27食目、ワィヴァーンの肉を頂戴しに行く

「「「「「「ご迷惑掛けてすみませんでした」」」」」」


 赤薔薇隊の五人は昼頃、完全に二日酔いが治り一階へと降りて来るやいなやカズトに90°近く頭下げ謝っている。

 昨日、レイラとドロシーと一緒に大浴場で酒盛りを繰り広げたせいで二日酔いになってしまい、クランベリージュースを飲んだおかげで、どうにか昼頃に復活出来高次第である。

 因みに、鬼人族オーガの二人は二日酔いにはなっておらず、ケロっと何も変わらない雰囲気で朝食と昼食を食べ、今は運動かてら遊戯室で何故か卓球をしてる。


「困った時はお互い様だろ?それに、俺が召喚された時にはユニに散々世話になったんだからな」


 お客様から見えないスタッフルームの中、現在進行形で頭を下げられる訳だが、角度によっては谷間よりもその先が見えそうになっており目のやり場に困ってる。

 今の時間帯、昼頃であって忙しく早く仕事に戻りたいのも本心だ。だが、薔薇隊もお客様の手前無下に出来ないでいる。


「勇者殿………いえ、カズト殿ご感謝心に痛み入る。このご恩はいずれお返しする所存です」

「まぁ隊長の場合は………ねぇ♪」

「そうだな、またここにていうか………一生ここに暮らす事になるかもしれないしな」

「お、おおおおおお前達一体何を言っておるのだ!」


 今まで戦闘ばっかりやっていたせいで、恋愛事は苦手なようで部下達にオモチャにされてる。あの赤薔薇隊とは思えない程に微笑ましい光景だ。


「そういう訳で、勇者様どうか隊長をよろしくお願いします」

「「「「よろしくお願いします」」」」

「おぅ、任せろ」

「お、お前達!カズト殿」


 こうして、赤薔薇隊は正面口からは他のお客様に迷惑掛かると裏口から王城に戻って行った。

 ユニが赤薔薇隊を辞任する事を説得には時間掛かるだろうが、俺に出来る事はただユニがここに戻って来る事を祈るだけだ。

 まぁもし王族側が武力行使しても、ユニなら大丈夫だ。王都には、まずユニに勝てる者はいないはずだ。

 赤薔薇隊の件は一先ず片付き、カズトが仕事に戻ってから十数分後、バァーン勢い良く正面口の扉が開いた。何事かと厨房から覗いて見ると………。


「ハァハァ、勇者様は………いらっしゃる………だろうか……ハァハァ」


 走って来たせいか息切れをしながらカズトの事を呼んでる三十代半ばの男性が店に入って来た。

 カズトは見覚えがあり、厨房はミミに任せその男性へと近寄り声を掛ける。おそらく、アレだろう。


「どうしたんだ?そんなに慌てて。ほれ、水を飲んで少し落ち着け」

「ゴクゴク………ぷはー、ありがとうございます。勇者様」


 水を入ったグラスを三十代の男に渡し、それを飲み干すといくらか落ち着いた様子だ。

 この男は、レストラン〝カズト〟がある都市〝古都〟の冒険者ギルドのギルドマスターであるエドワードだ。

 今はギルドマスターをやってるが昔は冒険者をやっていたらしく、現役時代の等級はAらしい。Aだと一流冒険者という事になる。

 因みにカズトはSSだ。指で数える程度しか到達出来ない。SSは伝説的冒険者になり、一国に一人しかいない等級だ。

 そんなカズトに何を頼みに来たのか?十中八九、討伐系の依頼だろうが、相当な大物でも出たか?


「それで………今日はどうした?相当慌ててるようだが?」


 滅多にとは言わないが、たまにエドワードが俺に依頼を廻して来る。

 こっちはお金とモンスターの部位が手に入るからWinWinだけど、今は飲食店経営をやってる手前依頼を受ける旨味は少なくなってる。


「わ………」

「わ?」

「ワイヴァーンが出たんだ」


 ワイヴァーン━━━そのモンスターはファンタジーなら有名なモンスターの一種だ。

 最強モンスターと名高いドラゴンに分類されるが、低級の位置にされA級冒険者なら討伐出来るはずなのだが。


「ワイヴァーンなんてA級なら楽々討伐出来るんじゃないか?」

「問題は、その数なんだ」


 魔物モンスターの討伐ランクは、一匹の場合だ。

 複数の場合は、一匹の時の一段~二段階上がる。ワイヴァーンの数は、まだ聞いてないがパーティーじゃなくレイドを組む事になるだろう。

 パーティーは、五人までの冒険者でチームを組む事。レイドは、そのパーティーで複数徒党を組む事を言う。


「何匹なんだ?(複数でも、数匹程度なら対応出来るだろう。おそらくは………)」

「実は………五十匹なんだ」


 ドラゴンは、他のモンスターとは違い群れで行動しない。

 もし、群れても数が多すぎる。何かが変だ。これは………黒幕がいるかもしれない。それに………これは食材入手のチャンスだ。

 下級だけどドラゴンには違いない。ドラゴン肉は、どれも高級食材としてベラボウ旨い。是非とも手に入れて食べたい。


「それは………確かなんですか?」


 カズトは食欲を抑えつつ、聞いて見る。五十匹なんてアギドの歴史上類を見ない異常さだ。ついでに、黒幕もやっつける事にしよう。


「あぁ、それは確かだ。王都の騎士隊の中で偵察・諜報に特化した部隊………梟隊からの知らせだ」


 梟隊━━━━噂だけならカズトも聞いた事がある。消して姿は現さず偵察・諜報だけをする部隊、絶対に戦闘はしないため軟弱と言われる事もしばしばある。

 敵に捕まり次第、情報を渡さないため自害を躊躇わないと聞く。


「ほぅ、実在したのか。それなら信用出来るか。それで場所は?」

「古都から海の街"ニィブルヘイベン"に行く街道です。こちらに向かってる模様で等級問わず冒険者が足止めをしてる様子です」

「なら、俺に任せとけ。店を少し頼むぞ」

「「「いってらしゃい」」」


 さぁ、ドラゴン肉祭りの開催じゃぁ!!


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