26食目、二日酔い

 カズトとミミは呆れていた。

 開店準備の時間になり、カズトとミミの目の前にレイラとドロシーがいるのだが、二人とも大浴場で飲み過ぎて二日酔いになっていた。

 頭を押さえ今直ぐに吐きそうになってる。普通これでは、仕事になりゃしない。

 だが、それは一般人の話だ。俺達は魔王を倒した勇者であり、カズトにとって本当に情けないと思うが、昨日酒盛りに参加しなかったミミにステータス異常回復魔法を二人に掛ける事を頼んだ。


「「カズトごめんなさい」」

「…………俺じゃなく、ミミにお礼を言いなさい」


 二人の二日酔いを治しなのはミミなのだから。普段、お酒飲まないのと、アギドは貴族以外お風呂入らない習慣のため湯船内でお酒を飲むと普段より酔いやすい事を知らなかった。

 後で薔薇隊と鬼人族オーガの二人にも二日酔いを治す薬かクランベリージュースを持って行こう。

 日本では馴染み薄いがクランベリージュースは二日酔いに良く効く。クランベリーの他にもリンゴでも効くそうだ。


「「ミミちゃん、ありがとう」」


 レイラとドロシーは二人してミミをギュッと抱き締める。

 だが、ミミ本人は鬱陶しく嫌がり抵抗する。それに初めて名前のちゃん付けされ、それも嫌がり却下した。


「………苦しいです。今直ぐに止めないと、死ぬより痛い目にあいます」


 レイラとドロシーはバッと離し離れる。ミミはやると言えば本気でやる。

 普段はグウタラで怠惰な態度でヤル気ないが、カズトの言う事やヤルと言った事は本気以上にやる。周囲では、この事を本気モードと呼んでる。

 冒険時には、ミミが本気モードになりレイラとドロシーは死ぬより痛い目にあった事がある。その事がトラウマになり、出来るだけミミが嫌がる事はしないようにしてる。

 しかし、たまにやってしまいズタボロにやられてる。この二人は学習しないかとカズトは呆れてる。


「「ひぃぃぃ!すみませんでした」」


 すでに心を折られ即座に見事な土下座を披露する。日本人のカズトでもここまで素晴らしい土下座は見た事はない。

 ミミに出会ってから今日まで一度も怒らす事をやっていないカズトでさえ寒気を感じた。


「まぁ、これくらいにして開店の準備をしよう」

「それよりも、気になってる事がありまして………カズトの隣にいるのは一体?」


 土下座をしてたドロシーが聞いてきた。まぁ普通に気になるわな。半透明な人間に見える何かが居れば、常人なら驚愕した気絶するかもしれない。


「あぁ紹介しよう。粘体族スライムのスゥだ。お前らが片付けから逃げた後━━━」

「「それはごめんなさい」」


 逃げた事を怒られると思ったのか再び土下座をしだした。

 だから、それはもう良いって………。


「改めて紹介するぞ。粘体族スライムのスゥだ。今日から正式に働く事になって。担当は食器洗いだな。

 さすがに、この格好でホールは出れないからな。スゥが洗うと新品みたく綺麗になる」


 粘体族スライムは、その体の性質上普通の衣服が着れず普段は裸か植物の葉を張り付けてるらしい。人間が着てる一般的な衣服だと直ぐにずぶ濡れになってしまう。

 衣服を着るには衣服に防水加工が必要なのだが、そんな技術アギドには存在せず魔法でも可能だが、わざわざそんな魔法を衣服に掛ける変わり者はいない。

 カズトの故郷日本では、防水性の衣服だとレインコートや水着に防水加工が施された防寒着くらいだろうか。カズトもそこまで詳しくは知らない。


「料理はどうなのですか?」

「この世とは思えない程美味しい水が出せる。が、他人の体液を飲みたいと思うか?」


 粘体族スライムは一つの特性を持つ。それは、どんな汚れた水でも濾過出来、異物がほとんどない綺麗な水を作れるが、見方を変えれば体液に見えてしまう。

 そんな物、料理に使用出来ないし、お客様にも出せる訳ない。

 よって、粘体族スライムのスゥには食器洗浄機としての役割を与えた訳だ。スゥによると食事も出来、一石二鳥らしい。カズトとしても水と洗剤代が節約出来る訳だ。


「………飲みたくないですね」

「そうだろ。冒険時なら兎も角、今は飲食店経営なんだ。出せる訳ない。よって、皿洗いを命じた訳だ」

「スゥトイイマス。ヨロシクオネガイシマス。ミナサン」


 ニコっと微笑むとレイラが抱きついて来た。

 しかし、ミミがスゥの目の前に障壁を張り、ガラス窓に勢い良く衝突するかのように顔が大変な事になってる。自業自得だからしょうがない。

 レイラは無類の可愛い物好きでレストラン〝カズト〟の自室にもヌイグルミや人形が置いてある。

 そして、何故かカズトの抱き枕があるが、この事はカズトは知らない。


「さぁ、紹介も終わったし、本当に開店準備しないと間に合わないから。レイラは起きろ」

「うぅぅ、酷いです。何か要求します」


 このまま、駄々をこねられちゃ開店出来ない。仕方なく、レイラの言う事を聞き、後で何かしら"やる"という事で手を打った。

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