38食目、獣耳従業員ゲットその3

 犬耳っ娘はガルルルっと威嚇してくる。


 これで怒ってるらしいが………うむ、威嚇する姿も実に可愛いらしい。

 レイラやドロシーではないが、撫で廻したい。まぁ、その考えは横に置いといて。


 さてと、ここからどうご機嫌取りをしたら良いか?うむ、犬耳っ娘はどうやら身寄りがなさそうで明日の食べ物にも困ってるであると推察出来る。


 この犬耳っ娘は見た目通り獣人と総称される種族の一つ犬人族コボルトであり、最も鼻が利く種族だ。

 それに獣人はほぼ例外なく大食漢である。そこで、俺は一つの提案を提示する。


「なぁ、俺の店で働く気ないか?」

「店だと?僕を奴隷にする気か!」


 奴隷は大きく分けて二種類ある。


 一つ目は奴隷落ち、何らかの理由で奴隷に落ちた者の総称(ただし犯罪は犯してない)だ。こちらは主人の暴力や食事を与えないと訴える事が出来る。

 それに、売買した時のお金を支払う事が出来るなら自由になれる。


 二つ目は犯罪奴隷、犯罪を犯し奴隷になった者だ。こちらは犯した犯罪によって決まってる年数を過ぎない限り自由にならない。それに主人に暴力や食事を与えなくても訴える事が出来ない。


 因みに奴隷を買うには奴隷商と売買の契約を結ぶ必要がある。奴隷にするには、奴隷商のみ使用を赦されてる固有魔法があり、それによって奴隷にする。

 もし、奴隷商以外の者が勝手に奴隷にする事は法律で固く禁じられ、破ると最悪死刑になる。

 奴隷にする魔法は固有魔法なので奴隷商しか使用出来ないからそこは安心してほしい。が、"隷属の首輪"という魔法道具が存在しており、それを利用すると奴隷に出来てしまう。

 まぁ俺は奴隷に興味ないがな。


「いや、これは正式に雇用するという話だ。ちゃんとお金は払うし、衣食住も保証しよう」

「でも!僕は汚いし、こんな姿じゃ働けないよ!」

「そこは問題しなくて良いさ。そういえば、名前まだ聞いてなかったな」


 モフモフが先行して自己紹介がしてない事に今気付いた。さて、自分の事は何て言おうか?


「ぼ、僕はルーシー………ルーシー・ファン・レントシーです」


 名字持ち?それじゃぁ、元々貴族なのか!良く見ると首にペンダントを掛けており、そこにはルーシーが申し上げた家名が彫られてる。おそらく、親の形見なのだろう。

 このスラムにいるという事は両親はもう━━━いや、暗い事を考えるのはやめよう。


「俺はカズトだ。勇者と言った方が通りが良いかな」


 やっぱりここは本当の事を話した方が良いよな。男は率直に事実を話した。


「うぇぇぇぇぇぇ!ゆ、ゆゆゆゆゆ勇者様!」


 よし、予想通りに驚いたな。別に悪戯した訳じゃないがサプライズ大成功みたいで楽しいな

 ルーシーは驚愕な表情で目を見開き固まってる。目の前で手を振っても反応しない。まるで〝ただの屍のようだ〟。


「あれ?おーい、聞こえるか?やり過ぎたかな?うーん、まぁ良いや、このまま運んじゃおう」


 固まってるルーシーを脇に軽々しく抱え、カズトはこの場から瞬時に去った。

 ルーシーを抱えたまま、建物の屋根から屋根へ飛び自分の城へと向かっている。


「う~ん、えっ!ここは一体何処………ぎゃぁぁぁぁぁ!と、飛んでるぅぅぅぅぅぅ」


 うぉ、急に意識が回復したせいでカズトの腕の中でルーシーが暴れる。

 ただし、ガッチリとカズトの腕がホールドしてるお陰で暴れてもビクともしない。

 少し時間が経つとルーシーは大人しくなり、ただぶら下がる形となっている。


「大人しいだけど、大丈夫か?」

「最初ビックリしただけで、僕は大丈夫です。それよりも、ゆ、勇者ってのは本当なのか?」


 あっ、やっぱりそこ気になる?まぁそうだよね。いきなり目の前に現れたヤツが勇者とか普通信じないよね。

 うーん、何気に勇者の証拠ってないな。エクスカリバーが証拠になるだろうけど、知らない者の方が多いしな。何気に証明するの難しい。


「………あぁ、本当としか言えないけど、信じるのか?今日、会ったばかりの男の戯言を………」

「うん、信じる………ていうか、こんなスピードで飛び回るヤツなんて他にいないしな。やっぱり噂って本当だったんだな」


 おい、ちょっと待て!世間では、どんな噂が流れてるんだ!超気になるが怖すぎて聞けない。


「それで返事を聞かせてくれ。俺の店で働いてくれるかい?」


 つい誘拐染みた事を現在進行形で実行中なので、ほぼ選択肢ないようなもんだけど………

 日本だったなら確実に刑事事案な事をやってるよな。まぁ今の俺が捕まるはずもないけどな。


「一つだけ条件があります。僕には生き別れの妹がいるのです。その妹の捜索を手伝って貰えませんか?」


 そうか、妹がいるのか。俺にも妹がいたから気持ちがスゴく分かる。こちらに召喚された当時の妹は15才のはずだから………20才位になってるはずだ。

 元気にやってるだろうか?結婚して子供がいてもおかしくない年齢だ。会ってみたいが、俺にも大切な人が出来て可能なら一緒に向こうへ里帰りしたいもんだ。


「あぁ良いぞ。俺は勇者だからな。いろんなところに顔が利くから任せとけ」


 ピョンピョンと跳びながら胸を張る器用な真似をする。

 自分にも妹がいるから探してあげたい気持ち半分、ルーシーの妹もモフモフしたい気持ち半分って事でルーシーの妹を探す約束をした。


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