SS2-1、アリスのレストラン暮らし
妾はアリス、
最近はとある事情で人間の国にあるレストラン〝カズト〟という所で従者と一緒に寝泊まりしてるのじゃ。
「シャルよ、朝から味噌汁とは贅沢じゃのぅ」
「主殿の故郷では、普通の事のようです。姫様」
妾達は今、レストラン〝カズト〟の食堂で朝食を食べてる最中だ。そのメニュー内容が驚くものなのじゃ。
他の客は気付きもせぬようじゃが、我が国では幻………古文書にしか載ってない調味料を平然とこの店では使っておる。
だが、一週間もすれば妾も慣れてくるもんじゃ。だけど、それが怖くもある。我が国に帰る時になってしもうたら元の暮らしに戻れるかどうか不安じゃ。
「この玉子掛けゴハンも美味しいのじゃ。この醤油を掛けると更に美味しくなるのじゃ」
不安じゃが、今はこの店の暮らしを楽しもうぞ。主殿が作る料理はどれも美味なのだから。
「えぇ、醤油は魚の切り身………サシミとやらに掛けましても美味しいです。それにホッカホッカのゴハンに良く合う」
バクバクと我が従者シャルも次から次へと口の中に放り込む。
料理の値段が少々気になるが、周囲で食事を取ってる客を見ると冒険者だったり、けして裕福と思えぬ客が来てる事からそこまで高く無いことがうかがい知れる訳だ。
例外として貴族らしい者もたまに現れたりするが、そういう者は大抵個室やらに案内される。
それにここは食事だけではない。冒頭で言った風に妾達はここで寝泊まりしてるのじゃ。つまり、ここは宿屋という事になるのじゃ。
その部屋がまた格別でのぉ。寝具であるベッドとやらがフカフカで実に気持ち良いのじゃ。最初見た時には、つい跳びはねてしもうた。
あ、あれは主殿に見られたのは不覚だったのじゃ。後々考えてみると超恥ずかしい一面を見られ、時々思い出す度に顔が熱くなる。
ベッドとやらが気持ち良すぎるのが、いけないのじゃ。
けして、妾が悪い訳ではない。悪い訳ではないのじゃ。大事な事なので二回言ったのじゃ。
「姫様、食事を取った後は訓練しますよ。厳しくビシっバシバシといきますから」
「バシが一つ余計に多いと思うのじゃが、分かったのじゃ。やってやるのじゃ。(この鬼教官め。
「うん?何か言いましたか?」
「気のせいじゃないのかや(ふぅ、危ないのぉ)」
妾はシャルの言う通りに訓練所で
だって、一介の宿屋に地下なんて普通はない。しかも、広々とした訓練所じゃ。
そのお陰でシャル鬼教官と共に訓練するはめになってるのじゃが、美味しい飯のためじゃ。良く言うじゃろ、お腹が空いた後の飯の方が美味しいと。
「はぁぁぁぁ、それそこぉぉぉぉだぁぁぁぁぁ」
シャルと薙刀の特訓を━━━いや、今度こそシャルに勝利し美味な飯を喰うのじゃぁぁぁぁ。
猛烈なアリスの薙刀捌きにシャルは防戦一方に見える。
が、紙一重でアリスの猛攻をシャルは捌き切っている。それも汗を一つも掻かず涼しい顔をして。
「ハァハァ、な、何で当たらないのじゃ」
「うふふふ、まだまだですね。この鬼人族オーガ総戦士長を勤めた私に勝てるなんて一万年早いですわよ」
はぁぁぁぁぁぁぁぁ、ちょっ!それ初耳何なのですけど!
つうか、ならシャルは一体何歳っていうのじゃ!妾が赤子の時から面倒を見てくれてる。
そのシャルが総戦士長を勤めていたのは、その前という事になる。
シェールの法では、最低でも総戦士長に就任するには20年掛かり、さらに総戦士長を20年を勤めなければならない。
アリスが18歳という事は18年前に引退したのだから………見た目によらずシャルってババァじゃん。
そうアリスは心中思っていた。もちろん声に出て来てないはずだが………。
「誰がババァですって!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ」
先程の訓練では全然本気を出していなかったのかシャルにボコボコされるアリス。
それでも幾分かは抵抗出来るよう手加減をされてる様子。
その訓練から2時間経ち、アリスはバタンキューと目を回し床に大の字に倒れピクリとも動かない。
「ふぅ、久々に良い汗を掻きました」
近くにあったタオルで汗を拭う。ここに男共がいたなら、汗で透けたシャルの衣服に目が釘付けになっていたかもしれない。
「まったく酷いのじゃ。何も言ってないのに、こんな仕打ちってないのじゃ。これは父上にご報告するのじゃ」
「うふふふふっ、別にご報告してもよろしいですけど………あのボウヤに私を怒れるのかしら」
「…………!!(父上をボウヤじゃと!父上とシャルの関係は一体?超気になるのじゃが………怖くて聞けないのじゃ)」
ガクガクブルブルと震えるアリス、この震えは汗の冷えから来る震えだと信じたいアリスである。
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