4景

四景


BGM『hope』

劇中劇

ベンチに座って読書する男

玉村がやってくる


玉村 あの。

男 はい。

玉村 白幕さんですか。詩人の。

男 御名答。どうして僕のことを。

玉村 ファンなんです。

男 ありがとう。

玉村 何、お読みになっているんですか。

男 ハーモニー。

玉村 知らない本だ。

男 美しい小説だよ。

玉村 教えていただけますか。

男 もちろんさ。


ライト一度暗転

場面転換

ベンチの上で抱きしめ合う二人


玉村 好き。

男 好きだよ。

玉村 殺したいほど好き。

男 殺してくれ。

玉村 殺さない。まだ抱きしめたいから。

男 僕もだ。


激しくキスをする


玉村 好き。好き好き。

男 大好きだ。


暗転

場面転換

スクリーンに文字


『拝啓 空幕様

玉村です。私は貴方のことを愛しています。

本当です。許してください。

私は私を抑えきれない。

私には原罪がある。

毒を飼っているのです。

毒が私を抑えきれない。

私は貴方を置いて旅立ちます。

私でもわからない。何をしているのか。

貴方を見捨ててゆく私を許してください。

かしこ

玉村より』


舞台明転

扉を叩く五十嵐


五十嵐 おい。おい。なぁ。俺が何をしたって言うんだ。なぁ。おい。なぁ。開けてくれよ。なぁ。悪いことをしたなら反省する。謝る。だから話そうよ。これで終わりっていうのか。なぁ。そんなの、ないだろ。ねぇ。琳。どうしたっていうんだ。なぁ。


扉の向こう側から手紙が落ちる

手紙を見る五十嵐

文字がスクリーンに映る


『五十嵐さん。貴方は私に隠し事をしていましたね。僕と君の間に隠し事はなくそう。全て話し合おう。私は貴方に全て伝える努力をしてきました。残念ながら貴方はそれをしていなかったようです。涼からお話を聴きました。貴方は後ろめたいことがあったから私に涼との関係を伝えなかった。そうではありませんか? もう私は貴方のことを信じられません。結婚の話はなかったことにしてください。さようなら。今までありがとう。もう二度と私の前に顔を見せないでください。互いにこれ以上無駄な不幸せを感じることほど愚かなことはないでしょう? さようなら。お幸せに』


五十嵐 琳。琳。


五十嵐 泣き崩れる。


暗転

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