「契約か。どうせ否が応でも結ばれるんだ好きにするがいい。」


「なら、お前からは俺に力を貸せ。俺からは俺の言うことを聞かせてやる。」


「ふ、ずいぶんと理不尽な奴だ。いいだろう、契約成立だ。」


アランは四人目の悪魔オロバスとの契約を結んだ。


アランは現実に戻ってきた。


「アランさん、どうでした?」


レイミヤが心配そうに聞いてきた。


その手にはナイフが握られていたが。


「ええ、問題ありません。そのナイフは?」


レイミヤは咄嗟にナイフを後ろに隠した。


「いやこれは。アランさんに何かあったときに私が戦おうとして。」


どうやらレイミヤは無防備になるアランを守っていたようだ。


アランの体に突然の痛みが走った。


アランはあまりの痛さに息をのみその場で四つん這いになった。


「アランさん!?いったいどうしたんですか!?」


突然倒れたアランにレイミヤが駆け寄った。背中に手を当て体を起こした。


「突然体に痛みが。」


アランは、足を抑えていた。


それを見たレイミヤは足に治癒の魔法をかけた。


「かの者の傷を癒したまへ、クルーラ。」


痛みに上がっていた息が落ち着きを取り戻した。


「立てますか?」


アランはレイミヤの肩を借りて立ち上がったが、再び膝から崩れてしまった。


アランにつかまれていたレイミヤも一緒に倒れた。


レイミヤはアランの腕を肩に回し、背負ってアランを馬車の荷台に載せた。


治癒魔法をかけたのにまだ怪我が治らなかったのは初めてだった。


アランが動けそうになかったのでレイミヤは馬の手綱を歩きながら引っ張り日陰へと連れて行った。


アランは起きることなく夜を迎えた。


レイミヤは火をおこし焚火を炊いた。


馬は地面に生えている草を食べていた。


レイミヤはアランの分の夕飯も用意した。


夕飯が完成してもアランが目覚めなかったので一人夕飯を食べた。


夕飯が食べ終わるとアランが目を覚ました。


「レイミヤさん、いったいどれくらい寝ていましたか?」


アランが起きると夜中になっていたのでレイミヤに聞いた。


「大体半日くらい眠っていましたよ。」


レイミヤは作った料理をアランの元へと運んだ。


アランは手に受け取り料理を食べた。


「私は先にいただいちゃいました。」


「そう、ごめんね。一人で怖かったでしょう。何が出るかわからないのに。」


アランは料理を食べながらレイミヤと話していた。


「確かに少しは、怖かったですけど、お馬さんがいたので全然大丈夫でしたよ。」


「俺が後見ておくから、もう寝てもいいからね。」


アランは料理を食べ終わると荷台から下りレイミヤを寝かせた。


レイミヤは荷台で横になるとすぐに眠ってしまった。


どうやらアランを守るために緊張していて疲れていたがアランが起きたことで安心して緊張が解け眠ったようだ。」


アランはレイミヤに平気そうにふるまったが、実はまだ足に違和感があった。


自分の脚を触り自分の身に何が起きているのか考えた。


すると森の中の草が揺れた。


アランは土佐に武器を構え立ち上がると足に痛みが走った。


姿勢を崩し剣を地面に刺し杖にすることで倒れないで済んだ。


草の中からは一匹のコニッリアが現れた。


コニッリアはウサギのような生き物で人畜無害の生き物だった。


コニッリアはアランを見ると驚いて森の中に帰っていった。


アランは安心して腰を下ろした。


火が消えないために薪を入れていたが、薪が切れてしまった。


アランは薪を取りに行くため森の中に入っていった。


アランはふらふらになりながらも落ちている枯れ枝を拾い集めた。


片手いっぱいに薪を集めるとアランは馬車のところに戻った。


途中アランは転び、薪をまき散らした。


その都度もう一度薪を拾い戻った。


戻るといつの間にか馬車を引っ張る馬も眠っていた。


アランは眠ることなく灯を絶やすことなく薪を燃やしていた。


朝になり馬もレイミヤも目を覚ました。


「おはようございますアランさん。お馬さんも。」


「おはようレイミヤさん。」


馬もレイミヤに向かって鳴いた。


「レイミヤさん、朝食をお願いするよ。俺は次の悪魔を探してみる。」


アランはそう言うとアンドロマリウスの千里眼を使い目を蛇の目に変えた。


アランの目に映ったのは一人の美男子だった。


男の姿は白い翼をはやしまるで天使のようだった。


だがアランは千里眼で悪魔を探していた。


それなのに千里眼で映ったのは天使のような姿をした美男子だった。


アランは次の目的地をその美男子のいる町に決めた。


レイミヤの元に戻るとまだ朝食は完成していなかった。


「アランさん、次の目的地はもう決めたんですか?」


「ああ、朝食を食べたらさっそく出発しよう。」


「分かりました。・・・あのアランさん。」


レイミヤが気恥ずかしそうにアランを呼んだ。


「なんですかレイミヤさん?」


「その、名前なんですけど。」


なまえ?ああ、馬の名前か、と思ったアラン。


今日からさん付けをやめてもらおう、と考えているレイミヤ。


「名前がどうしました?」


「さん、さんをですね。そのなんというか。」


「分かりました、確かにそうでね。女の子だしレイミヤさんに従いますよ。」


レイミヤは全てを言わなくても通じたと思いうれしさ半分恥ずかしさ半分だった。


「それじゃあ、呼んでもらってもいいですか?」


レイミヤはアランに顔を向けず後ろからアランに名前を呼んでもらう形になった。


「分かりました。よし、」


きた、これからはさん付けなしで呼んでもらえる。さん付けってなんか他人みたいに扱われているっていうかなんていうか、私あんまり好きじゃなかったんだよね。


「サン!お前は今日からサンだ!」


うん?あれ可笑しいな名前じゃなくてそっちだけで呼ぶの?


「アランさん?」


レイミヤは振り返るとアランは馬を撫でていた。


「なんだ、名前が気に入ったのか?名付け親はあそこのレイミヤさんだからな。感謝なら向こうにするんだぞ。」


レイミヤはアランの勘違いに気づき肩が斜めに垂れていた。


「どうしたんですレイミヤさん?」


アランはレイミヤの気持ちの準備を知る由もなかった。


「レイミヤさん!それそれ!」


レイミヤは料理のことをすっかり忘れていて朝食は焦げてしまった。


「すいません。」


レイミヤは落ち込んでいた。


朝食を焦がしてしまったこと、アランに勘違いされたことに。


「まあまあ、失敗は誰にでもありますから。」


アランとレイミヤは焦げた料理を食べた。


―苦い


レイミヤは朝食を食べ終わるともう一度決心してアランい話しかけた。


「アランさん!」


馬車に乗ろうとしていたアランは乗るのをやめてレイミヤの前に立った。


「なんですか?」


「あ、あの、さん付けを。」


レイミヤはいざ言おうとすると心では言う決心をしていたのに緊張していた。


「さん付けをやめませんか?」


レイミヤは両手を後ろで動かしながら赤くなった顔を下げながら言った。


「それは、どいうことですか?あと、顔が赤いようですけど大丈夫ですか、レイミヤさん?」


「それです!そのれいみやさんのさんをやめようってことです。」


レイミヤの顔はさらに赤くなった。


「あー、それじゃあ俺のこともさん呼びしなくてもいいですよ。」


「分かりました。それじゃあ、お願いします。」


「分かりました、今後はさんをつけないようにしますね。それじゃあ、さっそく出発しましょう。」


レイミヤはアランの顔が見れないまま馬車の荷台に乗った。


アランはレイミヤが乗ったことを確認すると馬の手綱を持ち馬を走らせた。


「ちょっと飛ばしますから捕まっててよ、レイミヤ!」


レイミヤは名前を呼ばれると頭がトマトみたいに真っ赤になり目を回して荷台の上で倒れた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る