第3話

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「すみません」と亮一は何も疑うことなく胸ポケットにソレを入れようとして、あるのに気がつき驚いて刺繍されてるアルファベットがKなのを確認すると、顔色を失った。「ねぇ、ぷくぷくぷくんって何?」と聴く七緒に「知りません」と強く言ってKのハンカチーフを七緒につっかえした。ブスッとした亮一は七緒を押してトイレを去ると鞄を持って教室から出ていった。

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それっきり学校に来なくなった亮一を心配して部活担当の無い七緒は放課後、芦屋財閥へと家庭訪問することにした。大きな和物の豪邸にビビりながらも七緒は突撃した。運の良いことに現在当主に会うことが出来た。「すみません。私が亮一君を追いつめてしまった様で。もう、ぷくぷくぷくんの話はしないので」学校に登校させてください。

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と、七緒は頭を深く下げた。「わかりました。でも」約束は守ってくださいねと威圧的に見つめられて、七緒は無言で頷くしか無かった。それが七緒が見た最後の当主の姿だった。翌日教室を覗くと亮一は登校していた。ホッとした七緒の油断した顔を人知れず智久が見ていた。

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亮一は授業中、ずっと窓の外を見ていた。見とれる七緒に智久が「先生、また上の空」と騒ぎだす。それでも亮一は外を見ていた。

そんな数カ月が過ぎ、おちついた七緒に今度は亮一の海外療用の為の休学の話が持ちあがった。七緒の気持ちがまた加速する。どうしてこのタイミングと、ざわつく七緒。特に苦しそうに見えない亮一には避けられているので芦屋智久に聴いてみた。「亮一君どこが悪いの?海外で入院生活を行うって本当?」

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必死な七緒をうるさげにあしらうのに失敗した智久は「芦屋が保護してた祖母が亡くなり、芦屋の影として修行を妨げる案件が無くなったから」渡米するんですよ。これは貴方の我が儘に付き合った代価だから絶対に内緒にしてください。と、七緒はキツく言われた。じゃあ病気じゃないのねとホッとする七緒に「じき、亮一は渡米するからお別れの挨拶くらいならさせてあげます」との智久に七緒はお願いと念をおした。

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