SS4-2、赤薔薇隊隊長~婚約報告兼説得するまでの軌跡~赤薔薇隊副隊長の説得失敗?~

 王様が側に待機していた執事を通し契約の儀のスクロールを受け取る。

 そのスクロールに書いてある条件について、ユニは質問する。もちろん不敬にならないよう了承を取ってからだ。


 王様が了承したのでユニが質問する。


 一つ目の件については宰相とユニを意見の中間を取り、書類上は所属する事にするそうだ。国民達には、勇者カズトと結婚した事を一切合切伝えない。

 つまり、箝口令を引くのだ。国民達が暴動を起こる可能性があるからだ。

 ユニには神のように信仰する者が多く、ユニが街に出るとアイドル並みに人が群がってしまう程だ。


 二つ目の件は一つ目に記した通りだ。


 三つ目の件は書類上で所属していても限界があり、たまに実績を示さないといけない。そういう訳で王族発注の任務を定期的に就かないといかない訳だ。

 つまり、結婚は許してやるから絶対にやれという圧力だ。


 四つ目はレストラン〝カズト〟にユニがいる事を認識出来ないようにするためだ。魔法具【変装の首飾り】は身に付ける事によって髪・瞳・肌の色や体型の認識をずらす事が出来る。これによって全くの別人に見えてしまう優れものだ。


「了解致しました。謹んでお受け致します」


 チクッと細い針で親指を刺し血印を押した。その直後にスクロールは空中に舞い目映い光を放つと消えた。

 これにより、契約の儀は終了となり契約は成された事になる。


「良いか、ここに居る者全員口にする事を許さんからな」

「はっ!仰せのままに」

「あなた、判りましたわ」


 もし、話したら王様とユニが罰を受けてしまう。宰相と王妃は冷や汗を掻きながら頷いた。

 ここの出来事は墓まで持っていくしかない。罰といっても死ぬ事はないだろうが、何が起こるのかはその時にならないと誰にも分からないから恐ろしい。正に神のみぞ知るとは良く言ったものだ。


「ユニよ、お主と勇者の結婚の件はこれで一先ずお開きにする。が、お主から説得を頼むしかない者がおる。誰の事か判るな?」

「はっ!私事の故、お任せ下さいませ」


 ユニには、王様へ結婚の報告とは別に報告謙説得をしなければならない人物がいる。それは━━━━


「お姉様ぁぁぁぁぁぁ」

「ライラ」


 ライラ・レイニドール━━━━赤薔薇隊副隊長にてユニをお姉様と尊敬というより信仰してる人物である。

 騎士隊に所属してるにも関わらず王族やそれに連なる貴族の命令を一切聞かない問題児だ。唯一ユニの言う事なら聞く。

 ユニを見つけ駆けて…………いや、自動車並みの速さで突進して突っ込んで来る。並大抵の冒険者や騎士ならぶっ飛び重症をおってしまう。

 それを難なく受け止めライラの抱擁を受けてる。ユニも満更でなく素直に嬉しい。

 端から見たら本当の姉妹のように仲が良いように見えるが、その内容は過激だ。

 ライラの突進(本人曰く愛のスキンシップらしい)を受け止められるのは、数多くいる騎士隊の中でユニだけだろう。


「お姉様、聞きました。ここを辞めるんですね」

「な、何故それを!こほん、別に辞める訳ではないが王都から離れるだけだ」


 知ってるなら話は早いと思うが、ライラはユニに信仰してる故に説得は困難を極めると予想されると誰もが思っていた。


「なら、私もお姉様に付いていきます」

「それはならん。ライラは赤薔薇隊副隊長として、みんなを纏める義務がある。これは私からの命令だ」

「……………!!お姉様の頼みなら仕方ないです。ただし、一つだけ条件があります」


 と、思われたがどうにか説得が出来そうだ。ただし、ライラがユニに条件を突きつけるとは珍しい。いつもならすんなりと、ユニの頼みを100%断らない。


「私も勇者カズト様にお会いしたいのです。どんなお方か確認致しませんと」


 カズト召還当時、王国からの緊急任務にてライラは王都に不在中で話には聞いていたが、魔王を倒し五年振りに王都へ戻ってくるまでは見た事なかった。


「凱旋した時に見たじゃないか?」

「それは、遠目からです。私はちゃんと目の前で話とお姉様に見合うかどうか戦ってみたいのです」


 ギランとライラの瞳が獲物を狩る猛獣みたく淡く光り、ペロリと唇を舌で舐め回す。ユニは知ってる。

 ライラが猛獣の瞳になった時、例外なく相手は無残に狩られる事を。

 これはカズトを完全に狩る気まんまである。ユニにはカズトが負けるイメージが浮かばないが、その逆にライラが負けるイメージも浮かばない。どうなるか全く予想が出来ない状況だ。


「それで何時出発しますか?お姉様

「あ、あぁそうだな。三日後に出発しよう。その前に部下への引き継ぎはちゃんとするように。いくら古都でも王都から離れるからな」

「それは分かってます。では、お姉様また後で」


 ルンルンとスキップをしながら去って行くライラを背後から見ながら、カズトの安否を今から心配になってくるのと同時に申し訳ない気持ちになっていく。


「………………(カズト済まない。ライラを説得出来なかった。無事に生き残ってくれ)」


 と、祈るのみだ。

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