SS4-1赤薔薇隊隊長~婚約報告兼説得するまでの軌跡~
赤薔薇隊隊長であるユニはレストラン〝カズト〟から王都へ帰った直後に玉座の間への面通しをお願いした。
用件はもちろんカズトとの結婚の許しを得るためである。
許可が下りるまで時間はそれなりに掛かる。
なので、今は日本の会社で言うところの待ち合い室みたいな所で待つ。
王族直属の騎士隊隊長ともなれば、そう簡単には辞められない。辞める方法があるとすれば二つに一つだ。
一つ目は戦場にて死亡━━━つまり、殉職である。
二つ目は騎士隊隊長という地位よりも高い地位につかれ、隊長を譲る時だ。
普通はそうだが、女性のみで形成された赤薔薇隊には抜け道がある。それは上流貴族との結婚だ。
貴族は普通、同じ階級の貴族しか結婚しないのが通例だが、赤薔薇隊の…………しかも、その隊長ともなれば貴族としての箔がつくし、何処の貴族でも結婚は断る事はないはずだ。
それに赤薔薇隊隊長のユニは、顔立ちが良くスタイルも良い。下心を丸出しな貴族は後が絶たない。
「陛下から謁見の許しが出た。玉座の間へ今直ぐに向かうがよい」
「はっ!感謝いたします」
国王の周囲を世話を致す執事長がユニを呼び来て、そのまま玉座の間へ案内される。
「赤薔薇隊隊長ユニ入ります」
玉座の正面まで到着するとユニは床に片膝を付き、不敬にならないよう声を掛けられるまで頭を下げ続ける。
王の側には王妃と宰相が立ちすくしてる。王妃は常にニコニコと笑顔をたえさず男女諸とも癒される。
その逆に宰相は厳格な面持ちで、常にこちらを睨み付け腰が弱い者ならば一目散に逃げ出すであろう。
因みに宰相本人によると厳格に見えるのは生まれつきの顔つきのせいで、そう見えてしまうだけだそうだ。宰相が密かに抱いてるコンプレックスの一つだ。
「顔を上げてよいぞ。して、ユニよ。帰省早々儂に話があるとな?申してみよ」
許しを得、顔を上げ玉座に座る王様を見上げる。その王様の威厳ある威圧感に圧倒されつつも自分の要件を申す。
「王様、私は騎士隊を━━━赤薔薇隊隊長を辞めたいと申します」
「なっ!なりませんぞ。赤薔薇隊は我がグフィーラ王国が自慢する騎士隊の中で唯一の女性騎士隊…………花形ですぞ。その隊長となれば、国民全員が尊敬される存在ですぞ」
やはり宰相は大反対してきた。
宰相の言う事も最もであり、何処かの貴族の結婚や任務でのケガや死亡等でないと普通は騎士隊に入隊した時点で辞められない。
「まぁ待て。取り敢えず理由を聞こうでないか。赤薔薇隊隊長ユニよ、何故騎士を辞めたいのか申してみよ」
宰相の大反対に王様が横槍を入れた。
これはユニにとってチャンスだと誰もが思う事だろう。
だけど、ユニは知っている。王様は普段おおらかな人柄で優しい反面、ここぞという場面では厳しいところをユニは知ってる。
「……………勇者カズト殿と結婚したく……………赤薔薇隊隊長の任から降りさせてもらいたい所存でございます」
誰にも聞こえないような声で「やはりか」と王様が呟きため息を吐いた。
瞳を瞑りながら額に右手を当て、誰にも判るような困り顔を醸し出し沈んだ空気に包まれる。
「また、あの勇者ですか?はぁ~、自分の立場を考えなさい!レイラ姫殿下は、運悪くも勇者パーティとなってしまったものの、ユニ隊長…………あなたは何の関係もないでありませんか」
「そ、それは…………」
カズトが召還された当初、戦いの手解きをしたのがユニである。
冒険へ旅たった以降は音信不通で五年の間、一切合切逢っていなかった。
連絡手段も当時はなくて、本当に五年振りに出逢えた訳だ。
この世界での連絡手段は三つしか存在しておらず、一つ目は【遠聴の水晶】という魔道具だ。
これは連絡する側とされる側とで所持していないといけない。それにそこそこの値段するおかげで
二つ目は【
そして、三つ目は手紙のやり取りだ。これが一般的だが、最も時間が掛かる方法だ。
一通出してから相手側に届くのに1ヶ月掛かり、物凄く現実時間とのインターバルがある。
「……………(好きな人と結婚したいと言って何が悪いのだ。あぁ、イラつく。今直ぐ宰相を切り捨てようか)」
物理的な意味で。
だけど、そんな事すれば国家反逆罪として国を追われるか牢屋行きだ。だから、やんない。カズトと一緒にいられなくなっちゃう。
「まぁ待て、ラポよ。そなたの言いたい事も判るが、ユニの気持ちも判るつもりだ。それで衷案として、儂に一つ考えがある。幾つか条件付きで、ユニの提案を受け入れようではないか?」
「「条件ですか?」」
「その条件とは━━━━」
ユニがカズトと結婚する条件。
・一つ:赤薔薇隊隊長を続行する事。
・二つ:ユニが王都を離れてる事に箝口令を敷く事。
・三つ:王都から指令が生じた場合、直ちに騎士隊隊長として任務を遂行する事。
・四つ:レストラン〝カズト〟で従事してる場合、【変装の首飾り】を常に所持してる事。
上記の条件を持ってユニと勇者カズトの結婚を認める事にする。
と、王様が契約の儀に使うスクロールに記し、自ら血印を押した。
これでユニも押せば契約成立となり、どちらかが約束を反古すれば反古した側が罰を受ける事になる。
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