第28話奇妙な一言

「やっと出てきた。」


馬車でくつろいでいたカールが起き上がりアラン達を出迎えた。


「どうだった?いい具合に売れたかい?」


「相場はわかりませんが、しばらくは何とかなりそうです。」


「そっか、それはよかったよ。今日はもう宿に戻ろう。さあ、乗って。」


アランとレイミヤは荷台に乗り暁の宿に戻った。


「ほら、到着したよ、また明日案内するからね。」


アランとレイミヤが荷台から下りて馬車の前方に回った。


「本当ですか!ありがとうございます。」


「ありがたいんですけど、怖いお店はよしてくださいね。」


レイミヤの頬は少し膨らんでいた。


「はっはっは、よほど怖かったんだね。」


「もう、ほんとによしてくださいよ。」


「わかったわかった。そうそう、ところでドーボからお店で何をもらった?」


アランとレイミヤはその言葉を聞いて背筋に悪寒が走った。


カールはにこやかな表情でまるで店の中を見ていたかのように当たり前に聞いてきた。


トーボからもらったものは本来ならカールは見ているはずもなく知っているはずもなかった。


店を出る前にアランはもらったものはポッケにしまい、カールには見えるはずもなかった。


ドーボの店から暁の宿に戻る道でも会話はしていたがドーボから何かもらったということも話していない。


カールがドーボから何かもらったと聞くこと自体おかしかった。


「どうし・・・」


「いえ、何ももらってないですよ。」


レイミヤがなぜ知っているのかを聞こうとしたが、アランはレイミヤの声をかき消すように被せて言った。


「・・・そうかい。じゃあ、また明日昼近くに迎えに来るから入り口で待っていてね。」


カールはそう言うと馬車を走らせ消えていった。


アランはカールが見えなくなった後もカールが行った後を見ていた。


「アランさん、部屋に戻りましょう。」


レイミヤが立ち尽くすアランを部屋へと連れて行った。


「アランさん、カールさんのあの言葉どう思いますか?」


二人は部屋に入ると椅子に座りカールのことについて話し合っていた。


「確かにちょっとおかしいよね。」


「ちょっとおかしい?そんなものじゃありません。不気味ですよ。私たちはドーボさんにあれをもらってすぐにお店を出たんですよ。その時、カールさんは馬車に戻るどころかくつろいでいたんですよ。絶対にカールさんが物をもらたことを知るはずもないんです。」


レイミヤは怯えながら話した。


「一回落ち着いてレイミヤさん。カールさんは俺たち以外にもあのドーボの店に連れていきその時連れてった人がカールさんにドーボさんから物をもらったことを話して、それで今回俺たちも物をもらったんじゃないのかと思って聞いたとも考えられるんだよ。もしそうだとしたら、明日確認してみればいいじゃないか。ドーボさんに驚かされてカールさんの話を聞いて怖がるのはわかるが、あの人は優しい人だよ。大丈夫だから。」


アランは怯えるレイミヤの背中をさすりながら話した。


「もう、アランさんあの人のことを信じすぎですよ。皆を皆信じていたらいつか痛い目を見ますよ。」


レイミヤは立ち上がり、寝室のドアを強く締め出てくることは無かった。


アランは初めて見るレイミヤを見て一つため息ついた。


「なあ、誰でもいいから、カールさんの事どう見えた?悪魔が関係していると思うか?」


アランは三人の悪魔にカールが悪魔と関係していないか確認した。


「確かに微弱ではあるが魔力を感じたがあいつは悪魔とは関係ないと思うぞ。」


「ええ、フラウロス様の言う通り私もカールという男には悪魔は関係していないと思います。」


フラウロスハーゲンティの答えは一緒だった。


「確かに悪魔は関係ないのかもしれないが、私は何か彼に感じるものがある。」


「どうせ、あの人付き合いの良さにお前は反応しているだけだよ。あんなに群れて何が楽しいのやら。」


アンドロマリウス一人カールのことを怪しんでいた。


アランは二人の悪魔が何もないということでカールのことを疑うのをやめた。


すると、ドアが誰かにノックされた。


アランは驚きドアの方を見た。


「誰だ?」


アランが座っているところから誰なのかを確認するも反応がなかった。


すると再びドアがノックされた。


アランはドアの前に行き恐る恐るドアノブに手を伸ばし音もたてずに回した。


ゆっくりドアを開け始めた。


すると部屋の外からもドアが開けられた。


アランは開くドアに引っ張られ体制を崩したが、横に飛びドアに目をやった。


するとそこにいたのは驚いた顔をした宿の従業員だった。


「お客様大丈夫ですか?夕食をお持ちしたのですけど。」


従業員はアランの様子を見て心配していた。


「ああ、何ともない。そこに置いといてくれ。」


「かしこまりました。何かあったら申し付けてください。」


従業員は夕飯を置き業務に戻った。


アランは緊張が解けどっと疲れが押し寄せた。


四つん這いになり息を切らしていた。


呼吸を落ち着かせると、料理を少し持ち寝室の方へと向かった。


「レイミヤさん、ごはんが届いたよ。ドアのところに置いておくから食べられそうなら食べてください。」


アランはドアの近くに椅子を持ってきて椅子の上に夕食を置いた。


「俺は、お風呂に入ってきますね。」


アランは浴室に入りお風呂に入った。


アランが浴室から出ると椅子の上にあった夕飯が消え紙が置いてあった。


紙には「ありがとうございます。」そう一言書かれていた。


紙の端は乾いていたが濡れた跡があった。


アランは一人夕飯を食べその日は寝た。




早朝まだ部屋ではアランが寝ていた。


寝室のドアが開き中からはレイミヤが出てきた。


レイミヤの片手には昨日の夕食の食器があった。


食器をアランの目の前の机に置くとアランにかかっていたであろう毛布が床に落ちていた。


レイミヤは毛布を拾いアランに毛布を掛けなおした。


そのあとレイミヤはタオルを持ち浴室へと向かった。


服を脱ぎ、レイミヤはシャワーをから出るお湯を浴びた。


レイミヤのシャワー音が朝の静まり返った部屋に静かに響いた。


世k室のドアが開きレイミヤが出てきた。


アランはまだソファーで寝ていた。


「アランさん、起きてください。朝ですよ。」


「あと少しだけ。」


そう言ってアランは毛布を顔まで被った。


「もう、起きてください!」


レイミヤはアランが被っていた毛布を引っぺがした。


アランは毛布を探して手を動かしているとソファーから転げ落ちた。


レイミヤは手にした毛布で目を隠した。


「いってぇ~」


「大丈夫ですか?」


アランは両手で頭を押さえて転がった。


「あぁ、大丈夫大丈夫。」


アランはソファーに手を付き立ち上がった。


「おはようレイミヤさん。」


「アランさん昨日はごめんなさい!」


レイミヤはアランに頭を下げた。


アランは突然の出来事に目が覚めた。


「いったいどうしたの!?」


「昨日の私はどうかしてました。他のことも考えずアランさんと意見が合わないというだけであんな事言ってしまい、本当にごめんなさい。」


レイミヤは頭を下げ目をつぶりながらアランに誤った。


レイミヤの姿を見てアランはしゃがんだ。


「顔を上げてください、私は気にしてませんから。大丈夫です。」


レイミヤの目は涙で濡れていた。


「だから元気出してください。泣いてちゃあなたの顔がもったいないですよ。ほら笑って笑って。」


レイミヤが首を少し傾け笑った。


「はい!」


窓から差し込む明かりがレイミヤの顔を照らした。


笑うときにレイミヤは目をつぶった。


目をつぶると涙があふれ飛んだ。




「うーん、そろそろ気づいてもおかしくはないかな。時間になる前に急いでかたずけないと。」


何者かがドーボの店の中に入っていった。


「誰だいあんたわ、表の字が読めないのかい?まだ店は開いて・・・」


ドーボが誰かと話していると短剣が腹に刺さった。


ドーボのは刺された場所を見て口から血が流れた。


「いったいあんたの狙いは?」


「何を渡した?」


「何のことか知らないね。」


「そっか。」


何者かは腹に刺さっていた短剣を抜いて別の場所を刺した。


グアッ!!


「今ならまだ助かる。何を渡した?」


「・・・回復薬だよ。」


「嘘をつくな。」


指したナイフを90度回転させた。


あ゛あ゛あ゛


「こんな時に嘘なんて言えるわけがないだろ本当に回復薬だよ。頼むから命だけは助けておくれ。」


「顔が見られたかもしれないからね、それにあんたが他の人に言うかもしれないのに助けるわけないだろ。」


「この悪魔め!!」


「今じゃあそれは誉め言葉だよ。」


また腹からナイフを抜きドーボに最後の一振りを振った。

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