第9話希薄
その状態に気づいたのは最近の事だった。
意識が溶けていくような、不思議な不快感。
「大丈夫?」
_____ミキ、なのかな。
「大丈夫、なんか変なだけ」
ミキと名乗る何者かとの会話だとつい、考えてしまう。もう彼女はいないはず。
絶望していた。
理解者もいない、大切な者もいない。
意識がボーっ・・・としているときに好き勝手に色んな人格が話しかけてくる。
そんなとき。
事件が起こった。
・・・行方不明になったのだ。
「魔界にいこう」
そういう風に誘われたとき、彼は迷わず従った。
もうこんな世界はこりごりだ。
家を少しのお金を持って出ていった。
もう此処がどこかも分からないけれど、悪魔の同胞になれるのなら。
「お前はなんで同胞になりたいんだ?」
「もう人間は嫌なんだ。疲れるばかりで何にも、ない・・・」
彼は悪魔の前で演説を行って、家に帰った。
さらなる現実が彼をおそった。
_____これは叡智の魔王と呼ばれた彼の昔の話。
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