第29話装備の調達

「そろそろカールさんが迎えに来る頃だな、準備して待ってましょう。」


「そうですね。」


二人はカールが来るのを宿の前で待っていた。


「カールさん遅いですね。」


「確かに、もう来ててもいいころなんですけどね。」


アラン達は指定されていた時間になってもやってこないカールを辺りを見渡しながら待っていた。


「あっ、あれじゃないですかアランさん?」


レイミヤが指をさして教えた。


「どれですか?」


「ほらあれですよ!あの荷台絶対そうですよ。」


奥から一台の馬車が向かってきていた。


「あー、あれか確かにそうだね。でもなんか速くない?」


アランの言う通りその馬車は大急ぎでこちらに向かってきていた。


宿の目の前に来ると急停車して止まった。


その馬車の運転手はカールだった。


「ごめんごめん、ちょっと用事が長引いちゃって。待たせて悪かったね。」


「いえ、それは良いんですけど大丈夫ですか?やけに疲れているみたいですけど。」


カールは馬車に乗ってきたのにもかかわらず息を切らしていた。


「大丈夫大丈夫、さあ乗って行こう。」


アランとレイミヤはカールが言われるがまま馬車の荷台に乗った。


前日同様にアラン達はオンバスの国を回って異常がないか見ていた。


「あのカールさん」


「ん?なんだいアラン君。」


「昨日連れてってもらったドーボの店に俺たち以外誰か連れて行きましたか?」


「ど、どうしてそんなこと聞くんだい?」


カールは質問を聞くと動揺していた。


「いや、ちょっと気になっただけです。それで、誰か連れて行きましたか?」


「いいや、君たちが初めてだよ。」


アランとレイミヤは顔を合わせ静かに頷いた。


「カールさんは、あのお店に行ったことあるんですか?」


次にレイミヤがカールに質問した。


「それもないな、あそこは素材しか扱ってないからね。」


「でも、ドーボさんはあなたの事知ってましたよね?」


「それは、・・・きゅ急にいったいどうしたんだい?それよりお腹すかないかい?」


カールは質問には答えず話を逸らそうとした。


「別に大した理由はありませんよ。ただ気になっただけです。教えてください。」


「えー、あ!あの人には店の外でたまに会うんだよ。それで知っていたんじゃないかな。ちょっと馬の操作に専念したいから話しかけないでもらってもいいかな。」


カールは額に汗を流して馬車を操作していた。


「レイミヤさんもうやめましょう。」


「分かりました」


アランとレイミヤはカールに質問するのをやめ町の様子を見ていた。


「カールさん、今日は武器屋と薬屋に向かってもらってもいいですか?」


「ああ、分かったよ。でも、そんなのどうするんだい?いや、もうそろそろでこの町を離れようと思いまして。」


「そっか。わかった、ちょっと待っててね。」


カールはオンバスの武器屋を目指して馬車を走らせた。


武器屋まではそう時間はかからなかった。


「ほら着いたよ、ここで待っているからいってらっしゃい。」


「ありがとうございます。」


「ありがとうございます。」


二人はカールにお礼を言って武器屋に入った。


「いらっしゃい、なんだ坊主えらく別嬪な彼女じゃねえかデートなら他をお勧めするぜ。」


葉巻を加えた筋肉の塊といっていいほどのガタイがいい親父が茶化した。


「か、彼女。」


レイミヤの顔は赤くなり両手で顔を隠した。


「親父、彼女じゃないよ武器と防具を見させてもらうよ。」


レイミヤは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしながらゆっくりアランの方を向いた。


その様子を見た親父は笑った。


「ガッハッハ!!そりゃあ悪かったな。この国の王のせいで客足がかなり減ったからな、それでもうちの商品は一級品よ。」


アランは片手用の剣を見ていた。


「親父、これ手に持ってみてもいい?」


「ああ構わないぞ。」


アランは気になる片手剣を片っ端から手に持ち、構えたりした。


レイミヤは防具を見ていた。


「ここにはアクセサリーも置いてあるんですね。飛距離増、魔耐増、店主さんこれはいったい?」


「ああ、それかそれは身に着けてそのアクセサリーに魔力を注入している間横に書いてある効果が得られるらしいぞ。」


「らしいとは?」


「いやな、この国にいる魔術師がそれを売りに来たんだよ。でも俺には魔力が扱えないから実際本当に使えるんかすらわからん。」


「なるほど。」


レイミヤは様々な種類があるアクセサリーを見ていた。


アランは気に入った片手剣がなかなか見つからないでいた。


そんなアランを見かねた親父が


「坊主、その上の剣なんかどうだい?そいつは特殊な鉱石で作られていてな特に炎に対してめっぽう強いんだ。作るのにも苦労した一本だ。」


それは片手剣の刀身としてはあまりにも長かった。


長くそしてほかの剣よりも幅は細かった。


アランは言われた剣を手に持ち、構えた。


「決めた。これにするよ親父。」


アランは剣を決めたがレイミヤはまだアクセサリーを見ていた。


「決めました、ネックレスにします。」


レイミヤはピンクの石が目立つネックレスを一つ選んだ。


「レイミヤさん、アクセサリーもいいですけど武器を忘れないでくださいね。」


「そういったって私武器とか使ったことないですよ。」


「もしもの時のために小さいナイフくらい持っていた方がいいですよ。ほらこれなんか軽くてちょうどいいですよ。」


アランは柄の部分が黄色く刀身が黒いナイフをレイミヤに渡した。


「確かにこのくらいなら私でも持てますけど。」


「じゃあそれにしましょう!握り心地は良いですか?」


「ええまぁ。」


アランは武器屋で片手剣一本アクセサリーを一つナイフを一つ親父に渡した。


「嬢ちゃん一応しっかり機能するかこれに魔力を入れてもらってもいいかい?」


親父はレイミヤが選んだネックレスをレイミヤに渡した。


「分かりました。」


レイミヤは首にネックレスをしてネックレスに魔力を注ぎ始めた。


ピンクの石が光り始めた。


が、何も起こらなかった。


「何か、変ったことはないかい?」


レイミヤは体を見渡してみたり動いたりしてみるも特に目立った変化は無かった。


「いえ、なにもありません。」


「そうか、ならその料金はいらないよ。持っていきな。」


「いいんですか!?」


「ああ、使えないもの売ってお金をもらうなんて俺が俺を許さないからな。」


「ありがとうございます!!」


レイミヤはネックレスを見ながら笑顔で喜んだ。


「親父あとはいくらになるんだ?」


「そうだな久しぶりの客だからサービスして15万スイだな。」


「15万スイ!?」


それはアランの持つお金のほとんどだった。


「なんだ、まさか持ってないとか言わないよな。」


親父は片手にハンマーを持ち肩に乗せた。


「そんなわけないだろ、ほら15万スイだよ。」


アランは親父に15万スイを渡し武器をもらった。


「これはおまけの鞘だ。」


そう言って親父は片手剣のとナイフ用の二つの鞘を渡した。


「大切に扱ってくれよな。」


親父は短くなった葉巻の火を消して二人を見送った。


「じゃあな、親父。」


「ありがとうございました。」


レイミヤは宝石を見ながら店を出た。


「さあさあ、次は薬屋に向かうぞ。」


馬車は武器屋を後にして薬屋を目指した。


「この国薬屋が結構あるんだけどおすすめのところでいいかな?」


「じゃあ、それでお願いします。」


カールは自分のおすすめの薬屋に馬車を走らせた。


「到着、ここがおすすめの薬屋だよ。一つ言っておくけどアラン君、君は気を付けてね。」


「?わかりました?」


アランは不思議に思いながら店の扉を開けた。


「あら、こんな時間に人なんて珍しいわね。」


そこにいたのは露出度が多い服を着ていた妖麗の女がいた。


アランはその女を見て顔を赤くして顔を赤くしていた。


レイミヤはアランの目を両手で隠した。


「アランさん、見ちゃダメです。」


「ちょっとちょっといきなり人を危険人物みたいに扱わないでよ。」


妖麗の女は体を軽く揺らしながら近づいてきた。


「君かわいいね。」


女がレイミヤの手をどけてアランの頬に手を当てた。


レイミヤはその行動を見て拗ねていた。


アランは突然のことで口をパクパクさせていた。


「ちょっとやめてください。」


レイミヤが二人の間に割り込み二人の距離を引き離した。


「ふふ、冗談だよ。本気にしないのお嬢ちゃん。お嬢ちゃんもかわいいわね。お嬢ちゃんを食べちゃおうかしら。」


女はレイミヤの耳に息を吹きかけた。


「ひゃあん。」


レイミヤは今までに出したことがない声を出した。


「かわいい声。」


レイミヤは顔を真っ赤にして怒った。


「いい加減にして下さーーーい!!」




「それで、何が欲しいんだい?」


女はおふざけをやめ接客をした。


「とりあえず、回復薬を3つほど頼むよ。」


「あいよ。他には?」


「それだけで頼むよ。」


「なんだいたったのそれだけかい。合計で9000スイだよ。」


アランは女にお金を渡して回復薬をもらった。


「二人とも、またおいでね。いつでも遊んであげるからね。」


アランとレイミヤは店を出て馬車に乗り込んだ。


「カールさん今日はもう宿までお願いします。」


レイミヤは荷台に乗るなりカールに宿に戻るように頼んだ。


「まだ、案内する時間も場所もあるけどいいのかい?」


「ええ、お願いします。」


馬車はその日は早くに宿に帰路を向けた。


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