第22話治療
「アンドロマリウスさん、皆さんをあそこの木の陰に運んでください。そしたら私がブエルの持つ治癒魔法と合わせて皆さんを治療します。」
レイミヤはアンドロマリウスに応援を頼んだ。
「分かった。皆の治療をお願いする。」
アンドロマリウスはフラウロスとハーゲンティを、レイミヤはアランを木の影へと運んだ。
「ブエル、今こそあなたの力の出番です。」
そういうとレイミヤは怪我のところに手をかざした。
「かの者の傷を癒したまへ、クルーラ。」
レイミヤが唱えると淡い緑色の光が傷口を治していった。
レイミヤは同じようにフラウロスとハーゲンティにも施した。
しかし傷を治しても三人は目を覚まさなかった。
アンドロマリウスは千里眼を使いあたりに危険性のあるものがないか確認した。
「娘よ、おそらく三人が目を覚まさないのは坊主の魔力が影響していると考えられる。悪魔の同時召喚は魔力の消耗が激しいので私は一度戻ることにする。今千里眼で辺りを確認してみたが私が居なくても大丈夫なようだ。すまんが、三人のことをよろしく頼む。」
アンドロマリウスはレイミヤに頭を下げた。
「分かりました。私も何かできることはないかやってみます。」
アンドロマリウスはネックレスに戻っていった。
「ねえ、ブエル。魔力を回復させることはできないの?」
レイミヤがブレスレットを前に持ってきてブエルに質問をした。
「魔力を回復させることはできないよ。魔力っていうのは本来そこら中にあるものだけど魔力を回復させるのは魔力を作りそれを対象者に送るということ。私にはその魔力をつくということができないのさ。第一魔力なんかほっとけば自然に回復するさ。」
レイミヤはブエルからの答えを聞いて落ち込んだ。
「そうですか。わかりました。」
レイミヤが落ち込んでいるのを見かねたブエルが
「あーもう、うじうじするんじゃないよ。回復することはできないって言ってるんだよ。他にも方法はある。例えば、魔力を特別な水と合わせてできる魔力水を飲ませること。他には、自分の魔力を分け与えること。でも分け与えるのはあまりお勧めしないよ。魔力を分け与える行為にも魔力を消費するからものすごい勢いで魔力が消費されちまうからね。常人がやったら一瞬で魔力が尽きちまうよ。」
レイミヤに魔力の回復方法を教えた。
「私なら大丈夫です。魔力量が多い聖女見習いの中で群を抜いて魔力が多いのですから。その魔力を分け与える方法を教えてください。」
レイミヤは胸を張って言った。
「確かにあんたの魔力量は多いいさ、でも想像以上にきついから気を付けるんだね。まず対象者の心臓に一番近いところに手を置いて、手に魔力を集中させたらマジアダーレと唱えれば、あんたの魔力が贈られるよ。やめるときは、ただ手を離せばいいのさ。」
ブエルはレイミヤを心配しながらもやり方を教えた。
「分かりました。やってみます。」
説明を聞いたレイミヤは、アランの左横に座り両手をアランの心臓部分へと当てた。魔力を両手に集中させると、
「マジアダーレ。」
レイミヤは優しく唱えた。
するとレイミヤの魔力がアランに流れ始めた。
レイミヤは想像以上の勢いで魔力が減っていくので体がよろけて手を離しそうになるが何とか持ちこたえ姿勢をもとに正した。
「さすがにそれぐらいあげればすぐ目を覚ますよ。それ以上続ければあんたが今度は倒れちまうよ。」
ブエルはレイミヤと契約しているのでレイミヤの魔力の量を把握した。
「いいえ、アランさんは私のためにも頑張ってくれたんです。私も限界まで頑張ります。」
ブエルの忠告を無視してレイミヤはアランに魔力を送り続けた。
「レイミヤ!!もうほんとに危険だよ!!」
ブエルが大声でレイミヤに言うとレイミヤは手を離した。
レイミヤは急激な魔力の消費で両手を地面につき息を切らしていた。
アランとハーゲンティは目を開け勢いよく体を起こした。
「セツ!!」
「あの小娘、絶対に許さん。」
アランは起きるや否やレイミヤにセツのことを聞いた。
ハーゲンティは飛び上がりセツを探した。
「レイミヤいったいどうしたんだ?」
アランはレイミヤを見ると息を切らしていることに気づき心配して声をかけた。
「ハァ、ハァ。あ、あのこ、これについては・・・」
レイミヤが答えようとすると
「お前を起こすためにその女の魔力をお前に与えたんだよ。だから、今そんな状態なんだよ。」
まだ目を開けていなかったフラウロスがレイミヤがしたことをアランに説明した。
「そうなのか、レイミヤ?」
アランがレイミヤに手を貸し真実か聞いた。
レイミヤは静かに首を縦に振った。
「俺のためにそんな無茶をして、ありがとうレイミヤ。助かったよ。」
アランはレイミヤに抱き着いた。
レイミヤは突然の出来事に顔が真っ赤になり顔から煙が出た。
「お~お~、お熱いね♪」
フラウロスがアランが一方的にはぐしている様子を見て茶化した。
アランはフラウロス言われ冷静になった。
するとアランはレイミヤを離した。
「ごめんレイミヤつい。」
レイミヤは顔を赤らめてアランに背を向けた。
「い、いえ別に大丈夫です。」
レイミヤは一人もじもじしていた。
「そういえばなんでフラウロスがレイミヤがやったことを知っているんだ?」
「そ、そうですよ。確かフラウロスさんも傷w治しても目を覚ましませんでしたよね?」
アランとレイミヤはフラウロスを軽く睨んだ。
「別にただ寝てただけだ。」
悪びれる様子もなくフラウロスは答えた。
「主様どうやらあの小娘はどこかに行ったようです。お役に立てず申し訳ございません。」
空に飛びあがったハーゲンティが周りの調査から帰ってきた。
「いいや、俺のわがままにつき合わせたからな。ハーゲンティもよくやってくれたよ。マリウスもレイミヤを守ってくれて感謝している。戻っているのは俺の魔力のことでだろ?」
ハーゲンティに感謝をしてネックレスにいるアンドロマリウスに話しかけた。
「ああ坊主その通りだ。力になれなくて申し訳ない。」
セツとの戦いの傷が癒え皆元気に戻った。
「チッ、バルバトスの主を逃したか。だがそこまで離れていないはずだもう一度辺りを探してみよう。」
ガザキエルはバルバトスとセツを見逃してしまった。
辺りをもう一度探索するためガザキエルは森の奥深くへと飛んで行った。
「よし、何とか撒いた様だな。」
バルバトスとセツはガザキエルがいたギリギリのところで隠れていた。
「おい、大丈夫かセツ?」
バルバトスは、セツの様子をうかがった。
「なんであいつは私を助けたの?」
セツはガザキエルの攻撃が来る前まで殺そうとしていたアランに助けられたことを不思議がっていた。
「その様子じゃ平気そうだな。俺はそろそろ戻るぞ。」
そう言ってバルバトスはセツの持っているダガーに戻っていった。
「いったいどうして?」
セツは一人アランが取った行動を考えていた。
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