37食目、獣耳従業員ゲットその2

 男は不良三人組を倒した後、何処かのゴミ溜めに放り投げ男の子?を目覚めるのを待っていた。

 ただ、今しがた休憩時間は終了してるがしょうがない。何か言い訳を考えよう。今はそれよりも………。

 不良から助けた男の子?だが、助けてくれた男から財布をスッタ訳で本当なら助ける義務はない。

 でも、男は勇者な訳で困ってる者を見過ごせない性格である。

 まぁそんな性格だからこそ周囲から頼られ人徳が増えて行く。男も頼られる事が好きな様で人助けが趣味化してるフシがある。


「うっ………うぅん………あれ、ここは………」

「よっ、起きたか。体は大丈夫か?何処か痛いところはあるか?」


 一応、回復魔法ヒールを掛けてあげたので、キズはないはずだが聞いて見る。

 疲労や減った血液はどうにもならないからな。ミミならどうにかしてしまうかもしれないが。


「あの怖い男達は?」

「うん?俺がやっつけて、そこら辺に捨てておいた」

「ど、どうして僕を助けるの?僕はお兄ちゃんの財布を………」


 財布をスッタと言おうとしたら急に怖くなった。目の前の男も自分に暴力を奮うんじゃないかと考えてしまう。

 そう考えた瞬間、言葉が出なくなってしまった。あの不良三人組よりも強い訳で、今襲われたら確実に〝死〟が確定してしまう。


「なんだそんな事を気にしてるのか?それよりも、お腹空いてるんじゃないか?」


 男はアイテムボックスからボリューミーな肉が刺さった串焼きを取り出す。

 その串を男の子?が見るやいなやヨダレが垂れ可愛い腹の虫が鳴り響く。


 グゥゥ~


「………(ヤダっ!恥ずかしい)」

「………ぷっくくくく」


 男の子?の可愛い腹の虫に思わず笑いが零れる。男の子?には悪いと思うが笑いが抑えられない。


「…………」

「そんな目で見るなよ。ほれ、これをやるから」


 男の子?に串焼きを渡して途端、何の躊躇いも無くかぶりついた。

 産まれてから今まで味わった事のない美味しさに無我夢中で食べる。

 口の周りや服が汚れてもお構い無しに食べるのを止めない。

 串焼きはあっという間に無くなり、名残惜しそうに舌で口の周りを舐め取る。

 久し振りの食事に男の子?は満足してる。が、何故か涙が溢れてくる。


「………兄ちゃん、ありが━━━」

「うん?なんだ、もう良いのか?まだ、あるの━━━」


 驚きながらも男の手から串焼きを奪い本能のままかぶりつく。

 この美味しさに体が反応してしまう。本能が逆らえない。


「うわぉ、凄い食べっぷりだな。俺が作った料理をこんなに美味しく食べてくれるのは嬉しいな」


 男の言葉にピクリと男の子?の耳が反応する。この美味な物を作ったのは、目の前にいる男と言うのだから目を丸くする。

 この男に着いて行けば、また美味しいご飯にありつけるかもしれないと、ふと頭を過った。

 しかし、自分の今の格好を思い出す。こんな汚く見窄らしい自分なんて本当は相手したくないだろう。

 今日はたまたまお情けを貰ったに過ぎない。お礼を言って早くここを去ろう。


「あのぉ、兄ちゃん今日はご馳走様です。とても助かりました。お金は払えませんが、このご恩は何時かお返しに参ります」


 ペコリとお辞儀をし颯爽と翻し去ろうとしたが、男は急に男の子?の頭にチョップをし止めた。

 コイツ何勝手に帰ろうとしてんだ?まだ、俺の用事が終わってないってのに、しょうがないヤツだ。


「うぅ~、兄ちゃん痛いですよ」

「ウルサイ、俺の用事が終わってないのに帰ろうとするからだ」


 不良三人組から助けたり、串焼きをご馳走するために来たんじゃない。

 本来の目的は掘り出し物を探しに来たのだ。そう今目の前に掘り出し物がいる。


「………お前!女の子だったのか!それにその耳は………」


 突然突風が吹き深く被ってたフードが吹き飛んだ。フードが取れ頭にあるモフモフな垂れ耳と長髪が現になる。

 それに加え、服の隙間からフワフワな尻尾が見え隠れする。

 犬っ娘キタァァアアアア!掘り出し物と思いきや超激レア掘り出し物であった。


「見ないで!この耳醜いでしょ。それに尻尾もあって…………」

「何を言ってるのだ?可愛いではないか」


 知り合いに猫耳いるし、日本にいる時に良く獣耳っ娘が出演してるアニメを見ていた。だから、アギドに来た当初は逆にこっちから獣耳と知り合いたいと思っていたのだ。

 まぁ勇者が多忙で中々獣耳と出会いはなかった。そこは本当に残念だが、今日の出会いに感謝致します。そして、絶対にお持ち帰りしてやるのだ。


「か、かわっ!僕の何処が可愛いと言うのだ」


 モフモフ


「ご冗談が━━━」


 モフモフモフモフ


「上手━━━」


 モフモフモフモフモフモフ


「なのだ!って、兄ちゃんは一体何をしてるのだ」 


  うぉっと!突然振り向いて俺はモフモフな犬耳から手を離してしまう。うむ、もっと触りたいがために残念だ。


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