第4話 パンが剣③
僕が驚いていると、パンの剣は『はぁ〜っ』って大きく息を吐いたように見えた。
【なんや、無双までは良かったんに。あのアホンダラなガキンチョをぶっ飛ばさんとここまで来たんかい?】
聞こえる。聞こえてる……!?
よくわからない国言葉ではあるけど、何とか意味は理解出来ている。
だけど、まさか見た目もだけど『
そんな武器だなんて、御伽噺で、小さい頃手習い処で聞いただけの情報なのに。
【? おーい、おーい?? マスター、聞こえとるん??】
「うぇ!? はい!!?」
つい、返事をしてしまうと、いつのまにかパンの剣が僕の目の前にいた!?
足がないのに、剣って動けるの!? と、さらに驚いていると……何かに頭を撫でられた。目だけを動かしても上には何もない。
【なーんや? 顔洗ってシャキっとしたかと思ったんに、話出来るな〜って感じだったのが呆けてるってどないしたん??】
「い……いや、いや?? き……君、なに??」
【なんや、って? あんさんが抜いた魔剣やで?】
「ま……魔剣!? パン……だよね??」
【おう! フランスパンの魔剣や!!】
顔もわかんないけど、なんか胸を張っているようにも見えた……? 見えた……だけ??
「え……ふらんす、パン??」
【せや!! あんさんにインプット……つまりは、植え込んだ異世界の知識に含まれるパンや!!】
「い……異世界??」
このパンが異世界から来たかもしれない存在??
それが、僕なんかが扱える魔剣に??
意味がわからなくて、現実逃避しなくなった……!!
すると、今度はガツンと何か攻撃されてしまう!?
上を見ても何も見えない……これはこのパンの剣のせい!?
【現実受け止めや!? あんさんは紛れもなく、このフランスパンの魔剣の主人や!! 胸張っていいで!!?】
「……けど、パンでしょう??」
僕が言うと、今度は岩で殴られたような衝撃が!? 上を見れば、パンの剣が僕にぶつかっていた。
【ただのパンやないで!? 向こうでは最強に固いパンでめちゃくちゃ有名だったんや!!】
「…………じゃあ、何故、剣に??」
【ワイは魂があるようでない、擬似生命体。つまりは、偽物の生き物や。死にはせんけど】
「え、えぇ??」
説明されても、全然僕の頭じゃ理解出来なかった。
【ず〜〜っと、あんさんが来るのを待っていたんやで?? トラディス=クレイグ?】
「……僕の名前?」
【セッティングで読み込んだんや。あんさんのだいたいの経緯もダウンロードされとる】
「……?? どう言うこと??」
【簡単に言や、ワイの唯一の主人はあんさんだけや!!】
ぽん、と今度は優しくパンの先端が僕の頭を撫でてくれた。
とりあえず、僕はとんでもない異常な魔剣を手に入れたことだけわかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます