28食目、ワィヴァーン肉祭り
カズトは防具は何も着けずに包丁形態のエクスカリバー:料理の聖剣エックスを片手に駆け出した。
普通は馬で1日から2日掛かる道のりを自らの足のみで街道を駆けてる。
カズトなら一時間程で着く道のりである。本当なら本気で走るなら、その三分の一で済むだろう。これで勇者の規格外の一端が見えたかもしれない。
「おっ!見えて来たな。確かにあれはワイヴァーンだな。さてと、早速ドラゴン肉をちょうだいしますか」
更にスピードを速め上空へとジャンプするのと同時にエクスカリバーを
淡く光ったと思ったら、光が炎に変化し刃を形成する。剣の刃紋は豪快に燃え上がる炎の如く赤く脈を打ってるようだ。
ファンタジーで有名な剣:エクスカリバーだが、異世界アギドのエクスカリバーは剣という形態━━━つまり両刃が付いてる物なら変化出来る。
唯一の例外として料理の聖剣〝エックス〟は除いて。もちろん、エクスカリバー自体でも戦える。
「とぉりゃぁぁぁぁぁ、炎の聖剣〝レヴァーティン〟………【火竜一閃】」
上空から急降下しワイヴァーンの首元へ炎の刃は当たり、何の抵抗もなく焼き切った。絶命したワイヴァーンは落下し、砂を巻き上げる。
何が起こったのか分からず、冒険者とワイヴァーンは茫然自失しその場から動けずにいた。ワイヴァーンを倒したカズト以外は。
「あ、あなたは?」
「うん?俺?俺はカズト、剣の勇者カズトと言った方が分かり易いか?」
一見カズトが何を言ってるのか分からず、カズトに聞いた冒険者は、〝勇者カズト〟と反復してる。
まぁ無理もない。目の前でドラゴンであるワイヴァーンが倒され、勇者まで現れたのだから。
例えるなら、モデルや俳優等の有名人がいきなり目の前に現れたものだろうか。
「ゆ、ゆゆゆゆゆ勇者カズト様!」
「そうですが、まぁ今は話すのは後にしてワイヴァーンを倒しますか。ケガ人も多数だし、君は治療頼むよ」
そう伝えると、ワイヴァーンの群れに向かって歩く。
仲間が一瞬でカズトが近付いて来るに連れ、先頭のワイヴァーンは後退し、それに連られ全体のワイヴァーンも後退する。
そんなワイヴァーンに向かってカズトは人間に聞き取れない言語で話し掛ける。いや、挑発を仕掛ける。
『や~い、ただ飛ぶしか脳のないトカゲ野郎。な~に、ビビってんだ?そんなに俺の事が怖いのか。そんなんだから、低級と呼ばれるんだよ』
カズトは竜言語で、わざと侮辱な事を言い放った。ドラゴン全種例外なくトカゲ野郎は最大の侮辱となる。
それに加え中指を上に向け立てた。地球と同じ意味合いか不明だが"くたばれ"という意味でワイヴァーン達にわざと目立つ様に見せた。
もちろん、冒険者達には何を言ってるのか分からない。ていうか、聞き取れない。
『この野郎!下級種族の分際で、その頭へし折ってやる。いくぞ、野郎共』
どうやら、先頭にいるワイヴァーンがこの群れのリーダー格の様だ。
端から見ても怒り心頭であり、自分は動かず部下達に命令だけで高みの見物を決め込むつもりの様だ。
だがしかし、こんな数の群れをどうやって指揮してるのか?リーダー格のワイヴァーンだけでは、傲慢で一匹狼のドラゴンをこんなに従わせるとは到底思えない。
どうやってるのか不明だが、何処かに操ってる者がいるはずだ。
カズトは戦いながら、その者の気配を探っていつでも捕らえられるよう周囲に注意を巡らせている。
「ずいぶんと短気だな。まぁ頭が回るより、そっちの方が動きがわかりやすくてやり易いけどなっと【火鳥風月】………五連打」
炎の斬擊がワイヴァーンに向かって飛んで行くと、炎の斬擊が鳥の形へと変化し追尾するかの如くワイヴァーンの首元を的確に切断した。【火鳥風月】一つに付き五匹ワイヴァーンの顔が落下した。
これで残り24匹、半数以下と減り残りのワイヴァーンはギャオギャオと鳴き声が余計に煩くなっていく。
『五月蝿いなぁ。仲間が殺られて悔しいなら、かかってくれば良い。あぁそうか、弱虫だから怖くて来ないのか。それじゃぁ、ドラゴンの名が泣くぜ。あっ、違った。空を飛ぶトカゲだったかな』
『なんだと!人間風情が我らを怒らせたな。本気を見せよう』
何やら連携を取れるようで、フォーメーションと言えば良いのか?そんな配置にそれぞれ付いている。
だが、おそらく付け焼き刃なのが丸分かりだ。明らかにもたついてる個体がいるのだ。
そんな隙だらけの状態に攻撃を仕掛けないで、いつ仕掛けるというのだ。それは………今だ。
「
と、変化させた瞬間にカズトの周囲から風が吹き始め〝スサノオ〟に集結してるかのようだ。風が止むと驚くべき事が分かる。
風ゆえに刃は見えず、一見柄だけの武器みたいに見えるが、ただ目に見えないだけで刃も確かに存在する。
「さぁ切り裂け【
たったの一振りで台風並みの風が起こりワイヴァーン達に襲い掛かる。ただその風は普通の風ではない。
鉄をも切断しうる魔力を混めた風だ。風自体が刃に変化し無作為に切り刻んでる風に端からだと見えるが、良く観察すれば的確にワイヴァーンの首元だけを切断してる。
普通は広範囲かつ無作為に放つ技だが、集中力と長年の経験で今の様に切りたいところを的確に切断出来る様になっていた。
これで一先ずワイヴァーンの件は片付いたが、もう一つワイヴァーンを操ってる黒幕がいるはずだ。
神経を研ぎ澄まし周囲の気配を察知する。これも冒険してる間に身に付けた
「さてと、見つけたぞ。この距離ならまだ間に合うな。
足元の土が盛り上がり〝スサノオ〟にまとわりつくと刃の形へと変化していく。
土色と言ったら良いのか、形だけを見れば剣だが剣の形をした鈍器と言った方がしっくりくる。
「敵を捕まえろ!【土牢核】」
〝ヤマタノオロチ〟を地面に突き刺し、しばらく待つと遠くから悲鳴が聞こえてきた。
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