17食目、赤薔薇隊宿泊す
「ゴックン………ゴホゴホ」
吐きはしながったが、器官に入ったようで咳き込んだ。
地球では内臓系の肉を地域によって違うが良く食してきたと思う。
こちらでは、まず内臓は食べないのだろう。というか調理の方法を知らず、その結果として食わない訳だ。
カズトが冒険してる最中でも内臓を食べると聞いた事がない。まぁそこは食文化の違いだ。とても旨いのに残念だ。
内臓は上手く調理しないと血生臭くなるし、味も不味くなる。そこは解体作業と調理の腕次第だ。
カズト自身、両方とも天下一品の腕を持ってるので問題ない。それに………相棒である聖剣エクスカリバーがあるのも相まって不味くなるのは有り得ない。
後はまぁ………好き嫌いの問題かもしれない。でも、カズトの料理を食し食べず嫌いが治った例は少なからず合ったりする。
「だ、大丈夫ですか?すみません、苦手でした?」
心配そうに顔を覗き込もうとするが、手を差し出され制止させられた。どうやら大丈夫なようでカズトは安心する。
「情けないぞ。そんな事で咳き込むとは………はっむん、モグモグ………旨いではないか」
「す、すみません。ただ、驚いただけですわ。旨いのは事実ですし問題ありません」
初めてだと無理はないが、それにしても………ユニの精神強いな。確かユニにもレバーも含めて内臓は一つも出した事ないはずなのに食べてしまうなんて。
うん?ユニの目頭に涙が微かに浮かんでるように見える。まさか!部下の手前無理した食べたのか。案外と可愛いとこもあるじゃないか。ニヤニヤ………おっと、笑ったら失礼だな。
「隊長も部下の前だからって無理は禁物ですよ。ニヤリ」
「無理ってなんだ!意味が分からないな」
カズトの指摘に僅か頬を朱色に染まる。だが、そこは隊長なのだろう。直ぐに普通の表情に戻ったようだが、カズトには見える。怒りのオーラが………まるで般若のようにこちらを見てるかのようだ。
他の人には見えておらず、カズトだけ冷や汗を掻きソッポを向く。あれは怒らせたらいけない部類のヤツだ。
「ま、まぁお気に召されたようで良かったです。あ、あっははははは」
マジで怖えぇぇぇ!何で周りは見えてないんだよ。特定の者に"怒りのオーラ"と言ったら良いのか、みたいなものを見せるとか地味にスゴくねぇか。と思いながら苦笑するしかなかった。
カズトは武術はやった事ないので詳しくは分からないが、ユニは多分何らかの達人の域に達しているんじゃないかとさっきので思った。
「他にも何か頼みます?」
「いや、もう満足だ。食えやしねぇよ。そうだ、ここ泊まれるはずだよな。今日はもう遅いし私の奢りで泊まるか」
「「「「「よっ隊長ふとっぱらです」」」」」
今回は宿泊してくれるのか。ユニにとっては珍しい事もあるもんだ。いつもなら食うだけでそのまま帰ってしまうのに、今日は部下がいるから格好つけたいのだろう。
こっちはお金を落としてくれるなら別に文句はない。むしろ、ウハウハである。
「宿客名簿にお名前をお願いします」
━━━宿客名簿━━━
ユニ・バレンタイン(薔薇隊隊長)
シャルロット・グローリー(新人リーダー)
アルディ・イグニス(新人副リーダー)
リーシャ・オルコット
マーリー・ボールドウィン
アメリア・ブルー
六人全隊員の名前が名簿に書き込まれた。こうして見ると全員、ユニは知っていたが名字持ちとは驚きだった。
名字とは貴族や王族に与えられる名前であり、その家の名前である。例外はあるが、それぞれが領地を所有し納めているのが普通だ。
その子供は普通貴族学校へと行き政治や作法・礼儀を学び卒業した後、家督を継ぐか王家の幹部として働くのが一般的だ。
位が低いか三男以下だと、騎士隊に入る者もしばしばいるって話だ。三男以下だと、まずは家督が廻って来なくて騎士に入り名を挙げたりするのがたまにいる。
女性は違い位が高い公爵や侯爵に嫁がれる、又は位が高いならよそから婿を貰い受けると話に聞いた事がある。
だが、ユニはそのどちらでもない。自ら騎士隊に入り今の位まで上り詰め最強という名を手に入れたのだ。
まぁ良く言えばそうだが、悪く言えば行き遅れだな。ユニの目の前で言ったら殺されるだろうだから心に思っても言わない。
「六人だから二人三部屋として………一泊で大丈夫ですか?」
「あぁそれで頼む」
「六名様ご案内、えーとドロシー案内頼む」
近くで注文を受けているドロシーを呼びつける。
「勇者殿が案内をするのではないのか?」
「すまないな。お客様が退けて来たとはいえ、まだやる事があるのでな」
シュンっとシオシオに捨てられた子犬みたいな目でユニがこちらを見ている。そんな悲しい瞳で見られいたら次のように選択肢が出てきそうだ。
拾いますか?/ 見捨てますか?/嫁にしますか?
そうそうこんな風に…………って本当に出てきやがった!俺の見間違いじゃないよな。こんな事を出来るのは一人しかいない。女神様この現状を見て楽しんでやがる。
カズトの目の前にゲームで出現しそうなウィンドウが現れた。周囲には見えてないようで驚愕な表情が出そうであったがどうにか我慢した。
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